06. 訪問-4 ヒアリング-朝
「お二人は普段の日の朝は何時ごろに起きますか?」
テーブルの向かいに座っているPさんご夫婦に尋ねる。ヒアリングはだいたいこの質問から始まる。ヒアリングの目的は、Pさんの暮らしを私たちが具体的にイメージできるように教えてもらうこと。まずは朝起きて、就寝するまでを思い出しながらお話ししてもらい、さらに質問に答えてもらって様々なことを根掘り葉掘り聞いていく。
「主人が5時くらい?私は6時ぐらいに起きますね」
私たちの質問に答えてお話ししてくれるのはほとんど奥さんの方。奥さんは初めて会った頃は少し緊張していて言葉が少なかったが、徐々にリラックスしてくれるようになって、最近はたくさんお話ししてくれる。ご主人は静かに頷きながら話を聞いていて、時々低い声で冷静なコメントをくれる。なんだかとても面白い。
「その後どうしますか?」
「顔を洗ったりして、洗濯機を回して、朝ごはんを食べて、仕事に行きます」と奥さん。 「僕はSと散歩に行った後、シャワーを浴びます」とご主人。
「どんな朝ごはんなんですか?」
「えーと、色々かな。ご飯だったりパンだったり」
意外にもご主人からの答えだったので意表をつかれていると「朝ごはんは僕の係りだから」とご主人。
ご主人が朝食を担当していると聞いて少し安心した。普段から家事に関与しているなら暮らしの話がしやすい。ご飯を炊くときは前の晩にセットして朝になったら炊けているようにしているとのこと。炊飯は週に1度ぐらい。
「お洗濯は朝しているんですね。乾燥はどうしていますか?」
「バルコニーに干しますけど、お天気に左右されるのが嫌だなと思っています。タオルみたいなものは洗濯機で乾燥までします。それ以外のものは恥ずかしいけど色々なところに室内干しです。」
「浴室暖房乾燥機が付いていましたけど使いませんか?」
「子ども達がいた頃は便利に使っていたけど、今はほとんど使わないです。ハンガー干しする量はそれほど多くないから勿体無いかなと思ったり、なんとなくお風呂に洗濯物が掛かっている時の見た目も好きじゃないんです。」
さっきまで楽しそうに話していたPさんの表情が洗濯の話になったら曇ったように感じる。洗濯そのものに少し不満があるのだと思う。Pさんの使っている洗濯機は日本製のドラム式洗濯機。
「せっかくの機会なので、海外製の洗濯機も検討してみて下さい。」
海外製の洗濯機ならビルトインができるので、サニタリーの提案が変わる。生活のひとつのシーンが変わるのだから大きなことだ。比較すれば金額は高いかもしれないが、毎日行う家事は、毎日の気分に影響を及ぼすのだから妥協しない方が良いと思う。
それに日本の洗濯機は形状が様々で狭いサニタリーでは収まりが悪く、デザイン的にも浮くから隠したくなるし、設計でいつも頭を悩まされているから、正直なところ海外製のビルトインタイプを選んでくれた方が嬉しい。
「検討した結果、やはり今と同じ日本の洗濯機が良いとなればそれで良いです。最初から選択肢から外してしまうのは勿体無いというだけなので。他のことについても、最初は前提や先入観を一度なくして選択肢を広くとることをおすすめします。色々考えることが増えるので大変ですが、一つずつ決めていけば大丈夫ですよ」
まずはWebでメーカーのホームページを調べてみて、ブログなどで使用している人の感想や口コミなどもよく見た上で、実際にショールームに行って詳しく使い方の説明を受け、不安なことなども聞くことを勧めた。
「お二人とも出社されているんですか?リモートでお仕事することもありますか?」
「私は週一でリモートになっています」と奥さん。「僕は半分リモートみたいな感じ」とご主人。
ワークスペースについて尋ねると、リモートミーティングの時の音や声だけ少し気になるけど、デスクがあれば部屋はいらないとのことだった。
「ノートパソコンだけだから仕事では広くなくても良いんだけど、僕は仕事用じゃなくて自分の場所が欲しいと思っているんだよね。」
この話題はPさん夫婦の間ですでに話されていたみたいで、奥さんも頷いている。
「私のお客さんが来た時などに主人の居場所があった方が良いと思いました。それ以外でもそれぞれ別の時間を過ごすこともありますから。」
まあ、この広さで二人暮らしになるなら問題なくできそうだし、色々な居場所がある方が良いと思う。それより頻繁に来客があるというのが珍しいなと思う。
「料理が趣味みたいなところがあって、時々お友達を誘って食事会をしているんです」
「妻のご飯は本当に美味しいよ」とご主人が教えてくれる。私たちがすごい、すごいと感激しているといつか招待してくれることになった。催促するみたいになってしまったかもしれないけど、とても嬉しい。
来客と料理については後でもっと詳しく聞くことにして、出勤時間の話に戻ることにする。ご主人の方が少し早く出かけるとのこと。
「その時にゴミを持っていくのも僕の係」
ご主人が家事をしていることを少しアピールしてくる。
「このマンションはゴミをいつでも出せますか?」
「はい。」
ゴミをいつでも出せるというのもマンションのメリットの一つだと思う。溜め込まずにこまめに出せば、家の中のゴミスペースが小さくできるし、分別もしやすい。
Pさん夫婦の普段の朝の様子がだいたい分かってきた。Sはテーブルの下でいつの間にか寝ている。
次は帰宅後のことを聞いていこう。
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こんにちは。
この感じだとヒアリングは長くなりそうですが、お付き合い下さると嬉しいです。
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