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レッサーパンダの繁殖は分泌ホルモンの影響を受ける

以前noteにて「レッサーパンダの繁殖は日照時間の影響を受ける」ことを紹介しました。

日本の動物園で飼育されている動物は種によって、展示時間中のみ屋外の展示場に出され、それ以外の時間は、いわゆるバックヤードと呼ばれる寝室に収容されています。園館によっては、1日の3分の2程度の時間を屋内で過ごすことになります。
生き物の繁殖は、性ホルモンの正常な分泌を促せるかどうかによって“せいこう率”が変わってきます。バックヤード内部に自然光を取り入れる、もしくは人工光で季節性の日照サイクル等を再現できなければ、繁殖に影響がでると思われます。

また、性ホルモンは、ストレス性ホルモンの分泌と負の相関(片方が増えると、もう片方が減る)があることが知られています。

http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/tokuron/matsuwaki.pdf

例えば、東京大学大学院農学生命科学研究所の講義説明文「ストレスと生殖」では以下のように記載してあります。

種々のストレス性刺激情報は、視床下部に伝えられ《途中省略》生殖能力は低下する。

これは、日照サイクルを再現しても、ストレス性ホルモンが過剰に分泌されるような環境であれば、繁殖に悪影響を及ぼす可能性を示しています。しかし、ストレス性ホルモンの一種である“グルココルチコイド”については下記のような記述もあります。

すなわち、グルココルチコイドは《途中省略》生殖機能維持能を発揮していることが明らかとなった。

グルココルチコイドは、免疫機能向上や、胎児発達に必要な物質と考えられていることから、ストレス性ホルモンが全て実害があるわけではありません。しかしストレス性ホルモンが過剰に分泌されれば実害があるといえるでしょう。

レッサーパンダの性ホルモンとストレス性ホルモンを調査した論文は、たとえば以下があります。

この論文では、インドの3つの動物園(DARJEELIN, GANGTOK, NAINITAL)で飼育されている20頭のレッサーパンダの糞便を分析し、分泌ホルモンの測定を行なっています。
この調査によると、オスとメスとで違いはありますが、来園者数とストレス性ホルモンに対しては、正の相関があり、給餌頻度と飼育場面積には負の相関が認められたそうです。また、性ホルモンに対しては、メスでは樹木密度と正の相関があり、オスでは給餌頻度と正の相関があったとのことです。

他の動物でも認められるように、レッサーパンダもストレスを軽減すると繁殖能力が高まるようです。より繁殖能力を高めるためには、餌の頻度を増やし、敷地を広くし、樹木を増やし、来園者からの妨害を減らすため、来園者との距離を広げ、来園者の目線よりも高く隠れる場所などを提供することが効果がありそうですね。

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