見出し画像

雨降る正午、風吹けば2022【東京公演】の感想

こんにちは、今日は雨降る正午、風吹けば2022の東京公演の感想を書きたいと思います。

僕が観劇したのは、
春組2回(7月13日19時回、7月20日19時回)
夏組1回(7月21日19時回)
秋組1回(7月17日11時30分回)
冬組1回(7月22日19時回)
の合計5回です。

【初の会話劇】

れったんきっかけで舞台観劇するようになったので、基本的に普段エンタメ舞台を観ていますし、知り合いに誘われて行く舞台もその系統が多く、過去に観劇した会話劇も一人芝居の作品だった為、いわゆる「舞台」「会話劇」を能動的に観るのは今作が初めてでした。

ただ特に不安に思ったりはしていませんでした。
むしろ日永麗さんの過去作での感情の揺れ動きを丁寧に表現した表情の作り方や声も駆使した演技がとても好きだったので、本格的な会話劇でどんな演技を魅せてくれるのかとても楽しみでした。

【作品全体の話】

結論としては最高の作品でした。
6人という極小の人数で派手な音楽やアクションがないですが、約90分だれることなく観劇することが出来たし、なんなら最後に「もっとこの作品の世界に浸っていたい」と思いました。

印象としては「静かだけど熱く丁寧な作品」「とてもゆったたりしているけどあっという間にすぎる作品」でした。

主役兼語り部の三好さん演じる治郎の語りがとても気持ちよく間を取るのと、他のキャストもあからさまな説明台詞がほぼなく、説明系の台詞も会話の中にうまく織り込んでいるので「聞かされている感」がなく、心地よくゆったり会話劇を楽しむことができました。
感情表現も大袈裟にリアクション取ったり、声を張り上げたりすることは少なく、大事なことは静かだけど優しくハッキリしたトーンで話されることが多く、これも心地良かったです。

他にも各組ごとに風子の衣装を組の季節をイメージした衣装にするだけでなく、風子が治郎に渡す花も組ごとに変えていたり、風子に私服を渡す幸恵の私服も変えていたり、作品の世界をとても丁寧に描いているなと感じました。

また「あえて全部話さない」演出や台詞もとても好きでした。

例えば治郎が風子に直接的に別れを告げないで「お茶菓子を取ってきてほしい」と言って、他の部屋に行かせた間に家を後にする場面はこれの筆頭です。

他にも風子が幸恵を訪ねて「料理を教えてほしい」と頼むシーンで、幸恵が「雨降る正午」を読んでいる場面。
永井と柳の「しっかり注げよ」で永井が結核で長くないことには直接的には触れないも、2人とも「これが最期」と分かっている様子。
それまで「呪い」として治郎の前に現れていた今は亡き母が優しい笑顔になって治郎の元を去るシーンで直接的に「貴方を愛していた」とは言わないものの母の表情とおどろおどろしい青色から暖かい黄色に照明が変わることで治郎の受け取り方が180度変わったことが分かるシーン等々、どれも最高でした。

だからこそ逆に分かりやすく登場人物全員が幸せそうな顔をみせる機関車のシーンや、チャンバラや幸恵の診療所を訪れる永井といったコミカルなシーンの緩急が効いて刺さってくるのだろうなと感じました。

演技だけでなく小道具や音響、照明の全てがとても丁寧で箱がコンパクトだったこともあって「派手さはないけど見えないところまで拘った綺麗な工芸品」を観ているような作品でした。

【組ごとの印象】

「風子のキャストによって作品全体の雰囲気が変わる」という事前情報が脚本演出の桐山さんと主演の三好さんからありましたが、風子キャストだけでなくチーム全体で雰囲気が作られているのだなと、実際に観劇して思いました。

個人的な印象を漢字二文字で表現すると、
春組…芽吹
夏組…溌剌
秋組…成熟
冬組…盤石
という印象でした。

かつ春組と夏組が「風子の成長物語」という側面を強く感じた一方で、秋組と冬組には「治郎が救われる物語」という印象を強く感じました。

これはそれぞれの風子によるものだと思います。

個人的に春組と夏組の風子に劇中で幸恵が言及する「白にも黒にもなる」「まだまだ子供」という印象を強く持ったので、最期の和装での所作やその直前の文通シーンでどんどん手紙を読む言葉に想いが乗っていく様子が鮮烈だったためです。

一方で秋組と冬組の風子も危うそうな印象はある一方で初期からから彼女なりの眼で世間をしっかり見定めているような雰囲気があり「しっかりしている」という印象を持ったので、劇中で一番危うい治郎の隣にいて影響されないどころかしっかり治郎を良い方向に持っていくパワーがあると感じました。

ただ上記の通り各組を1回ずつ観ての印象なので、全組を観劇した今あらためて各組を観たらどういう印象になるのか、というのはとても気になっています。

【日永麗さんの感想】

冒頭で触れた通り会話劇で、いったいどんな演技を魅せてくれるのかとても楽しみにしていましたが、本当に素晴らしかったです。

劇中で孤児(もんぺ姿)→治郎助手(ワンピース)→3年後(和装)と3パターンの姿があり、髪形や衣装といった記号的な表現だけでなく、それに添うように話し方や表情の作り方、歩き方といった所作も全て丁寧に整えて魅せて変化させていて素敵でした。

印象的なシーンはチャンバラ後に治郎に「梅雨」や「名前」といった漢字の読み方を風子が教えてもらう場面で、風子がどんどん表情や話し方が生き生きしていく様子。

治郎との文通シーンで最初はたどたどしかった手紙を読む声が、季節を経るごとに次郎への想いが深まって、最後はとても情感たっぷりに丁寧に手紙を読むようになる場面。

最期に治郎に「貴方が、私の家族で良かった」と告げるときの泣きそうだけど幸せそうにもみえる顔、その直後の「隣の部屋のお茶菓子を取ってきてください」と治郎に言われて「もう先生に会えないのか」と気づいて振り絞るように「先生はいつも我儘なんだから」という場面。

どれもこれも最高でした。

コロナ罹患による公演中止は誰よりも本人が残念に悔しく思っているはずなので、無事に8月の大阪公演が実施できる状態になることを心から願っているし応援しています。

【8月の大阪に向けて】

まだまだ予断を許さない状態なので軽々しく「大阪が楽しみ」と言えませんが、それでもやっぱり「また観たい」と思えた作品だったので、これからは自分も体調管理に一層気をつけながら過ごして、無事にまたこの作品を観劇できるよう座組の皆さんを応援しています。

この記事が参加している募集

#舞台感想

5,865件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?