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元湯陣屋さんに行ってきました

意外に近い鶴巻温泉

先週の木曜日、年休をいただき、元湯陣屋さんにITの勉強会を兼ねて自腹出張に行ってきました。

品川駅から京急ー相鉄ー小田急と乗り換えましたが、なんと1時間15分ほどで鶴巻温泉駅に到着。意外に近いことに驚き。

駅前にはマンションが至近距離にいくつも建てられており、温泉街というイメージは全くなく、なんか郊外の住宅地という感じ。がしかし、ここから徒歩5分のところに、1万坪の庭のある、将棋の名勝負の場所としてもとても有名な「元湯陣屋」旅館があります。

この旅館ですが、2009年には負債10億円で廃業寸前にまで陥りましたが、ここを引き継いだ宮崎富夫社長はICT活用でわずか2年で蘇らせたそうです。思い切ったICTシフトでここまで会社が変わるのだなーという見本になる好事例でIT業界ではかなり有名な会社であります。

昔は上の写真の左手に見える入り口の太鼓をたたくだけの役割の人もいたらしいのですが、今やICT活用で一人何役も兼務するという合理的な経営に変わり、従業員数は2009年の120人から現在は45人と3分の1に減少したにもかかわらず、効率化により労働生産性は5倍、従業員の年収も2倍に引き上げ、旅館業界平均を大幅に上回っているとのこと。さらに旅館なのに月曜から水曜日を定休日にしたことで従業員の完全週休二日制を実現しており、働き方改革でも群を抜いた会社でもあります。

営業日数が少ないにもかかわらず売上高は2010年の2.9億円から昨年度は8.2億円まで年々上昇。利益率指標のEBITDA率はマイナスから現在は30%に上昇(繁盛旅館で10%)という驚異的な旅館であります。

その売上の中でも、実は「陣屋コネクト」という旅館管理システムと「JINYA EXPO」という旅館同士の情報共有基盤の販売・運用関連が約2億円というIT関連企業にもなっている点が面白い点で、旅館業を本業にしながらも、業界共有プラットフォームを提供する会社にシフトしているようです。

とはいえ、旅館業に手を抜いてるわけではなく、最高の環境、おもてなしを実現しています。

駐車場にいた従業員の方に、入口の太鼓を叩いて欲しいとリクエストすると、とても自然な感じで楽しそうに叩いてくださいました。お出迎えの車の運転の方だったのかもしれませんが、とても気さくで明るく、おもてなし精神にあふれた方でした。

なお、リピーターの方が来られた場合は駐車場に設置されているカメラが車のナンバーを自動的に読み取り、従業員が持っているiPadなどに瞬間的にポップアップで表示されるとのことで、どこの誰が今来られたということが従業員全員に知らされる仕組みになっています。伝説のベルボーイでなくても、従業員の誰もが名前を呼んでくれるということになります。

で、一歩入るとこんな感じ。

圧倒的な広さの庭が出迎えてくれます。

受付はこんな感じ。すごく丁寧に対応してくれました。受付が紙でなくてiPadですでに登録されているところにサインするだけってのがとても合理的。東京の高いホテルでも住所やら何やら書かされるけど、予約してるんだからサインだけで十分だよなーと思う。

なんか宮本武蔵の掛け軸とか兜とか、先代からのいろいろなものが置いてあります。この旅館、明治期の三井財閥の保養地から始まり大正時代から約100年続いている老舗中の老舗旅館でもあります。

もちろん将棋の名勝負の写真もたくさんかざられていました。

部屋は引き戸だけどオートロックで、カードをかざすと解錠するホテル風です。お布団を用意したり、掃除をする従業員は指紋認証で開くようです。この指紋認証で誰がどこの部屋に入って、出て行ったのかが分かる仕組みになっているようでこのデータも一元管理されているとのことです。

案内されたのは露天風呂付きの部屋でした。すごい!

