ブーブーブレイブ 『第一話・王のくせ』
あらすじ
草部草(13)は黄土中学の一年生で、周囲が引くほど勉強に熱中していた。一方、地球の王ブーマによる二極化政策の影響で、草の住むクナーク地方は犯罪警告区域になろうとしていた。草は勉強により職を得て、一日も早く母と共に富裕地に移り住むことを夢見ていた。そんなある日、草は『遺書75 作・御習風』という本を見つける。その本には、ある男の奇妙な一生と切実な願いが記されていた。
主要人物
草部草(13)
身長165㌢ 細身
御習風(6)(10)(13)(18)(75の声)
身長165㌢ 細身
マーブ王(60)
身長165㌢ 肥満
ホタブー(不詳)
ラスボス ホタル型怪人 身長165㌢
第一話・『王のくせ』 →https://editor.note.com/notes/n67e635d91e72/edit/
第二話・『遠くのヒーロー』→https://editor.note.com/notes/n25ad825d590d/edit/
第三話・『最後のヒーロー』→https://editor.note.com/notes/nba372cfe3b9e/edit/
第四話・『赤信号、進む? 止まる?』→https://editor.note.com/notes/n4583a62939cc/edit/
◯オナーク公園(夜)
公衆トイレが設置されている。
◯大便所(夜)
ドアが半開きになり、月明かりが差している。
ぼっとん便所の隅にB5の本がある。
汚れた黒の表紙には赤字で『遺書75 作・御習風』とある。
◯オナーク中学校・正門
横型の校銘板『オナーク中学校』。
正門周りの壁はスプレーで所々汚れている。
◯同・一年一組の教室
草部草(13)、窓際の左最前列の席に着席し、机に広げた生物の参考書を見てつぶやいている。
草「食道、心臓、肺……」
☓ ☓ ☓
教室の後ろで女子三人組(13)が勉強する草の方を見ている。真ん中に立つ戸手元きれい(とてもときれい・13)がつぶやく。
女子生徒A「きれいってさ、隣」
きれい「うん、草部君の隣」
女子生徒A「きっつ。休み時間も隣で勉強て」
女子生徒B「息詰まるよね」
教室の真ん中から笑いが起きる。
女子三人組、視線を草から教室の真ん中に移す。
中央の机に逸模当(いつもとう・13)が腰掛け漫談を話している。周りには五人ほどの生徒が集まっている。
当「さーてと、次の授業はわらL新喜劇やな、なわけねー!」
軽く笑う生徒たち。
当「でもオレわらL新喜劇に出たいわ。出たらな、演技しながら各地の新喜劇に説教の電話いれたる! お前ら教えたるからいまからこい! ってな! もうあれや、チョーク投げながら言うたる!」
爆笑する生徒達。
女子生徒A「あはは、おかしー」
女子生徒B「やっぱムードメーカーって必要だよね」
きれい、笑顔になっている。
チャイムが鳴る。
きれい、素の表情になり草を見る。
草の背中に『どんより』の文字。
女子生徒A「きれい、またあとで話そ」
きれい「だね、はー」
☓ ☓ ☓
草「胃、肝臓、腎臓……」
草の右隣にきれいがやってきて、軽く眉間にシワを寄せて草を見てから座る。
教室の前の扉が開き教師A(50)が入ってくる。
教師A、教卓の前に立ち、
教師A「気合いの、きりーつ!」
全員が立ち上がる。
だが、草は椅子に腰掛け単語をつぶやいたまま。
草を見つめる教師Aと生徒達。
草「小腸、大腸…….」
きれい、草の参考書に片手を乗せて、
きれい「草部君、授業」
草「えっ、あっ」
草、慌ててさっと立ち上がる。
草「肛門!」
草、口を手で覆い、
草「いえ! これっこれは勉強です!」
『しーん』の文字が出る教室。
きれい、床を見てつぶやく。
きれい「ガ・リ・ベ・ン・ヘ・ン・タ・イ」
◯公団オナーク・全景(夕)
壁にスプレーでの落書きが多く、ゴーストタウンの雰囲気。
◯同・20棟(夕)
学生カバンを右手に持った草、周囲をちらちら見ながら二十棟に入っていく。
