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【Project Focus】被災経験を元に「より良い復興」支援< 技術協力 >

プロジェクト名:インドネシア 中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト
JICA事業受注・実施協力企業:八千代エンジニヤリング株式会社株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル日本工営株式会社パシフィックコンサルタンツ株式会社株式会社パスコ


 インドネシアの中部スラウェシ州では2018年9月、マグニチュード7.5の地震が発生。被害は死者・行方不明者4,500人以上、被災者17万人以上、住宅損壊10万戸におよんだ。
 同国政府の要請を受け、日本は自衛隊を派遣し、首都ジャカルタでは国際協力機構(JICA)専門家が復興プランの策定から復旧・復興事業の実施まで一連の支援ができると提案。同国政府は複数支援機関の関与による混乱を防ぐため、日本のみに復興基本計画の策定を依頼した。
 「中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト」(3年間)がスタートしたのは災害発生から3カ月後の12月。現地では州都パル市などを中心に橋梁の崩壊、灌漑水路の損傷、病院・学校・政府庁舎などの公共施設の機能不全が生じ、主要産業である農業や漁業にも大きな影響が発生していた。プロジェクトは単に被災したインフラや公共施設を元に戻すのではなく、2015 年の仙台防災枠組で定義された”より良い復興(Build Back  Better)”の思想に基づいた。すなわち、耐久性の強化や津波対策、液状化地滑り対策、洪水・土砂災害対策など、次の災害に備えることに重点が置かれた。
 本プロジェクトではまず、強靭な構造物を作るためのマニュアルやスピーディーなインフラ復興を進める詳細設計、さらに危険度を評価するハザードマップを緊急的に作成。同国ではこのハザードマップを精緻化し、地方政府や地域住民の意見を組み込みながら復興計画を進めた。
 翌年には東日本大震災で被災した東北自治体職員が同国を訪れ復興経験を共有するセミナーを実施。被災者に対しては、避難シェルターでの職業訓練、女性や中小企業への生計回復支援、さらに漁村では木造船製作支援、水産加工技術の指導、心のケアを含む防災教育セミナーなども行った。

地震動により被災した中層階の鉄筋コンクリート製建築物
市街地の中心部を流れるパル川支流の氾濫
津波被害にあった海岸線近くの建物
耐震性が強化された幹線道路の橋梁
災害リスクの低い高台に整備された移転地とアクセス道路
過去に類を見ない液状化地すべりによる大規模な被害
地震により落橋した橋梁を眺める様子

本記事掲載誌のご案内

本記事は国際開発ジャーナル2023年9月号に掲載されています。
(電子版はこちらから

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