素人の考古学ー神奈川県厚木市及川伊勢宮遺跡と中依知遺跡
かながわ考古学財団による、R6年度発掘調査成果発表会が開催され、
口頭発表と出土品展示が行われた。(R6年8月12日)
その内、及川伊勢宮遺跡の県内でも貴重な前方後円墳と、円墳2基と10基もの横穴墓が調査された中依知遺跡についての報告概要。
①及川伊勢宮遺跡
前方後円墳1基、方墳1基、円墳1基
相模川の支流である荻野川流域では初めての発見である前方後円墳の全様
が明らかになった。
1号墳は前方後円墳で周溝全面を検出。全長37m
周溝から土師器の壺と高坏の破片が数点出土
4世紀前期後半から5世紀初頭築成
高さは分からないが、前方部が短く、開いており初期の
墳形をしている。
埋葬施設は遺存しておらず、副葬品等の出土もない
2号墳は方形で周溝を検出、規模は一辺が約14m
遺物は完形の小型丸底壺2点ほか壺、高坏の破片数点
4世紀前期後半~5世紀初頭築成
3号墳は円墳で周溝を検出
大半は調査区外のため不明
4号墳は不明
相模川流域では小河川単位に古墳が築造されたことがわかっており、
本遺構で検出された古墳は、荻野川流域を支配領域とした小地域首長墓
と想定されるとのこと。
➁中依知遺跡
相模川と中津川に挟まれた南北に延びる中津原台上から中津川に面した
台地西側斜面に立地。
台地上では古墳が数多く分布してることが知られ、台地斜面には点々と
横穴墓が存在することが把握されている。
中依知の横穴墓群では、羨門部石積施設を有する横穴墓がまとまって発見
され、保存状態が良好であったことも合わせ、最大の特徴である。
横穴墓が10基発見され、高低差約18m斜面のほぼ地位に並ぶように造
くられている。
羨門部石積施設とよ呼ぶ石積が3,4,6,7,9、10の6基ある。
羨門部石積施設には、羨門がある墓前域奥壁の1面だけに石積されるもの
と、墓前域奥壁と左右両側面の3面に石積されるものがある。
玄室の形状は。バチ型を呈し、最大で長さ7ⅿを超える規模がある。天井はいずれもアーチ形。奥壁に段差をもって若干高くなった棺座が作られているものがある。
3号横穴墓では、幅1.6ⅿ前後で長さ18ⅿ以上の道状の掘り込みが横穴墓から穏やかに斜面を下りるように延びている。
8号横穴墓の墓前域には幅約3m、長さ10mほどの広場状の空間がある。
羨門部石積施設を有する横穴墓は、神奈川県内では秦野市、伊勢原市、
厚木市、座間市および海老名市北部にかけての地域に分伏していることが知られている。
以上
小兵衛