◯同・同・101号室/草家(夕)
塗装の剥げたドアを開けて中に入る草。
◯同・同・廊下(夕)
2Kの部屋。
廊下を足早に進む草。
草「勉強、勉強、勉強、勉強」
◯同・同・草の部屋(夕)
部屋に入ってくる草。
部屋には、縦一メートル・横一メートルほどの本棚があり、学習参考書で埋まっている。
草、学習カバンを床に置き、学習机の椅子に腰掛け、机の上の10.1インチのレッドのノートパソコンを開いて立ち上げる。
Aチャンネルというマークがノートパソコンの画面の右上に出て、続いて映像が映る。
マーブ王(60)が『マーブ城周辺の地図』の前に立ち、解説を始める。
マーブ王「地球の諸君、ごきげんいかがかな? 今月の犯罪予報を始めるぞ。諸君のおかげで今月も地球は軽微な件数に抑えられている」
『マーブ城周辺の地図』の中央のマーブ城とその周辺の大陸に犯罪件数が表れる。
マーブ城・件数0件、周辺大陸・8件、9件と低い数字。
マーブ王「地球全体ではまだ高い地域もあるだろう。だが、将来的に地球の犯罪件数が0件、ということも可能になってきた。真の平和までもう少し、といっても過言ではないぞ」
片手でピースサインをし、にんまりと画面に向かって笑うマーブ王。
苦い顔をする草。
草「ひっきょうっ!」
草、キーをタイプし、チャンネルを変える。
Zチャンネルに切り替わり『地球の全体図』が画面に表れる。
草「富裕地ばかりじゃなく貧困地も映せ!」
『地球の全体図』の外周には大陸があり、右上ジゴーム大陸、右下ボロロ大陸、左上ユメール大陸、左下オナーク大陸と名称が出ている。
ジゴーム大陸、ボロロ大陸、ユメール大陸は赤くなっており、オナーク大陸も薄い赤色になっている。
草、オナーク大陸を見つめ、
草「ここオナークももう少しで犯罪警告区域か。すっかり物騒だなあ」
バイクがエンジンを吹かす音が外から聞こえ、席を立ちベランダに向かう草。
次にレースのカーテンを少し開けて外を見る。
改造バイクに跨って排ガスを撒き散らしている不良の集団が見える。
草「やっべっ」
カーテンをサッと閉める草。足早に席に戻りながら、
草「こうしちゃいられない、勉強勉強。いい仕事についてさっさとママと富裕地へ抜け出さなくちゃ」
椅子に腰掛けた草、床の学習カバンから教科書をごっそりと取り出す。
教科書の隙間から『地球の全体地図』が床に落ちる。
『地球の全体地図』の中心にはマーブ王の城。
◯マーブ城(夜)
宮殿となっており、門が開いている。
◯同・入口(夜)
リュックを背負った旅人A(40)と旅人B(38)、木陰から門を見ている。
旅人B「兄貴、マーブ城開放中みたいだな」
旅人A「だな。平和な地域は開放的のようだ」
旅人B「ならトイレくらいなら」
旅人A「まあ借りても怒られんだろう。その辺にすんのもなんだしな」
◯同・一階(夜)
腰を下げて入ってくる旅人Aと旅人B。
左右と前には通路が走っている。
右に『トイレだぶー』のプレートがあり、それを発見する旅人A。
左の方を見ている旅人Bに旅人Aが言う。
旅人A「おい、あったぞ」
旅人B「さすが兄貴。いこう、いこう。小便がもれる」
足早にトイレに向かう二人。
◯同・トイレ(夜)
八つほど洗面台が並んでいて広々としている。
旅人Aと旅人B、洗面台を小走りで通過する。
隅にはメイドAがモップで掃除中だが、旅人達もメイドもお互い気づかない。
☓ ☓ ☓
旅人Aと旅人B、小便をしながら会話をする。
旅人A、横に並ぶ30個はある小便器群を見て、
旅人A「やっぱ金持ちは違うぜ」
旅人B「いや兄貴、マーブ王の金持ち優遇、貧乏人ほったらかし、の結果というべきだろう」
旅人A「でも昔のマーブ王は、いまほど住んでるとこによる分け隔てしなかったらしいぜ」
旅人B「それがなんでこんな二極化の世界に変わっちまったんだ兄貴」
旅人A「さあな。ただ、マーブ王が変な集団と関わってるとは噂で聞いたな」
旅人B「変な集団て?」
旅人A「わかんねえけど危ない奴らだろうな……」
