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ハーラン・エリスン バシリスク(1972)USA版デビルマン

ハーラン・エリスン「ヒトラーの描いた薔薇」の一編「バシリスク」
 
(ネタバレ注意です)
 
デビルマンみたいな話で驚く。実は元ネタとか、そんなことないよね。「アメリカ版デビルマン」だな。
 
バジリスクは時間、空間、次元、思考を超越するヴェールをくぐりぬけてジャングルに現れた。「世界の中心で愛を叫んだけもの」に出てくる「交叉時点」とほとんど同じだね。
 
バジリスクはベトナムのジャングルで落とし穴にはまって、串刺しになってるレスティグを弟子に選んだ。
 
弟子って何??
 
レスティグはバジリスクと融合して悪魔の力を手に入れたデビルマンみたいなものか?と思ったんだけど、よく読むとちょっと違う。
 
バジリスクは彼と共にいるけど、この怪獣が選んだ人間というだけで、悪魔の能力を自由に使えるようになったわけじゃない。
 
レスティグ兵長は、捕虜にされ、片足と視力を失うほどの壮絶な拷問を受けて、彼の知っている自軍の情報を洗いざらい話す。
 
味方の偵察隊が敵の基地を見つけた時には、敵の将校はこの世のものとは思えないむごい死に方をしていた。バジリスクが殺したんだ。
 
帰国後、彼は反逆罪で軍法会議にかけられた。事件は大きく新聞に報道された。
 
故郷に帰ると、住み慣れた実家は空き家になり、破壊されていた。
 
かつての恋人を訪ねると、同級生が亭主になっていて、さんざんに侮辱される。
 
居場所を突き止めた妹から、彼がいない間に町の人が大勢で押し掛け、実家をめちゃくちゃに壊していったこと、新聞記者やレポーター、いろんな人が家に踏み込んで、不名誉な映画を撮られたことを聞かされる。
 
レスティグが戻ってきたことを聞きつけて、暴徒になった愛国者ぶってる群衆が、武器をもって彼を殺そうと、なだれを打って押し寄せてくる。
 
バジリスクは正義ぶった狂った群衆を猛毒の息と、業火で焼き尽くす。
 
バジリスクの目的なんだけど、この怪物は軍神マルスのペット。マルスは玉座に座り、あの世の軍隊のための兵隊を集めている。バジリスクに殺された人たちは永久にあの世で徴兵されるっていう怖いオチだね。お前ら勇敢な愛国者って言うなら、永遠に戦わせてやるよってこと。レスティグも単なる徴兵のためのコマでしかないし、こんなゾッとする話、久しぶりに読んだ。

ストーリーがデビルマンに似てるなあと思って調べたら、この短編集の中の一編「血を流す石像(1973)」がデビルマンみたいだと書いている人がいました。確かに。

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