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心をなぐさめる魔法

益軒十訓上 楽訓巻之上 284ページ 4行目

心をなぐさむわざなり。 と…

フリーレンの言う所の伝説級の魔法に見え無くもないか…

三十五

 旅行して、他郷にあそび、名勝の地、山水の麗しき佳境にのぞめば、良心を感じ起こし鄙吝を洗い濯ぐ助けとなれり。

是れも亦、我が徳をすすめ、知を廣めるよすがなるべし。

又、いいしれぬ異境に行きて、見なれぬ山川のありさまを見て、目をあそばしめ、其の里人に会いて、其の所の風土を問い、あるは奥まりたる山ふところに、岩根ふみて尋ねいり、もとより山水の僻ありて、青山夢に入ることしきりなる人は、心をとめて、帰る事を忘れぬ。

あるは海べた、山遠き、限界ひろき眺めは、萬戸候の富にもまされり。

又、其の里におい出でたる名産の異なる品を見て、其の味を試みるも、いと、珍しく、心をなぐさめる技なり。

全て勝地にあそびて見聞きする事、唯、一時の耳目を悦ばしめるのみならず。

いく年、経ぬれど、其の時、見聞きせし有様、老いの後まで、折々思い出でられて、あたかも其の時見聞きせし思いをなして、楽しむべし。

是れを以て、世にめでたき事を思い出と云うも、むべなるかな。




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