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ざっくりわかる製造業(マーケット編|前編)

前回のnoteでは、私個人の転職の報告となぜCADDiという製造業(伝統産業)の課題に挑戦するスタートアップにJoinしたのかについて書きました。
早いものでJoinして3カ月が経ちますが、この3カ月の間にも多くの方々に興味を持っていただき、様々なシーンでCADDiという会社やそのビジネスモデル等についてお話をしてきました。幸いなことに、詳しくお話をすることで殆どの方々がCADDiを魅力的に感じていただける実感を持っていますが、1つ課題に感じているのが、聞き手の方が「製造業について馴染みが薄い」点です(私もまだまだ理解が浅い・・・日々勉強!!)。製造業についてもう一歩具体的なイメージを持ってもらうことができれば、我々がやっていること・やろうとしていることがより鮮明に伝わるのではないかと感じています。
そこで。今後数回にわたり、製造業とはどんな業界で、我々のお客様やパートナー様は具体的にどういう課題を抱えていて、そこに対してキャディは具体的にどんな課題解決をしようとしているのか?その辺りの「概要」を理解してもらえるように、また自分の中での整理という意味も込めて「ざっくりわかる製造業」と題して、noteを書いていきたいと思います。第1回である今回は「マーケット編|前編」ということで、製造業とはどんなマーケットなのか?の概要をざっくり理解できる内容にしようと思います。


■ 製造業は「最大の市場規模・就業人数を誇る 超巨大な日本の基幹産業」である

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※キャディの会社説明資料より(数字の出典は平成23年工業統計調査)

日本国内での製造業の総生産額は180兆円規模であり、産業別で見ても建設や医療、不動産などの他の伝統産業と比較しても最大規模です。更に、キャディが最初にビジネス展開している「調達分野」に限定しても120兆円もの規模を誇ります。
参考までに、私が9月末までいたマーケティング業界における最大市場は「広告・プロモーション市場」でした。2018年度の総広告費は約6.5兆円(2018年度 電通調べ)。昨今隆盛を極めるMarTechの波に乗り、DMPだMAだBIだなんだと騒ぎ立てても日本におけるそれらの市場は数十億~数百億程度の規模でしかなく、マーケティング業界で夢のある規模のBizDevをしようと思うのであれば、結局何らかの形で広告・プロモーション市場を狙うことを余儀なくされるのが常でした。前職で新規事業プランのプレゼンをする際、6兆円超という巨大市場に果敢にチャレンジ!!的な話を何度となくした記憶があります(笑)。ただ、マーケティング業界で最大の広告・プロモーション市場も、製造業のそれと比較すると極端に小さく、製造業マーケットのとてつもない巨大さが伺えます。

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また、製造業には、ざっくり日本の労働人口約6,700万人のうちの約15%=1,000万人以上が従事しています。日本ではざっくり6~7人に1人が製造業で働いている計算になります。
個人的な視点だと、キャディにJoinするまで私の周りに製造業で働いている人は感覚的に大体20人に1人くらいでしたが、俯瞰して日本全体を見渡すと個人的感覚値の3倍程度の方が製造業に従事しており、その大きさを改めて思い知りました。
圧倒的な市場規模と就業人数。まさに、製造業は日本経済の中心であるといえます。その規模ゆえに景気動向にも大きく影響力を持つ産業であり、例えば、内閣府が毎月発表する「機械受注統計」(国内の主要機械メーカー280社の月次受注状況の調査・集計結果)などは、国内設備投資の先行指標として重視されていたりします。

■ 製造業マーケットの概要

ただ、製造業と一口に言っても幅が広過ぎて、何が・どこまで製造業なのか?具体的なイメージを持っている方は殆どいないかと思います。そこで、製造業の定義やその分類を深掘ることで、より具体に迫っていきたいと思います。
まず、製造業とはどういう定義なのか?wikipediaでは下記のように定義されています。

「原材料などを加工することによって製品を生産・提供する産業で、鉱業・建設業とともに第二次産業を構成する一大分野である。工業の中でもさらに重工業から軽工業までと幅広く、各国の産業構造によって異なる分布を見せ、概して経済活動において主要な位置付けとなる。」

ここでの記載の通りかなり幅広い産業であるがゆえに、分類の軸も多種多様ですが、今回はわかりやすさを重視して製造業を思い切ってざっくり2つに分類したいと思います。

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※数字の出典は平成23年工業統計調査

ここで、305兆円という新しい数字が出てきています。広義の製造業は三菱ケミカルHDや三井化学、旭化成などが名を連ねる化学工業(28兆円)や、JXTGHD、出光興産、コスモエネルギーHDなどの石油・石炭製品製造業(18.7兆円)、そして私達にとって身近な食料品(26兆円)、飲料・たばこなど(9.6兆円)などを含み、全体で305兆円もの規模にのぼります。冒頭の180兆円という市場規模はキャディのビジネスと親和性の高い金属が活用されている製造業に限定したものだったのです。ますます大きい・・・!

