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【放送後記】#01 消えた仏教宗派「三階教」とは?【ゲスト:西本照真学長(三階教・仏教学)】

初回という言葉のマジック

2023/05/09に収録した西本照真学長ゲスト回が公開となりました!
ご専門である「三階教」について、そもそもなぜ興味を抱いたのか?、研究の実態とは?、学長となった現在は?、などの観点でお話を伺っています。
三階教はすでに滅びた宗派であるだけに、インターネットで調べても「よくわかる解説!」みたいな情報はヒットしません。ということはこの動画、実は激レアなのでは!?

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さて、今回の放送後記は、時間の都合でカットになったけれど中の人の心に刺さったくだりを取り上げます。

大いなる仏様の存在

森貞「(三階教の根本には仏性思想があり、信徒はただの通行人まで拝んでいたという話を受けて)仏よりも生きてる人間を敬うけれど、その理由は敬った相手がゆくゆくは仏になるから、って結局仏様に帰ってくるのはすごく面白いですね」
学長「なるほど。仏法僧を敬う田んぼに苗を植えるのと、慈悲の心をかける目の前の人間に苗を植えるのは、結局同じ苗を育てていくということ。みんな仏の願いをいただいて生まれ育ち、生きていって、そして仏様に向かって歩んでいるっていうね」

善く生きるための実践と、その根底にある仏性思想とを照らしての気づきです。信ずる対象の偉大さはその信徒でないと理解が難しいですが、この気づきを経て、仏教において仏様がどれほど大いなる存在なのかなんとなく分かった気がします。

反抗という進み方

学長「私は何のために今武蔵野にいるのと自問すると、それはあなたが今まで反抗してきたからだと」
森貞「ご実家で?」
学長「そう。武蔵野にいることによって、これまでの反抗してきた歩みに意味が与えられているというか。反抗しようと、受け入れようと、結局一回限りの人生を歩んでいるのでね。反抗して思い切り走ってみたら何か一周してまたお釈迦様の手のひらの上にいたっていう感覚っていうかな。だから若い人たちにも、反抗したいときは反抗すればいいんじゃないかと思います」

「反抗」という言葉は動画にも登場しましたね。自分の人生を開拓するために、時には反抗心が必要なのかもしれません…。

研究者、学長になる/武蔵野大学のブランドステートメント

学長「8年前、サバティカル(研究休暇)で1年間アメリカにいたんだけれど、秋口になって『あんたは来年から学長だぞ』と連絡がきて」
江端「急ですね(笑)」
学長「えーっ、とびっくりしつつ学長をやることになって、すごくおっかなくて。自分には学長なんてとても務まらないと思いました。それまで地上の浄土みたいなアメリカ生活だったのが、一気に娑婆世界に引き戻された感じで(笑)。残りの数カ月間、『ああ学長か、学長か』と思いながら過ごしました。
 でも帰ってきた翌日、学長になる年(2016年)の4月から『”世界の幸せをカタチにする。”っていうブランドで武蔵野は走ります』と聞いて、結構いいなと思いました。教職員の皆さんが何年もかけて作ったブランドステートメントです。これならやれそうだと思って、俄然やる気になりました。このブランドステートメントは、仏教の『生きとし生けるものが幸せに』という願いにも沿っていますし。そして学生の皆さんも、それぞれ専門の学びを生かして、いかにしたら世界の幸せを形にできるかっていうことを考えながら学びができるってすごくいいブランドだなって思いません?」
江端「そうですね、そう聞くといいブランドに思えてきました」
学長「武蔵野で学ぶ学生の皆さんには、入学の時から、そんな願いを抱いている大学なんだと心に留めて、学生生活を送ってもらえるといいですね。もちろん、自分の幸せも大事なんだけれど、自分の幸せはあなたの幸せ、あなたの幸せは自分の幸せ、そこが融通無碍に関わり合っていく世界っていうかな。それが本当の幸せなんじゃないかな」
森貞「申し訳ないながら、入学した時は『カッコつけたことを掲げてらっしゃるわ』って、ちょっと思ってたんです」
江端「まあちょっと、洒落くささはありました(笑)」
学長「いいですよ、どんどん反抗してください(笑)」
森貞「お話を聞いて、ただただ綺麗事を掲げているわけではないんだなと感じました」
学長「そうですね(笑)それから、やっぱり学校の真価が問われるのは、学んでいる時に楽しいということも大切だけれど、卒業するときこの学び舎に学んでよかったなと思えるか。あとは、年を重ねてからも、私は武蔵野の卒業生で良かったなと。そういうふうに振り返られるような学び舎になればいいですね」

