見出し画像

誠実さと無邪気さが響きあう「ロミオとジュリエット」より第1幕の”パ・ド・ドゥ” オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャーノフ

世界バレエフェスの配信観劇レビューの第2弾。
今回は、「ロミオとジュリエット」第1幕のパ・ド・ドゥのレビューです。
10代の頃はそんなに好きじゃなかったんだけど、
大人になってから、とっても大好きになった演目です。

ロミジュリのあらすじ

すっごく有名な話だけど、3秒で説明してみる!
ロミオとジュリエットはロマンティックに出会って、愛を誓うの。
でも、両家の仲がめっちゃくちゃ悪いせいで、二人とも死んじゃうっていう悲劇の恋物語。

バレエの原作はシェイクスピアで、ストーリー展開もだいたい同じ。
(演出家や振付家によって、ちょっと違うこともあるかもだけど)
略して「ロミジュリ」って言われることが多いバレエ演目です。

感情の鼓動が音楽に

ロミジュリの曲は、プロコフィエフ。
感情の鼓動がそのまま音楽になっているような感じで、観客席まで登場人物の息遣いが聞こえてくるみたい。
登場人物の感情の波が、観客席を襲う。

プロコフィエフが作曲した当時は、すぐにバレエ演目として上演できなかったみたいで、先に組曲として発表されたらしいです。
曲を聴いているだけで、幸せなシーンは幸せに、
同調圧力で圧巻されるシーンは重苦しく圧倒されます。


恋がはじける、バルコニーのシーン

今回レビューする踊りは、「第1幕の”パ・ド・ドゥ”」って表記だけど、
「バルコニーのシーン」って言われることが多いパ・ド・ドゥで、
(パ・ド・ドゥって、2人で踊る踊りのことだよ)
すっごく幸せいっぱいなシーンなの。

ジュリエットの家の舞踏会に、ロミオが変装して乗り込んで、
それがきっかけでロミオとジュリエットが一目惚れして、
その日の夜中にロミオがジュリエットの家のバルコニーまで会いに来るっていうシーン。

恋する気持ちをね、お互いに踊り合う場面なんです。
見つめるだけで夢中になっちゃうような、
ポワッポワの最高潮の桜色のシーンです。

初々しい二人のはじける恋心。
二人だけの激しい風を巻き起こすように、踊る回る跳ねる。
そんなパ・ド・ドゥなのです。

ボリショイとマリインスキーの共演

今回の世界バレエフェスでは、
ジュリエットはボリショイ・バレエ団のオリガ・スミルノワ、
ロミオはマリインスキー・バレエ団のウラジーミル・シクリャーノフが踊っていました。
お二人とも、それぞれのバレエ団のプリンシパルです。

オリガ・スミルノワがこの演目を希望して、
その理由は「まだ踊ったことがなくて踊りたいと思っていたから」と配信特典のインタビューでお話されていました。

このお二人のバルコニーのパ・ド・ドゥは、誠実さと無邪気さが響きあって
初々しい愛を奏でているような踊りだなぁと思いました。

誠実で大人びたジュリエット―オリガ・スミルノワ

オリガ・スミルノワの踊るジュリエットは、すごく大人びたジュリエット。
空間を大きく使いながら舞台を飛ぶように移動するグランジュッテが
とっても誠実で。
※グランジュッテ:両足を前後に大きく開いてジャンプする動きのことです。

ジュリエットっていうと、”純粋”っていうイメージがあるけど、
もう、純粋さを通り越して、誠実感があふれていました。

ロミオを見つめる視線も、
包み込むような雰囲気があって、
ジュリエットは熱い気持ちを内に秘めつつ、
うれしそうにロミオを見ている。そんな感じ。
はにかみつつも、懐の大きな優しい女性性を感じました。

無邪気でフレッシュなロミオーウラジーミル・シクリャーノフ

シクリャーノフのロミオは、
無邪気で風を切って走り回って愛を伝える少年。
夜空に、星に、風に、
「ぼくの愛はこうだよ!ジュリエット!」
って叫びながらジャンプしているような、
あどけなさのの残る少年。

やわらかくてフレッシュな空間を
余すところなく、劇場に注ぎつくすような、
キラキラする星屑をまき散らすような踊りでした。
楽しかったなぁ。

2人のパ・ド・ドゥが少しだけ映ってる動画もありました!


いろんな振付があるんだよ

同じ演目でも、振付家が違うと全然雰囲気が変わるの。
私はマクラミンが振り付けた「マクラミン版」っていうのが
一番多く観てたかもなぁ。

今回の世界バレエフェスのプログラムでは、
ラブロフスキーが振り付けたラブロフスキー版でした。

最後に、私が観たことのある3つの振付バージョンを少しだけお話してみたいと思います。

穏やかで揺るぎないラブロフスキー版

ラヴロフスキー版はね、すごーくバレエっぽい。
バレエの基本ルールに忠実な感じの印象。
(って言っても、”バレエの基本ルール”なんてわかんないんだけど)
ステップの数を最小限にして、シンプルで無駄のない
バレエの王道クラシック感が強調されている感じ。
バルコニーのシーンでは、穏やかで揺るぎない時間が過ぎていくっていう印象です。


感情にスピード感があるヌレエフ版

ヌレエフ版は、感情の展開にスピード感があって
観客としては、ずっと目を見張り続けちゃう。
目を大きく開けてないと、こぼしちゃいそうな感じ。
曲のテンポは他の振付バージョンとそんなに変わらないはずなのに、
物語がどんどん進んでいっているような。
一つの音に、三つくらいの動きが詰め込まれてるみたいに見える。
(先日コラボしたバレエダンサーのみきぞーちゃんも、
「ヌレエフ版は『そんなに詰め込む!?』ってほど動きが多い」
って言ってたから、ホントにそうなのかも)


浮遊感あふれるマクラミン版

マクラミン版は、劇的でドラマティック。
舞台上の空間をビュンビュン動かしていって、
ダイナミックに感情を表現する感じ。
なんかね、二人とも、ずーっと、はしゃいでる。
このシーンの曲って、浮遊感がすごくあって気持ちいいんだけれど
その浮遊感がすごく際立つような踊りだなぁ。っていうイメージ。

というわけで、
今日も最後まで一緒に楽しんでいただきましてありがとうございました!
音声配信stand.fmにも、遊びに来てくださるとうれしいです✨