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<論文>整腸剤のレビュー

AGA Clinical Practice Guidelines on the Role of Probiotics in the Management of Gastrointestinal Disorders
Gastroenterology. 2020 Aug;159(2):697-705.
doi: 10.1053/j.gastro.2020.05.059.

これまで、プライマリケア医や消化器内科医向けの消化器疾患に対するプロバイオティクスの使用に関するガイダンスはほとんどなかった。このテクニカルレビューでは、米国消化器病学会(AGA)が、一般的な消化管疾患を予防または治療するために研究されてきたプロバイオティクス製剤をレビューした。

質問1: C.difficile感染症が確定している症候性の成人では、プロバイオティクスを治療レジメンの一部として使用するべきか?
結果:C.difficile感染症の治療の一環としてのプロバイオティクスのすべての重要なアウトカム全体のCoE(certainty of evidence:エビデンスの確実性)は低かった。

質問2:C.difficile感染症以外の適応で抗菌薬治療を行っている成人と小児には、C.difficile感染症関連下痢症(CDAD)を防ぐためにプロバイオティクスを使用すべきか?
結果:S.boulardiiから得られた最良のエビデンスに基づくプロバイオティクスのすべての重要な結果全体のCoEも、L.acidophilus CL1285・L.casei LBC80Rの2系統の組み合わせも、L.acidophilus・L.delbrueckii subsp bulgaricus・B.bifidumの3系統の組み合わせも、L.acidophilus・L.delbrueckii subsp bulgaricus・B.bifidum・S.salivarius subsp thermophilusの4系統の組み合わせによる成人および小児におけるCDADの予防効果はいずれも低かった。

質問3:クローン病の成人と小児で、プロバイオティクスを寛解導入や維持のために使用すべきか?
結果:クローン病の小児または成人における寛解導入または維持のためのプロバイオティクスのすべての重要なアウトカムの全体的なCoEは低かった。

質問4:潰瘍性大腸炎の成人および小児において、プロバイオティクスは寛解導入または維持のために使用すべきか?
結果:潰瘍性大腸炎の小児または成人における寛解導入または維持のためのプロバイオティクスのすべての重要なアウトカムの全体的なCoEは低かった。

質問5:慢性潰瘍性大腸炎のための回腸パウチ肛門吻合術を受けた成人および小児では、回腸嚢炎の予防または寛解維持のためにプロバイオティクスを使用すべきか?
結果:L.paracasei subsp paracasei・L.plantarum・L.acidophilus・L.delbrueckii subsp bulgaricus・B.longum subsp longum・B.breve・B.longum subsp infantis・S.salivarius subsp thermophilusの8系統の組み合わせから得られる最良のエビデンスに基づくプロバイオティクスのすべての重要なアウトカム全体のCoEは非常に低かった。

質問6:過敏性腸症候群の症状のある小児および成人で、プロバイオティクスを全体的な反応や腹痛の重症度を改善するために使用すべきか?
結果:IBSの小児および成人の治療のためのプロバイオティクスのすべての重要なアウトカム全体のCoEは低かった。

質問7:急性胃腸炎の小児では、下痢の持続時間や重症度を減らすためにプロバイオティクスを使用すべきか?
結果:プロバイオティクスは小児の急性胃腸炎の治療には有益ではないことを示唆するすべての重要なアウトカム全体のCoEは、米国とカナダで実施された研究から得られたエビデンスに基づくと中程度であった。

質問8:早産の低出生体重児では、壊死性腸炎、敗血症、および全死亡率を予防するためにプロバイオティクスを使用すべきか?
結果:早産の低出生体重児の壊死性腸炎、敗血症、全死亡率の予防のためのプロバイオティクスのすべての重要なアウトカム全体のCoEは、1つ以上のラクトバシラス属・1つ以上のビフィドバクテリウム属・B.animalis subsp lactis・L.reuteri(DSM 17938またはATCC 55730)・L.rhamnosus(ATCC 53103またはATC A07FAまたはLcr35)のうち2種の組み合わせから得られる最良のエビデンスに基づき、中等度あるいは高かった。

まとめと結論
プロバイオティクスは臨床ケアの不可欠な要素となっているが、調査した8つの質問の大部分で、プロバイオティクスの使用を推奨するにはエビデンスが不十分か、知識のギャップが大きく、結論を出すことができなかった。テクニカルレビューの結果は、プロバイオティクスがどのようにそのような効果を発揮するかについてのメカニズムの理解には基づいていないことに注意が必要である。その他の消化管疾患や非消化管疾患にもそのようなエビデンスが存在しないことを意味するものではない。プロバイオティクスの生物学的効果は種や菌株に固有のものであることが明らかになってきているため、プロバイオティクスの有用性を評価する際に、多様な菌株の臨床効果をプロバイオティクスという一括りにまとめることは適切ではない。我々は、アウトカムを評価する際に株の特異性を考慮したが、投与量や治療期間、研究集団、除外基準、補助療法の使用、アウトカム測定の違いなどは説明しきれなかった。また、大多数の事例で大規模多施設共同研究はなかったため、集団間の再現性を評価することは困難である。栄養補助食品とされている市販のプロバイオティクスについては、規制要件がないことが臨床試験の結果の質に影響しており、今後検討が必要である。市販されているプロバイオティクスの大部分については、生物学的効果を発揮するメカニズムの理解が不足している。最後に、研究の大部分では、有害性の報告が不十分であった。


<感想>
整腸剤のレビューですが大作でした。結論としてはやや残念というかやっぱりそうだったか,という感じでしたが,プロバイオティクスの効果が菌種レベルで変わってくるというのは一つ勉強になりました。お土産的な要素もある整腸剤ですが,現状のエビデンスを知っておくのもいいのではないでしょうか。



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