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<論文>非接触体温計でコロナのスクリーニングはできるか?

Performance of Temporal Artery Temperature Measurement in Ruling Out Fever: Implications for COVID-19 Screening
J Gen Intern Med. 2020 Sep 15 : 1-3.
doi: 10.1007/s11606-020-06205-2.

イントロダクション
COVID-19感染防止のためCDCの推奨に体温スクリーニングが含まれている。これまで側頭動脈体温計(こめかみ体温計)(TAT)は発熱のスクリーニングに広く用いられていたが、先行文献では感度が悪く、変動が大きいことが示唆されていた。しかし、研究あたりのサンプルサイズは小さく、小児科や外科、集中治療に焦点が当てられており、実際のスクリーニング集団に一般化できていなかった。

方法
10の急性期病院からなる大規模医療圏で2013年3月から2019年6月の間に収集された電子カルテデータから体温測定値と体温評価方法を抽出した。直腸温測定または口腔内温度測定から15分以内に TAT測定が記録されている患者ごとのペアデータを特定した。複数の測定が行われた場合は平均値を使用した。

結果
460万回以上の体温測定を行った成人(18歳以上)60万2,089人による救急受診数184万回を特定した。ペア測定患者の入院率は50.0%であった。直腸体温集団および口腔体温集団における発熱の有病率はそれぞれ34.4%および4.3%であった。 38°C(100.4℉)をカットオフ値としたTAT測定で、直腸温と比較すると、感度0.27(95%CI 0.27-0.31)、特異度0.98(0.96-0.99)、PPV 0.85(0.79-0.91)、NPV 0.72(0.69-0.74)だった。口腔温と比較すると感度0.23(0.20-0.26)、特異度0.99(0.99-0.99)、PPV 0.53(0.48-0.59)、NPV 0.97(0.96-0.97)だった。ペア分析を5分または10分に限定した場合、発熱感度に有意差はなかった。直腸温との比較においてTATのカットオフ値を99℉(37.22℃)にすると感度0.63(0.58-0.67)、NPV0.82(0.79-0.84)に増加し、特異度0.86(0.83-0.88)、PPV0.7(0.65-0.74)に減少した。

無題

ディスカッション
先行研究と同様に、TATは検査性能が低く、陽性の3例に1例未満しか識別できなかった。CDCが現在推奨している発熱(カットオフ値100.4°F)およびTATスクリーニングに基づくと、基準を満たす人々の大多数は誤分類されるだろう。TATのカットオフ値を低くすれば、必然的に偽陽性率が高くなり、COVID-19の検査が促され、感染していない人には不必要な自己隔離や休職が発生する可能性がある。職場や高リスクの環境でのCOVID-19の感染を緩和しようとする公共・民間団体においては、公衆衛生の目標が達成されることを確実にするために、より低いカットオフ値(例えば99°Fなど)、代替技術、または連続的な体温評価アプローチの組み合わせを検討すべきである。


<感想>
何となく言われなくても皆わかっていたことだとは思います。とりあえず3人に2人は見逃すかもしれないという目安を知っておくことが大事かと思います。そもそもコロナを体温「だけ」でスクリーニングすること自体不十分なのですが…。



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