<論文>生物学的製剤・低分子免疫抑制薬の感染症合併症
Infectious Complications of Biological and Small Molecule Targeted Immunomodulatory Therapies
Clin Microbiol Rev. 2020 Jun 10;33(3):e00035-19.
doi: 10.1128/CMR.00035-19.
まとめと結論
(i) 生物学的製剤は、ステロイドなどと併用されることが多いため、感染症合併症との関連性を証明することが困難。
(ii) ヒトの免疫系は多くのことがわかっていない。感染性合併症には予想されなかったもの(例えば、インテグリン阻害薬による治療を受けた患者のPMLや、リツキシマブによるB細胞阻害によるHBVの再活性化など)、予想されたが問題とならなかったもの(例えば、IL-5または好酸球阻害薬による治療を受けた患者の寄生虫感染症や、IL-6阻害薬による治療を受けた患者の重症敗血症など)がある。
(iii) 新しい高価な生物学的製剤による感染リスクは高く見積もられる一方で、ステロイドは過小評価されているが、思った以上に有害。ステロイドと生物学的製剤の併用で感染症合併症のリスクは増大する。
(iv) 生物学的製剤と低分子免疫抑制薬をすべて同じように扱うべきではない。様々な薬剤のリスクには、ほとんどないもの(表18)と非常に高いもの(表19)がある。
アナキンラ(Anakinra キネレット)
ウステキヌマブ(Ustekinumab ステラーラ)
チルドラキズマブ(Tildrakizumab イルミア)
リサンキズマブ(Risankizumab スキリージ)
グセルクマブ(Guselkumab トレムフィア)
メポリズマブ(Mepolizumab ヌーカラ)
レスリズマブ(Reslizumab ?)
ベンラリズマブ(Benralizumab ファセンラ)
オマリズマブ(Omalizumab ゾレア)
デュピルマブ(Dupilumab デュピクセント)
イピリムマブ(Ipilimumab ヤーボイ)
ニボルマブ(Nivolumab オプジーボ)
アレムツズマブ(Alemtuzumab マブキャンパス)
ナタリズマブ(Natalizumab タイサブリ)
イブルチニブ(Ibrutinib イムブルビカ)
アカラブルチニブ(Acalabrutinib ?)
インフリキシマブ(Infliximab レミケード)
エタネルセプト(Etanercept エンブレル)
アダリムマブ(Adalimumab ヒュミラ)
セルトリズマブ ペゴル(Certolizumab pegol シムジア)
ゴリムマブ(Golimumab シンポニー)
リツキシマブ(Rituximab リツキサン)
オクレリズマブ(Ocrelizumab ?)
オファツムマブ(Ofatumumab アーゼラ)
オビヌツズマブ(Obinutuzumab ガザイバ)
トシリズマブ(Tocilizumab アクテムラ)
サリルマブ(Sarilumab ケブザラ)
シルツキシマブ(Siltuximab ?)
セクキヌマブ(Secukinumab コセンティクス)
イキセキズマブ(Ixekizumab トルツ)
ブロダルマブ(Brodalumab ルミセフ)
トファシチニブ(Tofacitinib ゼルヤンツ)
バリシチニブ(Baricitinib オルミエント)
ルキソリチニブ(Ruxolitinib ジャカビ)
イマチニブ(Imatinib グリベック)
(v) 予防戦略は通常有効だが、予防の機会が見落とされたり、不可能だったりする(例えば、治療前のワクチン接種、またはイソニアジドやリファンピンによるLTBIの治療)。より単純で効果的な予防戦略が必要。
(vi) 生物学的製剤や低分子免疫抑制薬は、現在では皮膚科、眼科、多くの内科で主流な治療法となっており、このリストは時間の経過とともにほぼ確実に増加していくだろう。
背景にある免疫抑制とは無関係に、特異的な関連性が確立されている感染性合併症がいくつかある(表20)。
インフリキシマブ(Infliximab レミケード)
リツキシマブ(Rituximab リツキサン)
アレムツズマブ(Alemtuzumab マブキャンパス)
セクキヌマブ(Secukinumab コセンティクス)
ナタリズマブ(Natalizumab タイサブリ)
イブルチニブ(Ibrutinib イムブルビカ)
エクリズマブ(Eculizumab ソリリス)
生物学的製剤や低分子免疫抑制薬を開始する前に、表18の薬剤を除き、すべての患者において感染症の予防を考慮すべき。すべての薬剤について推奨事項をまとめることは困難だが、表18の薬剤を含め、すべての患者に推奨される対策がいくつかある。
(i) 皮膚の最適化:皮膚炎、膿皮症、潰瘍性皮膚がん、疥癬感染、およびその他の潜在的な感染経路の特定と治療を通じた皮膚の健康の最適化。
(ii) 呼吸器の最適化:禁煙、長時間作用型気管支拡張吸入薬やステロイドの使用状況、抗菌薬による慢性または再発性副鼻腔炎の治療、洗浄や内視鏡手術のような局所処置による副鼻腔の最適化。
(iii) 肺炎球菌ワクチン(PCV13の8週間後にPPSV23を接種し、5年ごとにPPSV23を繰り返す)とインフルエンザワクチン(年1回)。
(iv) 感染リスクを最小限に抑えるための行動変容:ガーデニングやリフォーム時の個人用保護具(手袋、防塵マスク、長靴、長ズボン)の使用、無防備な性交渉の回避、大きな建物の掘削の回避、リステリア菌による汚染の可能性のある食品(ソフトチーズや生魚やサラダバーなど)の回避など。 また、低・中所得国への渡航前の専門家のアドバイス。
生物学的製剤や低分子免疫抑制薬の感染性合併症に対する認識と警戒、そして個別化された予防戦略が必要。
<感想>
超大作でした。到底すべてのページに目を通すことはできなかったので,まとめの部分のみ和訳しました(さらにまとめました)。各薬剤の名称も一応確認してみましたが,「?」は商品名がすぐわからなかったものです。自分で使用したことのあるものはほとんどないので,実際の流通がどうかまではわかりません。現実的には,具合の悪い患者さんが来てこれらの薬剤を使用していたら都度参照して対応するしかないように思います。厄介です…。
と思ったら,よさげな本が出ていました。
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