kazita sinobu

縦横家

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  • 今週の写真集

    毎週、1冊気になる写真集を紹介します。

最近の記事

安村崇『日常らしさ』

写真の賞レースと聞いて詳しくない自分が思い浮かぶのが木村伊兵衛写真賞とキヤノン写真新世紀。本書はその写真新世紀で1999年にグランプリを受賞した写真に新作を加えた写真集とのこと。 本人の実家で撮られたという写真の数々は、ある世代が思い浮かべる「実家」そのもののような風景の中に、同じく「実家」にありそうなものが配置され写されている。 「ある世代が思い浮かべる実家」というのは(あくまで想像なのですが)恐らく高度成長期における理想的な素敵な暮らしを体現したかのようなもの。それは

    • 初沢亜利『東京、コロナ禍。』

      写真の役目の1つが社会的な事象の切り取りだとして、2020年の2月から始まり今も終わりが見えない新型コロナによって起きている諸々は、どう考えても歴史の教科書に載りそうな状況が続いてる。 (おそらく)いち早く写真集としての形を成して発売された『東京、コロナ禍。』は日本で最初に新型コロナが多く報道されるきっかけとも言える豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号をはじめ、緊急事態宣言下、そして解除後の東京を切り取っている写真集だ。 どうしていいかわからない未知のウイルスに対して、今ま

      • Adam Fuss 『Water』

        ロンドン生まれニューヨーク在住の写真家Adam Fussのひたすら水の波紋や水面のゆらぎを収めた写真集。 いくつもの同心円がが幾重にも重なり幾何学的な模様を作りつつもどこか柔らかみを併せ持ったような写真から、蛇や赤ちゃんなどが動くくとによって起きる水面のゆらぎを少ない色数で表現している。本来時間を切り取るはずの写真というメディアなのに、本来波風のない水面に浮かぶゆらぎによってそこであったであろう動き、つまり時間を感じさせられる。 他にも飛沫を伴った写真や乳白色の水が描く軌跡な

        • マーリア・シュヴァルボヴァー 『SWIMMING POOL』

          カラフルな水着を着た無表情のモデルに、淡いポップな色彩の写真が並ぶこの写真集は、そのポップさとは裏腹に共産主義時代のチェコスロヴァキア時代に作られた公営プールを主なロケ地としている。 機能主義建築と呼ばれる時代の建物群は装飾などが排され、ただひたすら機能を優先に作られており無機的な直線が並ぶ。その風景に有機的でありながらも幾何学的な波紋を浮かべる水面と無表情な人物が配置され、どこか現実的ではない写真が続く。 人物は様々なポーズをとっており、明らかに自然な佇まいではない。風景に

        安村崇『日常らしさ』

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        • 今週の写真集
          7本

        記事

          Christopher Herwig 『SOVIET BUS STOP』

          ソビエト連邦に所属していた国々の面白いバス停だけを収めた写真集。一軒家のようなものもあれば屋根がないもの、とてもバス停に見えない数々の建築写真に「こんなバス停ありなの!?」と目を疑う写真たち。 当時のソビエトでは社会主義国家のもと、建築物も様々な規制があり建築家はその創造性を発揮する機会がなかったらしい。また自家用車を持つのは一部の人だけだったらしく主要な移動手段はバス。もちろんバス停もガイドラインがあったものの、なぜかあまり守られてらしく建築物の実験装置のような状態に。 考

          Christopher Herwig 『SOVIET BUS STOP』

          藤岡亜弥 写真集『私は眠らない』

          写真界の芥川賞と言われる木村伊兵衛賞を2018年に写真集『川は行く』で受賞した藤岡亜弥の写真集。 写真家自身が実家に帰ったときの写真が基本となっているが、家族の写真はきちんと顔が写っておらず、どこかメタ的でもありながら極めて私的な写真達にも見える。 母らしき人物の特徴的な手が何度も登場し、その人物の背景をいやがうえにも想像してしまうし、そこを見つめる写真家の目線を思うと込められた思いの強さも伺える。遠くに見える象徴的な建物を色々な道から捉えた写真は繰り返される日常から足掻

          藤岡亜弥 写真集『私は眠らない』

          ABBAS KIAROSTAMI 『DOORS AND MEMORIES』

          映画監督アッバス・キアロスタミといえば『友だちのうちはどこ?』『そして人生はつづく』そしてカンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した『桜桃の味』など、日本で知られる数少ない映画監督だと思う。 そんなアッバス・キアロスタミが撮った写真集は(おそらく)イランに数多く存在する木製ドアをひたすら記録したもの。どれも年季が入ったドアでしかも全てのドアは閉ざされている。見開きごとにドア全体の写真と閉ざされて錠がかけられている部分の写真が掲載されている。そのドアの奥がどんな世界が繰り広げられ

          ABBAS KIAROSTAMI 『DOORS AND MEMORIES』

          駅裏8号倉庫とはなんだったのか。飯塚優子インタビュー(再掲)

