AIマイクのもたらす可能性~ 開発ストーリーと事業価値創造に向けた新たな取り組み ~ (後編)
はじめに(このnoteでお話していること)
今回は、日本経済新聞とnoteの共同お題企画「 #AIの活かし方 」のテーマに絡めてお話します。
この記事では、今巷で毎日耳や目にするChatGPTと、当社の技術を詰め込んだAIマイクを掛け合わせることで、より付加価値を持たせることに成功した取組についてご紹介します。
そもそもAIマイクって何?や導入事例については、当社の公式ブログに前編としてご紹介しています。
(「AIマイクのもたらす可能性 ~ 開発ストーリーと事業価値創造に向けた新たな取り組み ~ 前編」はこちらよりご覧いただけます。)
前編では、これまで高いハードルだった“対面接客”時のAI活用について、当社カスタマーサクセスチーム マネージャー・三根(みね)の話を交えながら解説しました。対面接客において当社の「AIマイクソリューション」を活用し、昨今課題となっているカスタマーハラスメントを防ぎ、またどのように接客品質を向上させるのか――気になる方は、前編もぜひご覧ください。
前編のような“守り”の動きから、現場の対面接客で取得できたデータを、“攻め”の動きにおいて、どのように収益向上に活用していくことができるのでしょうか? こちらの後編では、そうした部分にフォーカスを当てて、前編と同じく当社の三根が語ります。取得したデータを正しく、最小コストで解析し、現場にフィードバックを行う――開発のブレイクスルーにはChatGPTの活用が不可欠でした。
接客データの分析実験は、データサイエンティストの業務を超越しうる結果に
対面接客でのリスク回避のために、店舗での対面接客でどのように質の高い音声データ(テキストログ)を取得するか。また、取得コストを下げてROIを成立させるか。そうした課題を解決した後で、次に出てくるのが“このデータを収益向上にも活用できないか”というテーマです。ただ、そこで立ちはだかる壁は、人的コストもさることながら、技術的な難易度の高さでした。従来、こうした課題に対しては、エース級のデータサイエンティストやコンサルタントがお金と時間をかけて分析手法を検討し、トライアンドエラーを繰り返してきました。そのため高額な研究開発費に見合うROIを検討することはそもそも非現実的だったのです。
AIマイクソリューションで取得されるデータ(テキストログ)は、店員側/顧客側と話者を分離して取得することができます。そのため、どのようなやり取りがあったかが鮮明にログとして残るわけですが、例えば店員側が正しく接客できたのか、どんな要因で成約に至ったのか。または接客において不正行為は無かったか、顧客側からのハラスメントは無かったか。そうした必要な部分を正しく、スピード感をもってログから抜き出し、改善案を考える役割が必要になります。
要約、感情分析、応対マナー評価など、多くの指標を正確に分析
実際の接客テキストログを元に実験を行うと、例えば長い会話データが自動で要約されることによって、顧客側がどのような相談を持ち掛けてきたのかを短時間で把握することが可能になります。これは、検索性の向上にも寄与するでしょう。さらに、顧客側が接客によって、どのような感情を抱いたのかも推定できるようになるそう。
さらには、会社として販売を促進させたい特定の商品・サービスをきちんと店員側から案内できているかどうかや、その商品・サービスが成約に至った場合の要因分析なども行うことができました。こうした一番コストのかかるデータ分析・抽出・ネクストアクションの示唆の部分をChatGPTが担ってくれることにより、人間側は、その先の解析や行動への集中が可能に。結果、データ解析結果を低コストで得られ、“攻め”の収益向上へ向け、プランニングに活用できるようになります。
加えてこのChatGPTでの分析は、前編で触れたカスタマーハラスメントの抽出や、業界ごとに違う接客における法令が順守されているかどうかの判定にも使うことができます。膨大なテキストログを人力で分析することなく、しっかりとリスク回避の“守り”も行うことができそうです。
ChatGPTの活用により言語の壁もなく、あらゆるシーンで活用できる未来も
接客窓口において精度の高い音声認識を行うためには、店舗内のBGMや周囲からの雑音といった、非常に厳しい状況下における高精度なノイズ除去が必要となります。この課題に対しては、深層学習モデルを利用することにより品質向上を見込んだ開発を行っているとのこと。
なお、現状は同一の接客窓口で複数の店舗スタッフが接客を行った場合、収録された音源がどのスタッフの接客のものなのかの特定が困難であるという課題が残っています。この課題の解決方法としては、声認証による話者特定の技術が考えられます。
ではどうしてそれが可能なのでしょうか。
さらに、ChatGPTの開発元であるOpenAI社の公開している音声認識モデルであるWhisperを採用することで、グローバル展開を狙えるプロダクトになる可能性があると話します。
ChatGPT×AIマイクがもたらす、より大きなビジネスインパクト
このように、カスタマーハラスメント対策として開発・導入されたAIマイク。最後に、生成AIと組み合わせることで、対面接客のカスハラ対策だけでなく、経営や事業全体にも大きなインパクトを与える可能性があるという視点をお伝えしたいと思います。
1. AIマイクの貢献で「法令順守のためのコスト削減」が可能に
1つの店舗の違反事例が、SNSなどに投稿されてのレピュテーション低下や、事業停止など、企業にとっては様々なリスクとなっています。だからこそ上記のような莫大なコストとリソースを投下しているわけですが、AIマイクの導入により、これらの作業を自動化し、リアルタイムで監視することで、企業の経費削減やリソース最適化の実現が見込めます。
2. 店舗スタッフのパフォーマンス可視化で「成約率向上」に寄与
各スタッフの営業成績を測る指標が、単なる売上だけではなく、スタッフの具体的な行動の数値化や可視化によっても実現可能になります。これにより、パフォーマンスに基づいたスタッフの育成を多角的な観点で行うことが可能になり、より実態に即したものになります。
例えば、売上が上がらないという定量的な要素があったとして、理由はスタッフの売り方が悪いのか、商品が悪いのか、はたまた別の要素があるのか…。AIマイクを導入し、接客現場のテキストログを分析すれば、店員の提案の仕方や顧客の反応によって、そうした定性的な要素の占める割合の大きい指標を定量化し、正しい理由を導くサポートを行える可能性があります。
3. 商品開発やビジネスモデルが変わる可能性も
今まで可視化できなかった対面接客の定量・定性効果をリアルタイムに分析し、素早く現場へフィードバックすることで売上につなげるスキームを確立することが出来れば、既存のビジネスの改善だけではない、新しい価値をつくり出すことも可能になります。例えば、今までの顧客調査では見えていなかった顧客ニーズを把握することで新しい商品開発ができる、蓄積したノウハウを他社に販売するなど、ユニットエコノミクスを大きく変えるビジネスモデルが生まれる可能性もあります。
以上のようにAIマイクは単なるツールではなく、経営レベルでの意思決定に大きな影響を及ぼす可能性をもったテクノロジーといえるのではないでしょうか。
当社のAIマイクについてより詳しく話を聞いてみたい方は、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。営業担当がより詳しいご説明をさせていただきます。
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