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#8 成功3・3・3の法則 | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)

改めて、特に大変だったことは何ですか?

大きい所から小さい所まで様々な困難があった中、振り返って印象に残る向かい風は何だったのでしょう。


振り返ると、やはり皆の意識変えが一番大変だったなと思います。
以前もお話しましたが、自分含め、多くの人が「プルルルル」を優しく変えればいいと思っていたくらい。
それを違う原理原則でやるにはどうすればいいか?プルルルルじゃないとすると楽音しかない。でも音楽性を帯びるのでその辺がどうかと。皆初めてなので、チェックだらけでした。

いざスタートするときも同じ。記者会見に私が出たのですが、イメージは芸能人の記者会見のまんま。
国営のものが民間化して間もないことや、新しい考え方に批判もそこそこ出ました。
活字にするために、どんな音になったのかを口で言ってくれという記者もいましたね。 付きまとわれたりもして、あれ以来新しいことに対する拒絶反応の様な批判は怖くなくなりました(笑)。

ただ、新しいものにそういう向かい風はつきもの。「上手くいったか?」という判断は、3割が「いい」、3割が「興味ない・分からない」、3割が「ネガティブ」、残り1割は「?」。この3,3,3でいくと成功と考えられています。

そんな中、このプロジェクトは、実際には7,8割が「いい」と言っていたので、それなりの評価になったと思います。

東京新聞 1989年3月10日より引用
いよいよ明日から開始、期待や不安の様子が伝わります。

変えたのは音なんだけど、やったことは一つの社会現象。
それの象徴として音が捉えられた。そこから認識される社会の状況、新宿の変化というところが話題になりました。論文が出たり、卒論のテーマにする子がやたらと多く取材と合わせて200以上。今もありますが、当時は特に対応が大変でした。

言ってみれば、たかだか10,20秒でも、10年やると延べ地球の人口くらいの人が聴いている。ビートルズどころじゃないよなぁ、と改めて思います。


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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。

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