用を終え、洗面台に向かう旅人Aと旅人B。
☓ ☓ ☓
洗面台にやってきた旅人Aと旅人B、洗面台で手を洗う。
旅人A、鏡を見る。メイドAが鏡に映る。
短髪で恰幅の良いメイド服を着たメイドA、床をモップで磨いている。
旅人A「あっ!」
旅人Aと旅人B、振り返ってメイドAを見る。
旅人B「てめえオレたちの会話聞いてたな!」
顔を上げるメイドA。上髭がある。
旅人B「男!」
メイドA、無表情で、
メイドA「すみません、聞こえてました」
旅人Aが腰からナイフを出し、メイドAの顔の前に出す。
旅人A「オレたちのことを城の者に絶対に話すな」
メイドA、無表情のまま棒読みで答える。
メイドA「かしこまりました」
☓ ☓ ☓
胸甲やタセットで装備したカニン(65)とタコン(65)が駆けてくる。
カニンは穂がYの槍を両手に持っており、タコンの口は八本の筒で作られたバズーカ砲が装着してある。
カニンとタコン同時「へいかーっ!」
☓ ☓ ☓
洗面台で顔を見合わせる旅人Aと旅人B。
旅人A「誰か話したか?」
旅人B「後ろか?」
洗面台のスペースの隅に移動する旅人Aと旅人B。
カニンとタコン、洗面台に入ってくる。
カニン「あー陛下! そのようなことはお控えください!」
タコン「あなたは地球の代表なのですぞ!」
メイドA、モップを杖のように立てて、
メイドA「はー、こんでいいのに……。わざわざお前達は……」
旅人A「陛下? いま陛下って言った?」
旅人B「えっ、じゃあこの便所係が……」
旅人Aと旅人B同時「(心で叫ぶ)マーブ王!」
マーブ王の頭上に『でたー』の文字
旅人Aと旅人B、マーブ王の尻を見る。マーブ王のメイド服、尻の部分だけが丸く切り取られ丸裸になっている。
旅人Aと旅人B「(心で叫ぶ)しかもむきけつ!」
マーブ王の尻の上に『さらにでたー』の文字。
カニン、両槍の石突で地面を叩き、
カニン「陛下、そのような仕事は下々にお任せください!」
タコン、口のバズーカ砲を突き出し、
タコン「遊びにしては度が過ぎておりますぞ!」
マーブ王、半笑いで頷きつつカニンの槍の真ん中部分を手で撫でながら、
マーブ王「カニンとタコンよ、わかるわかる、そちらのその焦る気持ち。でもなー」
マーブ王、カニンとタコンに背を向け首だけ捻り、酸っぱい顔でカニンとタコンを見て、
マーブ王「玉座って退屈じゃーん!」
カニンとタコン、劇画のように怖い顔で、
カニンとタコン「た・い・く・つ!?」
マーブ王、上体を下に折り股の下から顔を出す。
マーブ王「あと、そちらの顔も見飽きた」
カニンとタコンに尻を向け、〝ぶーっ〟とオナラをするマーブ王。
周囲の空気が黄色に包まれ、やがて元に戻る。
カニンとタコン、頭から湯気を出して険しい顔。
マーブ王「ぶぶぶぶぶー」
と口に手をやり笑う。
旅人Aと旅人B、鼻をつまみ、
旅人Aと旅人B「くっせーっ!」
カニンとタコン、背後の隅にいる旅人Aと旅人Bに気づく。
タコン「うん! お前らなにものだ!」
旅人Aと旅人B、両手を上げて、
旅人A「ただの旅人です!」
旅人B「迷い込んだだけです!」
カニン、両手の槍の穂を旅人Aの首元の前に突きつけ、タコンは首を左右に振って八つの砲から煙を出す。
旅人Aと旅人B「ひえっ!」
カニン「怪しい奴ら!」
タコン「消えてもらう!」
マーブ王「待てカニン! タコン! その必要はない!」
マーブ王、旅人Aと旅人Bに尻を向け、〝ぶっー〟と黒灰色の屁を出す。
旅人Aと旅人Bの頭部が黒灰色の屁に包まれる。
旅人Aと旅人B、手で頭部の黒灰色の屁をバタバタとはたく。
旅人旅人B「くせー! まじくせー!」
旅人A「くっせー! 気が狂うー!」
旅人B「誰か空気をー!」
床に倒れて動かなくなる旅人Aと旅人B。
マーブ王、床の二人には見向きもせずトイレの入口を向いて話す。
マーブ王「外の警備を強化しとけ」
尻をぷりぷりさせて去っていくマーブ王。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?