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君が教えてくれたもの(BTS東京ドーム公演に寄せて)

“You`ve shown me I have reasons I should love myself”
君が教えてくれた 自分自身を愛するということを

今回のツアーの最後に必ず歌っている「Answer : Love Myself」歌詞の一部だ。自分自身を愛することをテーマに制作されたLOVE YOURSELFシリーズのラストを飾る曲の中で歌われているのは “君が教えてくれた 自分自身を愛するということ”……という言葉だった。
この歌の中の“君”とは、だれを指すのだろう。
大きな声で軽やかに歌い上げるその声は私たちARMYへ向けて注がれていた。
そして、ARMYもまた、そのフレーズを彼らに向けて歌っていた。


ここ数日、本当にいろんなことがあった。
今でもきっとこの国で彼らに吹いている風は紛れもなく逆風だ。
そんな中、声を枯らして声援を送るARMYを目の前にして、とてもとてもきれいな声で、7人の、二十歳そこらの男の子たちが全力で音楽を届けてくれる。
それがどんなに美しくて、終わってほしくなくて、とても特別な瞬間だったのか、私たちARMY以外にはきっと一生わからない。


BTSが初めて東京でパフォーマンスをしたのは2013年12月7日に行われた1st JAPAN SHOWCASEだったそうだ。会場はスタンディングで600人というキャパだ。ナムジュンは東京ドーム公演でのMCで、観客は300人だったと話していたと思う。
そしてわずか5年後、BTSは世界を飛び回るスーパースターになった。
当時のニュースサイトの記事で、日本で公演することになってびっくりしたと語っていた彼らにとって、日本でのSHOWCASEは初めての海外プロモーションだった。そんな彼らが語った東京という街の印象はとてもすてきだった。メンバーのテテはインタビューの中で、こんな風に話していた。

『建物やバス、タクシーなど全てが韓国とデザインが違って、すごくきれいで可愛らしかったです。なので携帯でたくさん写真を撮りました。』

そう言って笑ったであろう、テテのかわいい笑顔が目に浮かぶようだ。
私たちが韓国に行き、カラフルな建物や都会的なビルの建築に胸を踊らせ、ショッピングを楽しむように、彼らはまるで鏡のように、私たちととてもよく似た気持ちを抱いて、“憧れの東京”という、日本の首都にやって来たのだ。
あの時キラキラ輝いていたその街は今、彼らの目にどんな風に写っているんだろう。

(関係ないけど、上記の記事でSUGAさんがシャイでイタズラっ子扱いされてるのがかわいいので読んだことない人は今すぐ読んで!)


ゆんぎが何かのイベントで東京ドームでコンサートをしたいと初めて話した時、その場にいた当時のARMYたちはどう思ったのだろうか。スタジアムで公演したいと言った時、メンバーたちが笑ったように、冗談だろう?と、きっとたくさんの人たちの笑いが起きたのかもしれない。



東京ドーム。



そこに立つのは一つの目標だった。
そして、そこに立つ前に誰も成し遂げられなかった、もっともっと大きな記録を塗り替えてきてしまった。

『僕が思う以上のことを成し遂げるということは、すごく負担になるし怖いことだと思う。』
ゆんぎはボンボヤS3の最終話でこんなことを言っていた。
誰も通らなかった道を切り拓いた彼らには、先に経験した人からのアドバイスもなく、『楽しまなきゃ』と人は言うけれど、それを楽しむことが一番難しいと話していた……。

そして、

東京ドームに立つゆんぎは、とてもとても楽しそうだった。
こんなに笑う人だっけ?と思うほどたくさん笑っていたし愛嬌もたくさん見せてくれた。モニターには抜かれないし、あまり気づかれなかったかもしれないけど、他のメンバーのパートの時、いつも以上にたくさん合いの手を入れては、全身で会場を煽ったりして全力で盛り上げていた。
ゆんぎだけじゃなく他のメンバーからもステージに立てる喜びをすごくすごく感じた。大きな栄光をつかんだ今、はじめに夢見ていた場所に立ち、たくさんのアミボムの光に包まれて、みんなどんなことを感じていたのだろう。
彼らが話してくれた言葉のひとつひとつに、キラキラと目を光らせて笑ったその笑顔に、言葉にならない思いや痛みや、喜びが溢れていた気がする。


Kpopアイドルたちは日本にお金を稼ぎに来ている。
確かにそれは一つの事実かもしれない。
日本と韓国には埋められない溝がある。
それもそうだろう。

だけど私にはそんなことは正直言ってどうでもいい。
Mステの件があって、色々なことを考えたし、盲目に信じれるほど子どもではない。それでも考えた上で、私にとってはもう、どっちでもいいことだ。

彼らの言葉だけで、愛してるやありがとうを伝える湿った声の色やとてもすてきな表情だけで、それだけで充分だ。

実のところ、コンサートの少し前まで、あれほど毎日聴いていたバンタンの曲を聴かなかった。
「FAKE LOVE」の歌詞が身に染みて聴いても悲しくなるだけだったからだ。
でも、それはただ、私の想像が作り出した、いらない心配事だった。事務所にはすぐにコメントを出すことの出来ない理由があったし、Bighitから正式に出された文章には、大人の事情だけではなく、メンバーやファンへの気遣いも感じられた。