          1981年9月、札幌にオープンし1986年4月に活動を終結した札幌のフリースペース「駅裏8号倉庫」。札幌駅の北側にあった倉庫を改装して運営され、5年間でなくなったそのスペースは、その時代を生きた人々のあいだでは今でも伝説のように口に登ります。 省略して「駅8(えきはち)」と呼ばれるその空間はどのような場所だったのか。2005年当時は記録がほとんど見つけられず、それならばとその空間の運営委員だった人に話を聞いてみようと行ったインタビューです。この回はレッドベリースタジオ代表の

          駅裏8号倉庫とはなんだったのか。飯塚優子インタビュー(再掲)

          駅裏8号倉庫とはなんだったのか。中島洋インタビュー(再掲)

          1981年9月、札幌にオープンし1986年4月に活動を終結した札幌のフリースペース「駅裏8号倉庫」。、札幌駅の北側にあった倉庫を改装して運営され、5年間でなくなったそのスペースは、その時代を生きた人々のあいだでは今でも伝説のように口に登ります。 省略して「駅8(えきはち)」と呼ばれるその空間はどのような場所だったのか。2005年当時は記録がほとんど見つけられず、それならばとその空間の運営委員だった人に話を聞いてみようと行ったインタビューです。この回は札幌のミニシアター「シア

          駅裏8号倉庫とはなんだったのか。中島洋インタビュー(再掲)

          個人音楽家が著作権管理をどこかにお願いしたい時

          フリーの音楽家さんが自分の作った音楽の著作権管理をどこかに委託するにはどうすればよいのか、という質問があったのでちょっと調べてみました。調べたはいいけどすぐ忘れてしまうので自分用のメモです。 日本国内における音楽著作権管理事業者そもそも音楽著作権管理事業者はJASRAC一択ではなくなったのでは?と確認したところ、2001年に著作権等管理事業法が成立し、著作権管理事業はイーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス、ダイキサウンドが参入したそうです。選択しがいくつかできたわけ

          個人音楽家が著作権管理をどこかにお願いしたい時

          司会[モデレーター]のコツ05(実際どうなのか編)

          4回にわけて司会のコツについて書いてきました。しかし01(事前準備編)でも書きましたが、僕自身はいつもアドリブで質問や進行を考える事が多く、その時の状況に合わせて話をつないでいます。 じゃあ4回に分けて書いてたやつはなんなんだと言われれば「自分がもしちゃんと事前に準備するとしたらどうするだろう」と考えて書いたものです。全部想像。妄想。なので実際僕の場合どうやってやってるかをオマケで書いておきます。 テーマや登壇者について軽く調べる/読み仮名の確認登壇者のことを事前に調べま

          司会[モデレーター]のコツ05(実際どうなのか編)

          司会[モデレーター]のコツ04(困った編)

          本番についても書き終わったものの、本番中は本当に何が起こるかわからない。トラブルなんて当たり前に起きます。 そんなトラブルの中で代表的なものを思いつく限りどうするか考えてみました。答えが参考になることは稀だと思いますが「そういう事も起きる」と思って本番をむかえた方がトラブルになっても落ち着いていられるかもしれません。 ※専門で職業にしている人間ではありませんので、偏ったことを書いていますし、勘違いなどもあると思います。ご了承ください。 次の質問が思い浮かばない随時質問を頭

          司会[モデレーター]のコツ04(困った編)

          司会[モデレーター]のコツ03(本番編)

          いよいよトークイベント本番。始める前に時計(タイムキーパー)の準備は問題ないか確認しておきましょう。不安な人は質問事項をまとめたメモとペン持って行くことを忘れずに。 ※専門で職業にしている人間ではありませんので、偏ったことを書いていますし、勘違いなどもあると思います。ご了承ください。 時間になったら初めて良い?開始時間の判断はタイムキーパー(主催者)の判断に任せます。何かの不都合でスタートが遅れる(押す)こともあります。勝手に始めないよう気を付けましょう。 とはいえ、イ

          司会[モデレーター]のコツ03(本番編)

          司会[モデレーター]のコツ02(全体打ち合わせ編)

          主催者や登壇者が一堂に会して打ち合わせすることはほとんどありません。なんなら本番直前の控室だったりします。そこで事前に何を確認・共有しておけばよいかが今回の記事です。きちんと確認していきましょう。 ※登壇者によっては事前に質問事項がわかってないと答えられないというタイプもいますので、そういった方かどうかは主催者などに確認して、必要であればリストアップした主要な質問を事前に共有しておきましょう。 ※専門で職業にしている人間ではありませんので、偏ったことを書いていますし、勘違

          司会[モデレーター]のコツ02(全体打ち合わせ編)

          司会[モデレーター]のコツ01(事前準備編)

          司会とか、いわゆるモデレーターということをやることが多く「どんなことを気にしてやっているのか」という質問を頂いたのでそのまとめです。 ここでいう司会は、いわゆる進行台本がある司会ではなく、トークイベントなどで登壇者(ゲスト)に話を振るタイプの司会です。世の中的にはモデレーターとかファシリテーターとか言うらしいですね。ぶっちゃけ違いはよくわかっていません。 僕自身はいつもアドリブで質問や進行を考える事が多く、その時の状況に合わせて話をつないでいます。といった内容では少しも参考

          司会[モデレーター]のコツ01(事前準備編)