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<論文>風邪に抗菌薬でどれだけ扁桃周囲膿瘍を減らせるか?

Peritonsillar Abscess and Antibiotic Prescribing for Respiratory Infection in Primary Care: A Population-Based Cohort Study and Decision-Analytic Model
Ann Fam Med. 2020 Sep;18(5):390-396.
doi: 10.1370/afm.2570.

目的
プライマリケアにおける呼吸器感染症(RTI)の診察後の扁桃周囲膿瘍(PTA)のリスクを定量化すること。
self-limiting RTIs:「上気道炎」「風邪」「咽頭痛」「咳嗽」「気管支炎」「中耳炎」「副鼻腔炎」

方法
英国のClinical Practice Research Datalinkでコホート研究を実施した。718の診療所の追跡調査期間65,681,293人年と、PTAの初回エピソードのある患者11,007人が含まれた。決定木から、ベイズの定理を用いて、RTIの診察後の抗菌薬処方の有無におけるPTAの確率と1回のPTAを防ぐために抗菌薬治療が必要な患者数との両方を推定した。

結果
PTA患者は11,007人で、年齢標準化されたPTAの新規エピソード発生率は男性10万人年あたり17.2人、女性16.1人であった;PTA診断に先立つ30日間に6,996人(64%)が診療所を受診し、そのうち4,243人(39%)がRTIの診察を受けていた。RTIの診察後にPTAとなる確率は15~24歳の男性で最も高く、抗菌薬が処方されていないRTIの診察では565例(95%信頼区間527-605)に1例がPTAとなったが、抗菌薬が処方された場合は1,139例(1,044-1,242)に1例がPTAとなった。15~24歳の男性では1,121例(975-1,310)、25~34歳の男性では926例(814-1,063)に抗菌薬が追加処方されれば、1例のPTAが回避される可能性がある。RTIでの受診後のPTAのリスクは他の年齢ではさらに小さく治療必要数(NNT)は大きかった。リスクは男性より女性の方が低かった。

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結論
RTIに対して抗菌薬が処方されればPTAのリスクは低くなるかもしれないが、若い男性でもPTA1例を予防するためには1,000例近くの抗菌薬が必要になるかもしれない。無作為化とデータの標準化の欠如が推定値にバイアスを与える可能性があることに注意が必要である。


<感想>
また一つ風邪に抗菌薬はやめようキャンペーンのデータが出ました。この論文のニクいところは,最後の締めくくりが「PTAのリスクは喫煙者の方が高く、咽頭痛での受診時は禁煙について話し合う機会になるかもしれない」だったことです。いかにも家庭医療的です。



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