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#6 創った音は300種類以上 | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)

音の選び方について、もう少し詳しく教えてください

さて、以前のインタビューで、世界を見ても発車音の例は少なく、改良するにも参考にすべき前例がなかったとお話していました。

では、音を選ぶとき、どのような視点を重視されたのでしょうか。


音楽だけど、皆が知っているものがいいというのは前提としてありました。そこまで変えちゃうと接点がなくなっちゃう。例えば、民族楽器とかだと音色に馴染みがないでしょ。

試行錯誤するうちに、毎日耳にする音だからこそ、そういうことが必要かなということが分かってきました。その後は、ひたすら作りました。そしてまた実験して、作っての繰り返し。全部で300種類以上の音を創ったかな…。

JRの本社と駅の方々にも聴いて頂きました。当時、エピキュラスというスタジオがあって、そこに来てもらって評価会を何回も行いました。ホームを再現するためにノイズを流したりしながら、必然的に音が絞られてきました。

当初は、「ベルの音色を柔らかくすればいい」と思っていた人がほとんど。音が出ればいい、理屈もないと。

でも、前回お話したピアノの件があって「そうじゃない」と確信したんです。僕はピアノには注目していなかったのですが、先入観なしで色々鳴らしたら、ピアノが異常に良かった。
「知ってるんだけど、知らない」というところがポイントだと分かりました。楽器としては、ピアノ、琴(ハープ)、鐘(ハンドベル)等、お祓いみたいな高い鈴。大きな一歩でした。


「元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音」では、皆様からの質問を募集しております。
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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。


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