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レッサーパンダが絶滅しそうな理由

国際自然保護連合(IUCN)が作成している絶滅の恐れのある野生生物リスト(レッドリスト)には、レッサーパンダを絶滅危惧(Endangered)に指定しています。

絶滅危惧である理由を、レッドリストは以下のように記載されています。

Red Panda is listed as Endangered because its population has plausibly declined by 50% over the last three generations (estimated at 18 years) and this decline is projected to continue, and probably intensify, in the next three generations.(要約:個体数が過去3世代(推定18年)の間に50%減少したことが確実視されており、この減少は次の3世代でも継続し、おそらく激化すると予測されているため。)

レッサーパンダの個体数が減っている。また今後も減り続けると予測されていることが、絶滅危惧種と指定している理由となっているようです。

レッサーパンダの個体数が減っている理由の大きなものは、3つあります。
ひとつ目は、「生息地の森林の断片化」です。もともと大きな一つの森林が、道路やダム開発、農地化、家畜の放牧などの理由により、いくつかの森林に分断されています。森林が分断されると、レッサーパンダの移動が制限されることになります。この移動の制限は、生息地の劣化(例えば、竹の開花による局所的な竹の枯死で、レッサーパンダの餌が無くなるなど)したさいに、劣化していない(竹が生える)場所への避難ができず、劣化した生息地のレッサーパンダは生き残ることができません。また、移動の制限は、親族間の交配が増加し、結果的に遺伝的に弱い子孫が増える可能性もあります。遺伝的弱さ(すなわち種の多様性がない)は、似た遺伝子をもつ個体が多くなることで、たとえば、ひとつの伝染病で、局所的な絶滅のリスクが高まることを意味します。さらに、似た遺伝子を持つ個体同士が交配すると、近交弱勢という有害遺伝子が表面化しやすくなる現象(通常であれば、潜性していた形質が表に出やすくなる。子の死亡率増加や、繁殖率の低下となって現れるなど)があります。

ふたつ目は、「生息地での人の活動の増加」です。ひとつ目に記した”理由”になります。
レッサーパンダの餌となる竹は、放牧された家畜も食べています。また生息地近くに居住する人々は、建築材料や燃料として利用するため森林や竹林の伐採を行っています。これらの森林利用は、レッサーパンダの餌の不足や、捕食動物からの避難場所が失われることにつながります。また、酪農家が連れている飼い犬との偶発的事故(犬によるレッサーパンダへの攻撃や殺傷)、間接的接触(犬の糞など)による、レッサーパンダへの感染症の伝播などのリスクが高まります。

みっつ目は、「密猟」です。過去には、帽子や装飾品のためにレッサーパンダの毛皮が求められたこともありましたが、現在は、レッサーパンダの生息地がある国の法整備により、毛皮の需要は減っています。しかし、SNSに「かわいい」画像が投稿されているなどの理由からか、ペット需要が刺激され、ペット目的の密猟や密輸が増加傾向にあるようです。最近の事件を例に挙げると、2018年1月にラオスで密輸組織の摘発があります。この事件では6頭のレッサーパンダが保護されましたが、うち3頭は衰弱死しています。

以下の動画は、2018年1月に密輸摘発により保護されたレッサーパンダの様子を紹介しています。

さらに、密猟に関しては、最近よくない傾向があるそうです。Red Panda Networkが発表した2020年活動報告書(Annual Report)には以下の記述がありました。

In response to an unprecedented rise in red panda poaching in Nepal this year — likely driven by poverty and exacerbated by the pandemic(和訳:ネパールでは今年、レッサーパンダの密猟がかつてないほど増加していますが、これは貧困が原因であり、さらにパンデミックによって悪化したものと思われます。)

パンデミックの流行は貧困を招き、パンダに限らず様々な動物の密猟が世界規模で増加しているとの報告もあります。(参考:TRAFFIC.org)

このように前途多難な野生下のレッサーパンダですが、我々は彼らのために何ができるのでしょうか?

前提としてレッサーパンダに興味を持つがあります。このnoteを読んでいただいている方ならば、とく記述する必要もないでしょう。最初の取り組みとして、レッサーパンダの現状を正しく知るがあります。なぜ彼らが絶滅の危機にいるのかを知ることが重要です。そして知り得た知識を、少しでも多くの人に伝えることが次のステップになります。私がこのnoteを記しているのも、少しでも多くの人に伝わることを期待しているからです。
さて、次にできることは何でしょう? このnoteを記している概ね2ヶ月後の9月第3土曜日に国際レッサーパンダディがあります。世界中の様々な動物園館が、野生下のレッサーパンダが置かれている現状を広めるために様々な催し物を行います。そしてレッサーパンダの生息地の保全活動を行なっているRed Panda Networkの資金援助を行うための募金を行なっています。そうです。次に行えることは、国際レッサーパンダディに参加し、Red Panda Networkを応援することです。

Red Panda Networkは、生息地を保全するため継続的に活動しています。
例えば、断片化した森林を修復するため、土地を購入し植林を行う。放牧や飼い犬による脅威を軽減するため、地域住民との協議や、飼い犬へのワクチン接種。地域住民の新たな収入源を確保するための取り組みや、森林伐採を減らすための取り組み(燃焼効率の高い調理用ストーブの導入支援など)、密猟を防ぐための啓蒙活動や、禁猟区内のパトロールなどなど様々な活動を行なっています。

Red Panda Networkの活動資金の99%は、助成金と寄付金だと、前述の2020年活動報告に記載されています。Red Panda Networkを応援することは、直接野生下のレッサーパンダを救うことにつながります。彼らのWebページから、直接募金を行うこともできますし、前述の国際レッサーパンダディに参加する動物園館が募金窓口になってくれる場合もあります。そして、グッズを買って応援することもできます。

ヒマラヤに生息するレッサーパンダの生息地を守るために、いろいろな方法があります。まずは、正しい知識を得て、広めることから始めてみませんか?

レッサーパンダに限らず、野生動物を飼育展示している動物園館は、野生動物たちが被っている現状を正しく、そして少しでも多くの人に伝える責任があります。飼育展示されている動物たちは、彼らが本来生息している場所の保全大使なのですから、動物園館は彼らの役割を最大限に支援し援助することが必要です。


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