英会話 #4
僕がオーストラリアの
この地に住み始めた頃
僕の英語は酷いもので、、
単語にPLEASEさえ付ければ
何とか通じる。
そんなものでした。
そんな僕の英語の先生は、
歯のないミック。
ミックは寡黙で
感情を面に出さないのですが
突き放されているという感覚もなく
一緒に居てとても心地がいい。
仕事中の殆どの時間を
ミックと過ごしました。
ミックの話す英語は
簡潔でとてもシンプル。
だから覚えやすく理解しやすい。
ただ、、
そのままミックから覚えた単語を
外で使うと周りがシーンと
静まり返るワードが混じっているので
気をつけなければならない。。
それは、映画に出て来るような
Fワード的なものでなく
聞いたこともない単語なので
更に注意が必要である。
ミックのせいで
何度ボスの家での食卓を凍らせたことか。。
ミックは、
単語はある程度は読めますが
書くことは殆どできません。
車で走っていても
標識は読めるそうですが
地名などを書くことは
得意ではないそうです。
なので、ミックは自分の娘に
その日学校で教わったことを習っていました。
その授業は僕にも丁度良く
僕もミックに混じって
授業を受けさせてもらう事もありました。
そんなある日
ここより少し大きな隣町のホテルに
日本人が泊まっていた。
という情報が僕のところまで流れてきました。
その日本人は
バイクでオーストラリアを
一周しているらしく
流れ的に、次はこの街を通るらしい。
お節介なオーストラリア人がわざわざ
16歳の無免許でバイクに乗った
クレイジーなジャパニーズが
ここで働いているから寄ってみろ
と彼に声をかけ
競馬場の場所を教えてくれたそう。
そして彼がこの街に着いたのは
その数日後。
この小さな町は
スルーする予定だったのですが
わざわざ寄ってくれたらしく
声をかけてくれました。
彼は早稲田の大学生で
休みを利用してオーストラリアを
貧乏旅行しているらしく
ボスの計らいで彼も数日だけ
競馬場の解体の仕事に参加することに。
宿泊先は山の中の僕の家になり
僕にとっては、半年ぶりの日本人で
半年ぶりに話す日本語になる訳で
それはもう喋りました。
これでもかってくらいに喋りました。
翌朝、彼と競馬場に出勤し
いつもと同じ様にボスから
今日の流れと仕事の指示を受けるのですが
ボスの目が
何故か僕だけを見ている
横にいる彼にも
説明しているはずなのに
何故か僕に伝えている。
あれ?何でだ?
あ、彼は全然理解していない。
僕に通訳しろって事なのか?
そりゃそうだよな、
仕事の内容だから
聞きなれない単語も並ぶし
仕方ない。
でも、その時
自分のヒアリング能力って
確実に上がってるんだ。
と初めて気づいたのです。
数ヶ月の間ボスたちと過ごし
生活していたのだから
当たり前ですが
あまりに当たり前の様に
過ごしていたので
自分の英語能力を
気にする余裕もなく
ただただ毎日仕事に追われ
帰宅すると疲れ切って寝る。
そんな生活の中でも
きちんと確実にヒアリング能力は
成長していたのでした。
それから仕事中は
彼の通訳にも徹し
ふふふ
16歳が早稲田の大学生に通訳か。。
なんてちょっと誇らしく思ったものです。
歯のないミックよ
いつも僕の英語の先生でいてくれて
ありがとう。
仕事を終え
夜は彼と一緒に
ボスの家で夕飯をいただきに。
彼は二十歳を超えていたので
ボスもボスの奥さんも
今日は皆んなでワインを飲みながら
ちょっと遅くまで
小さな歓迎会を開き
いつもよりも少し長い夜を
過ごしたのですが
あれ、、
何だか変だぞ?
ボスやボスの奥さんが話す
僕の知らない単語、
彼は理解し、文として返している。
仕事でない通常の会話の
ボキャブラリーは
完全に彼の方が上なのである。
しかも文法というやつを
しっかり使って
文として受け答えをしている。
恐るべし早稲田の大学生。。
昼と立場が逆転してるではないか。
おい、ミックよ。
そういえば僕たちはいつも
単語と単語を組み合わせた
同じ様な会話しかしていなかったな。
きっとそれがミックの編み出した
僕の英語レベルに合わせた
コミュニケーション方法だったんだな。
ミック、今までありがとう。
でもこれからは、単語じゃなく
ちゃんと文で話そう。。。
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