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ラグビーW杯 準々決勝 日本vs南アフリカレビュー

最高の試合でした。大会に向けて全てを費やしてきたことも、試合にかける想いもプレーから伝わりました。

この大会のこの瞬間まで鋭意努力されてきた選手、スタッフ、全ての皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

プレビューをしちゃったからにはレビューもセットで書いておこうと思います。
今ラグビーに興味を持っていただいている人のため、自分の目の現在地の記録のため。プレビューで気にしてた項目そのまま流用して書きます。予想していたわけではないので当たり外れではなく見た感じの結果を書きます。

レビュー

・スクラムでマイボールが出せるか 結果:×
押されないだろうと思っていたスクラムで完敗しました。日本が手を抜いたわけではなく、南アフリカがこのプレーに賭けてきていたということでしょう。特に後半は良いスクラムを組まれてしまい6点失いました。

・ラインアウト(外からボールを投入して人を持ち上げたりするアレ)でマイボール確保ができるか 結果:×
プレビューで一番心配していた部分ですが、南アフリカのディフェンスがかなり研究してました。ボールロスト5は多すぎ。予想していた通り新サインが一発目で出て撹乱させたかと思いましたが、南アフリカは研究していた内容に全て賭けていました。

予選と同じサインを混ぜていった日本に対してピッタリディフェンスが貼り付いてしまいボールロスト。
駆け引きで上回られました。

・キック処理で互角にやれるか 結果:○
これについては日本の対策が出てちゃんと互角にやってました。というか相手の蹴ったキックはほぼ確保できていました。ジャンプして取る人も頑張りましたし、キックが上がっている間に追いかける南アフリカ選手の進路を巧みに狭めてボール落下地点に到達させないテクニック(こういう嫌がらせ系が個人的に好きです)もほぼ完璧にできてました。

・平面のボール運びでボール保持&前に出られるか 結果:△(前半○、後半×)
まず前半はポゼッション7割が示す通り、ボールを保持し続けることが出来てました。南アフリカのディフェンスが強烈に前に出てきて外に回させず、内に切れ込んで大きな選手で圧力をかけるプラン。前半の最初でハマりかけて自陣に貼り付き、トライも奪われました。

その後、日本はアタックラインの深さを変えて外が攻められるようになりました。南アフリカは疲れたのか止めたのか、前に出るのを控えていたのもあります。徐々に前に出て相手が反則して3点取りました。

後半もマイボールキープ出来ている時間は概ね出来ていましたが、スクラム、ラインアウトの劣勢でボールを持つ陣地が常に自陣で、キックを使って陣地を回復せざるを得ず、ボールを持つ時間が減りました。

平面で運ぶ力は健在でしたが、自陣から取り切ることは出来なかった、ということです。平面での南アフリカに対する日本の対応はほぼ互角。もう少し欲を言えば早いペースでボールを出したかったですが、タックルで倒れた後のボールへゴリゴリプレッシャーが来てボールが早く出ませんでした。

・守っている時間をいかに減らせるか 結果:△(前半○、後半×)
スクラム、ラインアウトで相手にボールを取られたことで攻めているはずの時間で守ることになりました。平面でのディフェンスはほとんど破られることはなく、4年前よりも全然危なくない感じでした。

一点だけ、モール(ラインアウトの後に塊で押してくるアレ)のディフェンスではボコボコにやられました。予選リーグでもモールが強そうなアイルランド、スコットランドで押されないディフェンスは優秀だったのですが、南アフリカの圧力の次元が違ったということでしょう。これで1トライ1ゴール、7点失いました。

まとめ

南アフリカは「ここしかない=この戦術で駄目なら負け、というところまで追い詰められた」上でのラグビーをしてきました。本当の世界一を狙うクラスが最大限の分析と一点突破。その意味で初めて直面するラグビー。スコットランドもその気迫は有ったけど、南アフリカの方が強かった。そんなラグビーと40分まで互角にやった、相手をそこまで追い詰めさせたというのは日本がとんでもなく強いことの証明です。

ラグビーは陣地を進める要素と点を取る要素の積み重ねとやり合いです。南アフリカは
1.ディフェンスの圧力
2.スクラム、ラインアウトモールの圧力
3.キック
を武器としています。キックで前に出て、ディフェンスで奪う、もしくは反則を取る、という基本戦術に対しては日本は互角に戦いました。互角に出来るチームは世界中でトップ8しか居ないので、これだけでも本当に立派だと思います。
ただスクラム、ラインアウトでは南アフリカが完勝で、これで南アフリカは陣地を進め、敵陣で反則を獲得して3点とることができました。

前半の試合の進め方は日本はほぼプラン通り、後半疲れてきた相手に勝負をかけようとしたはずですが、南アフリカはハーフタイムで休んだ最初の10分で勝負を仕掛け6点取りました。さらに疲れてきた頃にFWを6人替える戦術。リザーブでFWを6人仕込んでいた(普通は5人。6人にするということはBKの控えが3→2に減る)ということです。南アフリカはこういう部分にも勝負を賭けていた、このゲームプランを目指していたことが分かります。リフレッシュしたディフェンスを突破できず、スクラム、ラインアウトで最後まで後手を踏んだ結果、敵陣になかなか出来なかった。ゲームプランを遂行しきった南アフリカと、やれた部分とやられちゃった部分があった日本。それが後半の点差でした。

日本は本当に最大限の力を発揮したと思います。ただ初めて直面するこのラグビーに勝てなかったのもの事実。ここに勝てるようになるための歩みは今日から始まることでしょう。

ベスト8で破れた国はオーストラリア、アイルランド、フランス、そして日本。ベスト8にも行けなかったスコットランド、前回ベスト4のアルゼンチン。そんな中で戦い続けてくれた日本代表には心から感謝をした上で、このW杯の行方を楽しみたいと思います。



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