一瞬でも聴けなかった曲たちは、コンサートに行ったことで、より深く心に響くし、もっともっと大好きになっている。
それだけのパワーと説得力をBTSは持っている。


Tシャツ騒動が広がる中行われた13日のコンサートで、ジミンくんはゆっくりと言葉を選びながら話してくれた。

『僕たちの初めてのSHOWCASEは東京の小さなライブハウスでした。その時、日本にいらっしゃるARMYのみなさんがどうやって僕たちのことを知って会場にいてくれたのか(来てくれたのか)、驚いたことを覚えています。ここ東京ドームに来るまでに本当に長い道のりがありました。このような状況によってARMYのみなさんだけでなく、全世界の多くのみなさんが驚かれご心配されたと思います。本当に胸が痛いです。(痛みます?)

 僕たちはこれからもたくさん会える機会があると信じています。今日みなさんと一緒にした初めての東京ドーム公演を忘れられないと思います。ARMYのみなさんと一緒で本当に嬉しいです。ARMYのみなさんも僕たちを見ながら幸せな気持ちになってくれたなら嬉しいです。今日は本当ありがとうございます。本当愛してるよ!ありがとうございます。』


会場のARMYの歓声がすごくてところどころ聞き取りづらいほど、多くのARMYたちがジミンくんに声援を送っていた。
とっくの昔に私たちは許していたのではないだろうか。

だって、始まったその瞬間から、私たちにはジミンくんの真心が見えていたからだ。「Anpanman」で、倒れたジミンくんへ、ナムジュンがパンを渡す振り付けの時、ナムくんの『ジミーーーン!!』という煽りに応えた会場の歓声がすごかった。

大丈夫。私たちがいる。あなたを信じてる。…たくさんの言葉をかけることはできないけど、会場のファンたちの彼の名前を呼ぶその声に込められた想いは、きっとジミンくんの心に届いたはずだ。

正直スルーすると思っていた。このことに触れて謝罪をしても、日本の報道は収まらないだろうし、母国でどんな立場になるのか分からない。
だからコンサートが始まって、いつも以上に完璧をこなすBTSのJIMINの姿に、これが彼からの回答なんだと思っていた。精一杯を私たちに見せることで、私たちの幸せをパフォーマンスを通して満たすことで、言葉で謝ること以上の誠意を見せてくれているのだと感じていたけれど……、彼は直接、この騒動について話を聞かせてくれた。いつもふざけるジンくんが真面目な顔をして“必ずまたここに戻って来たい、僕の力が尽きるまでベストを尽くします。”というような話をしていたのも、とても胸に響いた。また同じ場所で彼らに会いたい。
世間が彼らをなんて呼ぼうとも、たくさんのARMYが強くそのことを望んでいるはずだ。


テテの話はまた少し違う視点からだった。

『僕はこの数日間、全世界にいらっしゃるARMYのみなさんが、日本にいらっしゃるARMYのみなさんと心を通わせる姿を見ながら、心が温かくなるのを感じました。これから、僕たちはARMYのみなさんをもっと愛していきたいと思います。

本当に、マジかよ東京ドーム。
でもツアーは始まったばかり!最後まで応援してくれますよね?
ありがとうございます。紫します。愛してます。』

そう言ってテテちゃんは深くお辞儀をしていた。

日本のARMYたちはここ数日間、誤解だらけのメディアやたくさんの情報に惑わされ、誰かは自分の国を申し訳なく思い、また別の誰かは、いろいろな事柄に怒っていた。そして海外のARMYの中には、一部かもしれないけれど、SNS上で、そんな日本のARMYを慰め応援してくれた人たちがいた。
そのことを知っているということは、テテちゃんは、きっと、もっとたくさんのものを目にしたのだと思う。心ない人の発言や、それに対して敵意をむき出しにする一部のARMY。楽しみを潰され、愛する彼らが侮辱され続けるのに、何も言わない事務所への不信感。私もそうだった。
テテはそれを見て、考え、とても温かな出来事を切り取り、私たちに話してくれたのだ。いつもは、はちゃめちゃな日本語でカミカミになっても気にしない様子で、かわいく話をするのに、たくさん練習したのか、とても聞き取りやすい声と発音で、流暢に自分の想いを聞かせてくれた。

“紫します”というのは、テテちゃんの考えた、愛してるよりももっともっとたくさんの想いの詰まった愛の言葉だ。
紫色は虹の最後の色で、その色は特別な意味を持っているそうだ。
“お互いを信じて、永遠に愛し合おう”という意味の込められた、虹の紫色から作った“ボラヘ”という私たちだけの合言葉…。


