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identity academyに参加して

上田佳祐
東京大学 教養学部 学際科学科


 私は大学3年の秋に友人からの紹介でidentity academy (以下IA) に参加しましたが、最初にその存在を知りホームページを最初に読んだ時の感想は以下のようなものでした。

「無料で講義や課題を提供し、どのようなインセンティブで運営しているのか」
「巷に溢れる怪しい搾取的な『金融セミナー』と同列なのではないのか」

 今思えば全くフェアではない第一印象だと思いますが、その時はIAという組織に対して若干の疑念を抱いていたのを覚えています。
しかしいざIAに参加してみると、このような「偏見」が完全な間違いであったことが直ぐに分かりました。
初回の懇親会では優秀な同期達の多さに驚き圧倒され、また講義の中で登壇してくださる講師の方々は長年、業界の最前線で活躍されてきた一流の経営者やアナリスト、ファンドマネージャーなどであり、そこで紹介される思考方法や意思決定の方法はどれも目から鱗でした。期間は4ヶ月と一見、短く思えるカリキュラムでしたが、当初想定していたよりも大変刺激的で濃密な時間を過ごすことが出来、多くの学びを得ることが出来ました。

エンジニア・理系学生にとってのidentity academyという組織

 遅れての自己紹介という形になりますが、自分は高校生の頃よりコンピュータサイエンス(CS)に強く興味をもち、現在の大学に入学してからは情報系の学問を専攻し、大学外ではCS系のエンジニアとしてバイトをしたり、機械学習に関する研究を行ったりしてきました。
一方でIAという組織においては経済やファイナンスといった学問を専攻している学生が多く、私のようなエンジニア・理系学生というバックグラウンドは比較的少数派でした。そこでこの記事では自らのバックグラウンドを踏まえて、エンジニア・理系学生という視点に重点を置きつつ、「IAに入る前の自分に向けて、IAに参加する事の意義を訴えるならば、どのようなことを伝えるだろうか」という問いを念頭に置きつつ紹介したいと思います。

 私がIAを通じて得たものは非常に多くありますが、ではエンジニア・理系学生がIAに参加する意義は何なのかと問われれば、(勿論、参加者の数だけ回答があると思いますが)私は以下の二点を挙げたいと思います。

興味の殻を破り、視野を広げる

 1つ目は「大学を出て実世界を見ることの重要性」です。
これはエンジニア・理系学生に限らず学生全般での話になりますが、大学内部では自らの興味によって自らが触れる環境を選択できる環境だと思います。例えば自らの興味で自由にサークルを選べますし、同じように勉強する学問を選択することが出来ます。このような自由は非常に素晴らしい機会ですが、逆にこの自由度の為にある種のフィルターバブルのような情報環境が作られてしまうことがあります。自らの興味によって周囲の環境を選択していくことで耳に入る情報の多様性が減り、その結果さらに自らの興味の範囲を狭めてしまう。
 このような「バブル」に陥ってしまうことはCS系の学生には特に少なくないのではないかと思います。というのもCS系の学生が身につけている「スキル」はプログラマとしての需要が大きくあるが故に、大学外においてもバイトなどでCSに関する業務に携わることが比較的多く、結果的に大学内外で関わる人達がCS関連に限定されてしまうという事がしばしば起こり得る為です。
 このような「バブル」を破り視野を広げるという意味において、今まで金融やリスクマネジメント思考といったものに興味を持ったことの無かった人にとっても、IAはとても良い選択肢だと思います。IAでは業界の最前線でしのぎを削ってきた方々から、金融の知識や、リスクマネジメント思考、意思決定の方法論を「直接」学ぶことが出来ます。今まで触れたことの無い分野を、その分野における一流の実務経験豊富な理事・講師の方々から直接学べるというのは大変贅沢であり、大学を出て見に行く「世界」の入り口としてこれ以上無い環境だと思います。

「人との繋がり」という財産

 2つ目は「人との繋がり」です。
IAには文系・理系を問わず、多種多様な専攻・興味を持つ学生が集まっています。この「知のるつぼ」のような状態では他の学生との会話を通して自らの視野を広げられるということもあると思いますが、ただ単純にそれ自体が大変刺激的で面白い環境だと思います。IAには自らの興味対象に対して情熱を燃やしている人が大変多く、またそれぞれの興味対象は非常に多様です。ある人は培養肉に対して、またある人は地方創生に対して情熱を燃やし、それぞれの目標達成に向けて邁進しています。

「エネルギーには行き過ぎということはあり得ない。獅子が疾走していくときに、獅子の足下に荒野はたちまち過ぎ去って、獅子はあるいは追っていた獲物をも通り過ぎて、荒野のかなたへ走り出してしまうかもしれない。」
 これは三島の「葉隠入門」という本からの引用ですが、まさにこの「獅子」のような学生がIAという組織内にはひしめいています。そのような同期・アルムナイと各々の互いの夢を語り合える・ぶつけあえる環境、これは他では中々得られないものだと思います。IAで得られる彼らと互いに刺激を与え合い切磋琢磨出来る環境・関係は、カリキュラムの4ヶ月が終わった後でもきっと今後の人生における貴重な財産になると思います。

 最後にidentity academyという貴重な機会を与えてくださった森山さんを初め、理事・講師の方々には深い感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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