古い旅館のはずですが、メンテナンスが行き届いており、とても綺麗。ホスピタリティを感じる宿です。

和洋室になっていて、布団でもベッドでもどちらでもチョイスできる仕組みです。

部屋専用の露天風呂もこんな感じ↑。なんと贅沢な!

料理もすごくてこんなの↑がいきなり出てきたりします。

あ、忘れてました。実は勉強に来たのでした。

部屋で一息ついた後は、旅館のバックヤードを見学させてもらい、いろいろと女将さんから説明を受けました。厨房のところには大きなモニターがおかれており、従業員の仕事状況や、今日のお客さんの状況、今来られた顧客データなどいろいろなものを一覧できる陣屋コネクトが動いていました。個人情報が多数なので写真は掲載できませんが、すごかったです。

この陣屋コネクトですが、セールスフォースのプラットフォームを活用して、プログラムのできる従業員一名による内製化で作ったそうです。僕らはベンダーさんにものすごい大金を払って一体何やってるんだろうって反省しきりであります。必要なものは内製化、つまり自分達の手で素早く作る必要があるよなぁと改めて思いました。

旅館内の温泉の温度管理も各お風呂に取り付けたセンサーから上がってくる情報を全て一元管理しておりリアルタイムに温度管理がなされていました。

通路などにもセンサーが設置されていたので、人の動きもデータとして管理しているのだと思われます。

このバックヤード見学後、女将さんから直々に講義を受けましたが、むちゃプレゼンがうまく、はっきり言ってかなり驚きました。僕も結構IT関係のセミナーで喋ってますが、そんなのを断然上回って、ものすごい勢いで話されるのに、滑舌はとてもよく、何というかできる経営者の見本のような方でありました。

ネットで公表されていること以外にもいろいろお話をいただきましたが、いろいろ苦労されながらも次々と新しいことを行なっていく経営、アジャイル経営を実践されており深く感動しました。

女将さんの旦那さんである、元湯陣屋社長の宮崎富夫さんは今年6月に株式会社ティラドという熱交換器メーカー(東証一部上場)の社長にも就任され、なんと!今度はティラドコネクトという会社を設立し、陣屋コネクトと結合させ、旅館だけでなく、中小製造業のプラットフォームも作るようであります。

もう、なんかおそれいりました。自分達のやってる仕事が視野狭さくで、スピードがものすごく遅く、お金がかかり過ぎてるんじゃないかと反省。トップの動き一つで企業は大きく変わるんだなと思いました。ホント。

この元湯陣屋のイノベーション事例はいろんな方々に聞いてほしいなと思います。

ブログでは多くを語れませんでしたが、とにかくスゴイ会社でありました。おもしろかったです。

一晩経って…。

翌朝は、会社に行かねばならず、6時起きで朝風呂に。

いい湯でした!

露天風呂の隣には、伏見稲荷の分社である神社もあり、朝から参拝しました。

で、朝7時過ぎに陣屋を出て、朝食が食べれない時間だったのですが、代わりにおにぎり弁当を持たせてもらいました。この辺もホスピタリティあふれる感じです。

旅館から5分ほど歩いて着いた朝の鶴巻温泉駅は普通の郊外の駅で、通勤通学客が多数いて、いきなり現実に引き戻された感じ、次の駅では大量に人が乗ってきて満員電車状態。うへぇ。。

で、なんとか満員を耐えて、海老名駅で相模鉄道に乗り換え横浜へ、相鉄はそれほど混んでなかったので良かったのですが、横浜駅からJRに乗り換えようと改札を出た途端、全く動かなくなり…。こんな感じ↓

なんというか、毎朝こんなんやろかねー。みんな慣れた感じでうなだれて歩いておりました。

こうまでして満員電車に押し込まれて通勤しなくちゃならない大企業に勤める人達ってどうなんやろーって自問しちゃいますわ。わざわざ行っても会社そのものは陣屋さんと違って動きが鈍いケースがほとんどだろうし。

やはり、経営はスピードが大事、やってみよう!の精神が必要だなとあらためて思った元湯陣屋さんのレポートでした。

気を取り直して頑張ろうっと。。。

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