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レッサーパンダの繁殖は日照時間の影響を受ける

レッサーパンダは、季節によって行動や容姿に変化があります。たとえば、2月頃から3月頃にかけての発情期および、交尾活動。そして、3月頃以降から始まる換毛期。6月頃から7月頃にかけての出産期などが該当します。

以前は、僕の知識の無さから、レッサーパンダが季節を感じる方法は、温度の変化なのか、日照時間の変化なのか知りませんでした。いまは、レッサーパンダに関する論文をいくつか読むようになり、日照時間の変化がレッサーパンダの季節性に影響を与えていることを知っています。

この日照時間の変化は、緯度によって異なります。たとえば、日本より、高緯度の地域では冬の間は、日照時間がより早く、より短くなります。このような緯度による日照時間の違いが、飼育下のレッサーパンダの着床日に影響を与えるかを調べた論文を以下に見つけました。


「Red Panda: Biology and Conservation of the First Panda 2ndの第17章(What do studbook data reveal about the effects of climate on neonatal survival and seasonality in births?)」

緯度の違いによる着床日に優位な影響を認めるとする結果です。グラフを見る限り、たしかに優位な影響が認められますが、緯度が高くなるほど、偏差も大きくなっているので、例外も多そうです。また、この論文では、着床日に関する遺伝的要素の影響も調べていますが、こちらは優位な影響は認められない結果が発表されています。したがって、母パンダの系統によって仔パンダの誕生日が近くなるといった観測結果は、偶然のものと言えそうで、同じ緯度に属する動物園で誕生する仔パンダの誕生日が近くなるといった観測結果は、優位に必然と言えそうです。

このようにレッサーパンダにとって日照時間の変化は、正常なライフサイクルを経験するために重要な要素。とりわけ出産に関してはとくに重要な要素だとわかりました。室内展示が主となる動物園においても、自然光を取り入れるとか、人工光の照射サイクルを日照時間に合わせることで、より自然な発情期、交尾活動、着床/分娩をパンダが行えるようになるのでしょう。

当該論文は、日照時間の影響以外に、気温、降水量が新生児の生存率に与える影響についても触れられています。

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