では、更に解像度を高める為にその180兆円の構成を整理してみましょう。

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※数字の出典は数字の出典は平成23年工業統計調査

自動車や鉄道、船舶、航空機といった輸送用機械器具市場は製造業として最もイメージしやすく規模も60兆円と最大規模ですが、次点以下の市場もそれぞれ4兆円~19.2兆円と莫大な規模を誇るのがこの市場の特徴です。例えば、食卓用のナイフやフォーク、スプーンなどの一般金物や釘・ネジなど比較的身近で小さいモノが分類される(※もちろんこれらの製品だけでなく他の製品も分類されていますが)金属製品製造業の市場だけで14兆円もの規模を誇ります。それに加えて、生産用機械器具やはん用機械器具という私の身近にいる方々にはあまり馴染みのない市場もそれぞれ16.6兆円・10兆円という巨大市場であるという事実は、中々認知されているものではなく驚かれる方も多いと思います。
ちなみにキャディはこの中でも、現状主には生産用機械器具製造業の市場においてサービスを提供しています。今回(前編)は製造業マーケットの構成を整理するまでに留めますが、それぞれの市場の概要については次回(後編)でもう少し詳しく触れていきたいと思います。

■ マーケット規模は全てを癒す

ここまで、製造業のマーケット規模がどれだけ大きいかを見てきましたが、事業を創るにあたってマーケットの規模は相当に重要なポイントになります。マーケット規模が大きいことによる利点は個人的には下記の3点と認識しています。

① 圧倒的に大きな規模の事業になる可能性を秘めている
② 経営資源の調達(カネ・ヒトなど)がしやすい
③ 思いっきり試行錯誤/軌道修正することが可能

① と②については、分かり易いと思います。
当然ながら狙うマーケットが大きければ大きいほど圧倒的な規模の事業になるベースがあります(※競争環境が激しいなどデメリットになる変数もありますがベースという意味では間違いありません)。それがゆえに期待が集まり、カネ・ヒトなどの経営資源も調達しやすくなります。
キャディがお世話になっているVCであるDCMの原さんも、セコイアキャピタルのドンバレンタイン氏のマーケット規模に関する下記の言葉をtwitterに引用投稿しています。

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③については少し詳しく記載します。
新しい事業を展開していく際には、基本的にそのマーケットで先行している競合が存在することが殆どです。そこでシェアを奪っていくには既存プレイヤーとの「価値ある違い」が必要になります。それまでと違ったアイデアやテクノロジーを武器に価値ある違いを生み出していくのですが、その武器を磨くにはどうしても時間もおカネもかかります。そこで重要なのが、初期段階のサービスやプロダクトがフィットしやすいお客様に絞り込んで(=フォーカスして)武器を大きく変えずとも、価値ある違いが強調される環境を作ることです。そこでお客様にサービスを提供する中で試行錯誤を繰り返して学習し、ニーズの解像度を上げていくことで武器の磨きこみの方向性もシャープになっていく。このような最初の足掛かり市場での学習と、サービスやプロダクトのチューニング・改善を通じて展開範囲を拡大していくというのが理想的な事業創造です。
但しここでマーケット規模が小さいと、そこから更にフォーカスをすることで、学習に十分な引き合いを獲得できなかったり、そもそも事業展開をする魅力や理由がなくなってしまうという事態に陥ることがあります。私もこれまでそういった経験をいくつかしてきました。
一方でマーケット規模が大きければ、コアなコンセプトにおいて十分な学習機会が得られるだけでなく、複数のコンセプト仮説を検証したり、うまくいかなかった時に軌道修正をすることも可能です。事業は全てが最初から想定した通りには進みません。だからこそ、試行錯誤を通じた学習が思いっきりできて、芽がないと思った時に軌道修正ができる環境は理想的です。
よく企業経営において「売上が全てを癒す」と言われることがありますが、立ち上げフェーズの事業開発においては「マーケット規模が全てを癒す」と言っても過言ではないと私は思っています。

今回(前編)は、製造業マーケットの概要と事業創造におけるマーケット規模の重要性について書きました。上述した通り、次回(後編)はもう一段詳しく製造業マーケットを見ていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!
キャディでは一緒に思いっ切り試行錯誤する仲間を募集しています!
ご興味ある方は下記をご覧ください。


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