人は自分と違う価値観の人間を目の前にした時、どうするのだろう。
自分の大切なものが侮辱されて、黙っていられる人がどれくらいいるのだろう。

ジミンくんが例のTシャツを着ていたことについて、以前にも書いたけれど、決して肯定できることではないと思う。個人的には意図的ではなかったと思う。
ただ、そこにはあのTシャツにデザインされた歴史への認識の違いがあったのだろう。
分からないで着ていたのなら、それはそれで悲しいと、とあるYOUTUBERが話していたけれど、全くもってその通りだと思った。意図的であろうとなかろうと、誰かを傷つけるかもしれないと気にならなかったのなら、それってすごく悲しいことだ。

だけどジミンくんは精一杯の言葉を私たちにくれた。“僕たちを見て幸せになってほしい”という想いが彼の答えだ。
そして、悪気のなかったかもしれない仲間の行動に、共にバッシングを受けることになったメンバーたちも、そのステージに、誰も暗い顔をして出てこなかった。
特別だったはずの舞台の上でみんな涙を流すことなく、キラキラと輝く瞳で笑っていたし、中でもグクは、怪我をして以来、ダンスに参加できるようになった初めてのステージの喜びを全身で感じているみたいに、キラキラとはじけるように笑っていたのが印象的だった。
7人の男の子たちは、悲しみや怒りや辛さや不安の代わりに、愛してるとありがとうを完璧なパフォーマンスに添えて私たちにたくさんたくさん見せてくれたのだ。

WINGSツアーで進化したそのパフォーマンスに驚いたけれど、東京ドームに立つ彼らは、紛れもなく“世界のBTS”だった。
世界的なスーパースターたちの隣に並んでも少しも恥ずかしくない、ダイナミックなダンスと、魅力が格段にアップした表情や仕草は、2017年のボンボヤでメンバー同士でふざけ合いながら話していた、“ワールドワイドケーポップサンシャインレインボー”そのものだ。



夢だった、東京ドームという大きかったはずの舞台。
私たちの国の距離は、一番近いようで、まだとても遠いのかもしれない。
そんな中、リーダーのRMくんは2日目の最後にこんなことを話していた。

“LOVE YOURSELF”という言葉の意味を、まだ自分たち自身も探しているということ、そしてその話の締めくくりに、『言葉の壁を超えて伝えます。愛しています。』と話してくれた。最後に何人かのメンバーたちが使っていた『あざっす!』という言葉を照れながら話していた彼の笑顔はとてもとてもかわいかった。
そこには紛れもなく、“言葉の壁”を超えた何かがあった。

2日間の東京ドーム公演の終わりに、初日と同じように歌われた「Answer : Love Myself」のゆんぎの声がとてもとても私の胸に刺さった。
勘違いかもしれないけど、大好きなその人が、涙をこらえているように見えたからだ。

“もしかすると誰かを愛することよりも 難しいことは 自分自身を愛することだ”

 “そろそろ僕を許してやろう 捨ててしまうには僕たちの人生は長い 
迷路の中にいるときには 僕だけを信じろ
冬が過ぎればきっと また春がくるはずさ”

夢だったドームを埋め尽くすきれいな光の中で奏でられた彼のRapパートは、彼の心にどんな風に響いたのだろう。
迷路の中にいるのなら大好きな人を信じればいい。
今がどんなに辛くても、冬が過ぎれば春になる。

“You`ve shown me I have reasons I should love myself”

“君が教えてくれた 自分自身を愛するということを”……
BTSは、私たちにたくさんの愛をくれる。
私たちの中に初めからある愛を引き出してくれる。
彼らも同じように、ARMYという存在を捉えてくれているのだろうか。
もしもこの先まだ、彼らの冬が終わらなくても、私たちが温かな光を灯してあげればいい。彼らがくれた終わって欲しくない最高の瞬間を、私たちは知っている。それだけで充分だ。


混乱が予想され、色々な噂や注意喚起があったドーム公演だったけど、会場にいるARMYはみんなとても楽しそうに笑っていた。おしゃれをして、会いたい人たちと待ち合わせをしたり、おしゃべりをして各々に大好きな人に会う前の貴重な時間を過ごしていた。
帰り際、駅の近くの東京ドームホテルの窓からはグクの作った“アミシテル”という言葉やBTSの文字がオレンジ色の優しい光を放っていたのを覚えている。
そしてその部屋に宿泊しているARMYが振るアミボムの光に、駅へと向かい道を歩く女の子たちの幾人かが、紫色のアミボムの光を返していた。


人それぞれ価値観は違う。同じものが好きでも私たちはみんな別々だ。そして何が正しくて何が正解なのか、多分、いつも私たちには分からないから、時に摩擦が起きてしまう。だけどたったひとつだけ、BTSが大好きだという気持ちだけで、私たちはこんなに簡単に、たくさんの人たちと心を重ねることができるのだ。


そしてこんなすてきな気持ちをくれるBTSは、人気者であろうとなかろうと、私にとって、私たちにとって、とてもかけがえのない特別な存在だ。

“ドームツアーはまだ始まったばかり。”
健康に何事もなく大好きな人に会える奇跡が、またたくさんの人に訪れるといい。
大好きな人たちが、大好きな人と一緒に、
笑顔にあふれた、たくさんの記憶の雲を作れるといい。

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