武蔵野大学のブランドステートメント「世界の幸せをカタチにする。」
大学のWEBサイトでもご覧いただけます。

頭を空っぽにする時間/卒業生のみなさまへ

学長「何のために学長をやっているのか、あるいはこの学校が何を目指しているのか、日々の忙しさの中でやっぱり忘れちゃうんですね。その時その時の課題を追いかけていると、結局何のためにっていうのが見えなくなってしまう。でも、武蔵野大学が仏教精神というものを根っこに置きながら、社会で活躍していく有為な人材を育てたいという願いはいつもどこかで思い出しながらでないといけない。そのために学長の仕事も含めて教育研究に取り組んでいるわけですから。だから、どこかでふっと頭を空っぽにする時間があるといいですね。
 私は犬と散歩を週に2、3日します。あるいは花を見ている時。で、空っぽになると、忘れていた願いが少し蘇ってくる。花も水をやらないと枯れてしまうけれど、頭の中も毎日毎日忙しさで瑞々しさがなくなってくると、枯れちゃうからね。そういう空(くう)になる時間が、絶対必要ですよ。だから学長も1週間の中でこの日は休みっていう時間を無理やり作ってやろうかとか思っているんだけれど(笑)。
 だからね、今、武蔵野の卒業生も頭の中がいっぱいで見えなくなったら、武蔵野に帰っておいでなさいよ。武蔵野キャンパスの雪頂講堂に行って、真っ暗な誰もいない講堂にひとり腰掛けて、仏様と対話してごらんなさい。そうすると、乾いていた頭の中が瑞々しさを取り戻して『ああそうだ、私の命っていうのはこういう方向に輝きたいと思って生きてきたんだな』っていう何か根っこのところの願いが蘇ってくる。命って、もちろん自分も輝かせようと思って生きているけれど、命っていうのは願われてあるものだと私は思うから。輝け輝けっていう願いが命を支えている。仏様の前だったり、花を眺めているときだったり、犬と遊んでいるときだったり。そういう時間というのは、根っこのところの何か自分にかけられている願いに気付いていく時間なんだよね」
森貞「自分を労るということですね」

まさに「初心忘るべからず」ですね。
ちなみに、学長の愛犬は4歳の柴犬。こむぎちゃんというそうです。かわいい。

西本学長、イドバタコウギはいかがでしたか?

カット後に、番組への感想をいただきました!

西本学長:
パーソナリティのお二人、そして今収録してくださっているスタッフのみなさん。学生さんとか卒業生とかいろいろなご縁がある方だと思うんですけれど、やっぱりこのイドバタコウギを聞いてくださっている方にも、若い高校生の方とか、大学生の方とか、あるいは卒業した方、あるいは武蔵野大学を卒業していなくても、社会の中でいろいろ悩みや苦しみや喜びに生きている人がいて、そういう方が集う場を作ろうっていうこの番組。それが素敵だよね。学生なら学生だけじゃなくて、学生同士が繋がっていく。違う世界に繋がっていく場としてこのイドバタコウギを始められた。すごく意味のある活動だと思います。

おわりに

今回のイドバタコウギもお楽しみいただけたでしょうか?
次回以降もいろいろな学部の先生方に登場いただく運びとなっています。
チャンネル登録のうえ楽しみにお待ちください!
各種SNSのフォローも、よろしくお願いいたします…!

文責:森貞 茜


番組クレジット(収録当時)/SNS情報

【三階教】消えた仏教宗派「三階教」とは?【ゲスト:西本照真先生(三階教・仏教学)】#01
ゲスト:西本 照真 先生(武蔵野大学 学長/人間科学科 教授)
企画/パーソナリティ:江端 進一郎・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
撮影:伊藤 遥香・大石 歩果(日本文学文化学科4年)
   堀 羽美(日本文学文化学科3年)
編集:江端 進一郎・大石 歩果・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
協力:横山 裕貴(映像制作/PA)
   黒澤 雄大(日本文学文化学科 卒業生)
監修:土屋 忍(日本文学文化学科 教授)
参考文献:
 矢吹慶輝「三階教之研究」(1927、岩波書店)
 西本照真「三階教の研究」(1998、春秋社)
 武蔵野大学出版会「仏教と気づき 『悟り』がわかるオムニバス仏教講座」(2016)
収録日:2023年5月9日(肩書・学年は収録当時のもの)
提供:武蔵野大学

武蔵野大学発インターネットラジオ番組「イドバタコウギ」
YouTube:https://www.youtube.com/@idobatakougi_mu 
Spotify:https://open.spotify.com/show/3EmRBUFvnClnzpPHYDrbT6
Twitter:https://twitter.com/idobatakougi_mu 
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Ⓒ武蔵野大学インターネットラジオ研究会

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