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鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎を観て感想


ゲゲゲの謎を観てきました。

ずっと話題になっていて、かなりダークでグロいらしいという前評判のみで行ってきました。

これ、本当によくできた映画。
ずーっと飽きずに最後まで楽しめました。

私は元々ゲゲゲの鬼太郎にはまっていたとかではありません。テレビで放映されていた5期や墓場鬼太郎、ウエンツくんと大泉洋の懐かしい実写映画、朝ドラのゲゲゲの女房を観たことがあるくらいの凡そ一般的なゲゲゲの鬼太郎知識のみ持ち合わせていました。映画鑑賞にあたりこれらの作品を見返すこともなく、なんとなくゲゲゲの鬼太郎は知ってるくらいの人間です。
おそらくこのくらいの知識の人は日本中大勢いると思うので、変に過去作品予習せずゲ謎を観に行くのもありだと思います。
というのも、作中に出てくるキャラクターやモチーフ、ストーリーについて『なんか思い出した!』と、無意識のうちに刷り込まれていたものが脳内にぶわーっと溢れてくる快感も心地よかったからです。

まだ悩んでいる方、敷居はそこまで高くないと思うのでネタバレなしで是非劇場へ観に行ってください。

以下、ネタバレあり初見感想。

全部初見感想なので間違っている部分などがあっても大目にみてください。


・全体を通じて


水木しげる100周年にふさわしく、太平洋戦争の時代から令和に生きる私たちへの『忘れないで』欲しい平和への願い、また子どもたちへの希望をつなぐメッセージに溢れる作品だと思いました。
終盤、幽霊族たちが産声を上げた鬼太郎を守りあのちゃんちゃんこになるシーンは本当に涙が…
ストーリーでえぐい設定は色々あるものの、それらの悪習を断ち切り、悲劇を忘れずに未来に希望を繋いでいく…そんな映画でした。
思えば、水木と沙代さんは将来銀座のパーラーでメロンソーダを、時弥くんとは野球を…
ゲゲ郎は時弥くんに沙代さんを連れて東京タワーを見に行こうと約束していました。水木&ゲゲ郎は子ども2人と未来の楽しみについて明るい約束をしていたなあと思い返すと、よりこの映画のメッセージを感じずにはいられません。

・昭和と血液銀行とM


水木の職場での煙たい感じ、とっても昭和で良かった…
分煙なんかないもくもくと埃っぽいあの雰囲気大好きです。オフィスで仕事しながら煙草吸ってるのとても良い。風立ちぬを思い出す。

取引先のでかい企業の会長が亡くなり、その後継者決めに立ち合いに田舎の秘密の村に行く…ミステリーとホラーとが合わさった導入にわくわくしました。
また、鑑賞時Mと龍賀製薬についての元ネタってミドリ十字も関係がありそうだなあと感じていました。この辺り語れるほど詳しくはないのですが、戦時中〜戦後にかけての負の遺産として実際にあり、今も続いている事柄。
詳しくは以下の記事がわかりやすいかと。


・金田一耕助シリーズ読む&観返したいー!


序盤の村の描写がそのまんま犬神家の一族でテンションが爆上がり。
あと最近見たドラマだとガンニバルも。この辺り、すべてのミステリーホラーは金田一耕助に繋がるだと思うのでどれが元ネタとか上げたらキリがないのですがこういう曰く付きの村にあるあるが散りばめられていてとても良かったです。
村長と取り巻きのあの感じ!もう大好き。
もうここからして悲劇が起こるんだろうなあとわくわくするわけですが、ストーリーは私の想像を遥かに超える邪悪でした…

・沙代さん


沙代さんの登場シーン、どれも日陰だった気が…
水木との初対面、下駄の緒がきれて一人では歩けなく困っている状況が今思えば彼女が置かれている立場を示唆していたのなあと思います。
外(都内)行くための下駄(方法)が壊れて水木の手を借りてようやく歩けるようになった。
水木と別れた後、決意したような眼光になるのも印象的。
彼女が憧れたクリームソーダを、ゲゲ郎夫妻がデパートの屋上のデートで飲んでいたのはとても良い対比。
この作品、至る所にこういった対比が散りばめられていて見返したくなりますね。
終盤に差し掛かるトンネルのシーン、あのまま沙代さんだけでも逃げてもよかったのに水木に着いていくのがとても美しかったです。
だからこそ、その後の展開はとても悲しい。ただただ悲しい。
一思いに狂骨で水木をころせただろうに、自分の手で締め上げるのが最期に残った人間らしさだったのかもしれないと思うとまた苦しい。

・龍賀家の大人たち


真相を知った水木がたくさん代弁してくれたのですがこの人たち人間と思えない。
(真相判明する時、ずっと脳内でポケモンタケシのお前ら人間じゃねえ!が再生されました…しんどい場面だったけどタケシのおかげで一人勝手に笑いそうになりつつ観てました)

妖怪のが温かい(ヌクモリティ)なのは鬼太郎あるあるだけど、にしてもひどかった。
ただ、乙米の兄妹に対する態度などに人間味を感じてしまいまた苦しい。
悪だけど時貞に洗脳され利用されまた虐げられた側の人たちだから憎みきれない。
乙米と幻治は若い頃どうだったのか、丙江の駆け落ちは、長田夫妻は…上げたらキリのない彼らのぐちゃぐちゃで歪な人間関係がとても気になります。
この人たちの過去についていつかスピンオフが来たらなあと期待しつつ、二次創作を読むことにします…
にしても、時麿や乙米たちの母親について一切説明がないのが龍賀家を表していてエグいです。時貞の子を産むモノとしての扱いで、死後は話題にも上がらない。もちろんメタ的には描写する必要がないから省いたとは思うものの、女はモノとして扱われる龍賀家らしいです。

鑑賞後に公式HPの相関図を見て、さらに心を抉られ…時貞が家族の女性全員に手を出し子を産ませていたのが本当にグロい。

・最後に


龍賀家について感想を述べていたら気分が悪くなってきたのでこのくらいで…
ハッピーな二次創作が流行る理由がよくわかりました。

ゲゲゲの鬼太郎6期や墓場鬼太郎、総員玉砕せよ!などの水木しげる作品や、金田一耕助シリーズなどの本作品の原案になったであろう作品も再履修しようと思います。

映画作品として、とても良質なホラーサスペンスものでした。
また劇場で観たいです。

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