火星の別件逮捕~残虐な地球人~

 言わずもがな、火星にはタコ型火星人が住んでいる。彼らの知能はあまり高くなく、また動きも鈍い。ゆえに、火星に移住した地球人は、彼らを食料にした。味は地球のタコよりも美味で、地球人はこぞって火星人を捕まえた。
 当初、数千万はいた火星人は、殺され食われ、殺され食われ、まれに生きたまま食われ(タコの踊り食い)、数年で1万人程度にまで減少した。残虐な地球人も、さすがにこのままでは良くないと、火星人食用禁止法を制定し、火星人の保護に努めた。
 しかし、そこは残虐で狡猾な地球人。法の抜け穴を考え出した。それこそが“別件逮捕”だった。火星人を食べるために捕まえることが禁止されているのなら、別の目的で捕まえてしまえばいい。
 目的は何でもいい。
 可愛かったから、愛し過ぎたから、身の危険を感じたから、……だから捕まえて殺した、と。
 こうして火星では“別件逮捕”が大流行し、とうとうタコ型火星人は絶滅してしまったのだった。

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