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<論文>脂質管理の新しいガイドライン

VA/DoD Guideline for Managing Dyslipidemia
NEJM JW Gen Med October 13, 2020

背景
2015年、VA/DoD(退役軍人省/米国防総省)は、心血管疾患(CVD)イベントの一次予防および二次予防のための脂質異常症の管理に関するガイドラインを発表した。この度、ガイドラインが改訂され、CVD関連死亡の予防に焦点を当てたものとなった。

主要な推奨事項
・脂質異常症患者に対しては、10年CVDリスクに基づいて、目標とするスタチン投与量を達成するように治療する(LDLコレステロール値は目標としない)。
・一次予防では、10年CVDリスクが12%以上の患者に中用量スタチンを処方する。一次予防には、ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体を使用すべきではない。
・二次予防には、ほとんどの患者に中用量スタチンを処方し、高リスク患者(過去12ヵ月間に心筋梗塞(MI)または急性冠症候群(ACS)を発症した患者、ACS、MI、または脳卒中の再発患者、または追加の危険因子(喫煙、糖尿病、末梢動脈疾患、PCIやCABGの既往ありなど)を有するCVD患者)は高用量スタチンにすることが望ましい。
・随時脂質値の測定は毎年ではなく、ときどき(10年ごとに)にする。
・ほとんどの患者にとってCVDリスクを明らかにする上でほとんど価値のない追加検査(例:冠動脈カルシウムスコア、アポリポタンパク質、CRP)は制限する。
・一次および二次予防には、患者に定期的な有酸素運動を奨励する。最近CVDを発症した患者の二次予防には、CVD発症後早期(2~8週間以内)に開始する、構造化された運動ベースのリハビリテーションプログラムを処方する。
・一次および二次予防には、地中海食を推奨する。ω-3脂肪酸、ナイアシン、フィブラートの補給は推奨しない。
・(副作用のため)スタチンに耐えられない患者には、休薬期間を設け、その後、同じスタチンまたは別のスタチンで再チャレンジする;このプロトコルにより、スタチンの服用を中止した患者の90%以上でスタチンのアドヒアランスが得られる。毎日ではないスタチン処方も忍容性やアドヒアランスをよくするかもしれない。

コメント
本ガイダンスは、2018年のACC/AHAのガイドラインとは異なる。二次予防には中用量(高用量ではなく)のスタチンを用い、LDLコレステロール値ではなく患者のリスク因子に基づいてエスカレーションを行うことを提案し、一次予防のリスク層別化に冠動脈カルシウムスコアを用いないことを推奨している。この実用的でエビデンスに基づいたガイドラインはCVD関連死亡予防に焦点を当てているが、編集者は、CVD関連死亡と罹患の両方を予防しようとしている臨床医が、このガイドラインの推奨事項に厳密に従えば、患者を過小評価する可能性があると主張している。


<感想>
NEJMのJWからです。なんとも「まとも」に感じるガイドラインです。高血圧もそうですが,厳しめ⇔緩めの推奨は何年か周期で揺り戻しがある印象です。科学が成熟していく過程ともいえる気がしますし,結局いつもの中庸が大事ということなのかもしれません。

元論文はこちらです。
Management of dyslipidemia for cardiovascular disease risk reduction: Synopsis of the 2020 updated U.S. Department of Veterans Affairs and U.S. Department of Defense clinical practice guideline.
Ann Intern Med 2020 Sep 22.
doi: 10.7326/M20-4648



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