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井出進学塾としての見解です-大学入試の英語はどうなるか?大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)をふりかえります

こんにちは、井出進学塾です。
英語では、英検などの民間テストが導入される予定でしたが、見送られました。まずは、今さらですが、こちらの批判をしておきましょう。

民間テストの導入が検討されたのは・・・

「聞く」「話す」「読む」「書く」の四技能が重視され

英検だったら、4つとも、それっぽいことやってるから、4つの技能を試験した、・・・ということにしていいだろう。・・・という程度の根拠しか感じられません。

英検でこれらの技能を試すのに足るか?というのは、多くの先生方によって議論されていることでもあります。
私としては、センター試験の英語は、歴史もあり一流の先生たちが時間をかけ、じっくり練り込んだ良問ばかりであるのに対し、英検の問題は、覚えているか覚えていないかだけの問題が多く、ものたりなく感じます。


そうです。私の主張の要としては、センター試験に対する、「思考力を試せない」という批判はまったく的外れで、センター試験こそ、思考力を試す良問ぞろいだった、というところにあります。

今後のこととしては、民間試験の導入には反対し(なんとか、阻止したいですね)、新しい制度になってしまったのはしかたないとして、新しい制度のテストがよりよいものになってくれるよう、地方の個人経営塾の立場から、意見を出していきたいと考えています。)

それでは、試行調査(プレテスト)を振り返ってみましょう。

まず、全体的な形式の変化ですが、配点として、リスニングが60分(30分)で100点、筆記(リーディング)が80分で100点です。
センター試験と試験時間は変わりませんが・・・

筆記の配点が100点下がり、リスニングの配点が50点増えている

・・・形になっています。
もっとも、大学によって得点配分は調整でき、時間も従来と変わらないことから、「筆記は(点数×2)、リスニングは(点数×1/2)」あるいは、それに近い数字で調整してくるところが多いだろうとも予想できます。

ただし、これも1つの方向性であるので、近い将来「リスニング:筆記」の得点配分が「1:1」に近づいていくことは、受験者も我々のような教育関連従事者も覚悟しておくべきことでしょう。

問題なのは、プレテストの筆記(リーディング)試験の内容です。
発音・アクセント問題はおろか・・・

文法問題も、なくなっています。

おちこぼれ(チョコミント)

最初から長文です。
もちろんネット記事、パンフレット、料理のレシピなど工夫を凝らした題材もありますが、根本的に文法問題がなくなっています。

最初みたときには、設問に文法問題をもぐりこませているのか、と思いましたが、そうでもありませんでした。文法問題が、なくなったと言っていいでしょう。

おそらく当初は、民間テストとの併用を想定していたので、こうしたのでしょうが、民間テストの見送りが決定した後も、大学入試センター側は今のところ、このプレテストの路線で行くと、述べています。

それで、いいのか?・・・というのが大問題ですね。

つくづく、新しい大学入試制度がはじまるのと、コロナ問題が重なってしまったのが、悪いタイミングだったと感じています。この点については、一般の人々にも認知され、幅広い意見を集め議論を形成していくべきところです。(私の意見では、今年度の大学入学共通テストは1か月遅らせるべきです。もっとも、1か月では不十分でしょうが、そのまま行うよりましです。また、今年度だけでなく、来年度以降のことも考えていかないといけません。)

文法問題削除について、私の意見を述べておきます。まず、その前に・・・

発音・アクセント問題について

少し、話はそれますが、これは主に中学生の定期テストについての話になります。
今では、ほとんどの学校で英語の定期テストでリスニング問題を含むのが当たり前になりました。
学校の先生が、「リスニングがあるからいいや、」ということで、発音・アクセント問題を定期テストで出題しなくなってきています。(確かに、発音・アクセント問題はつくるのに手間がかかります。

ここに問題があります。発音・アクセント問題は会話技術(「聞く」「話す」)の代替だと思われがちですが、実はそうではなく、

英単語のつづりとよみ方の関係

・・・をつかむために行われていたのです。

当塾でも新規の高校生の英語を指導する際、生徒さんが「音節」というとらえ方ができていない例をよくみます。これでは、英単語を覚えるのに必要以上の労力がかかってしまうでしょう。

けっして極端な言い方とは思いません。中学で発音・アクセントの定期テストでの出題が減ったのは、日本の英語教育において大きなマイナスだったといえるでしょう。

さらに、小学5・6年生での英語必修がはじまりました。
その影響(負の面)として、中学生になってから単語のつづりを覚える必要があるのに全くできず、投げ出してしまうというケースが今後、多く出てくるだろうと予想されます。(この件については、別の記事でくわしく書きます。)

これは、けっして中学教育がうんぬん、という話ではなく、大学入試の公のテストであるセンター試験で、今まで発音・アクセント問題が出題されていたので、それに準じる模試や、高校の定期テストにも反映され、今までは最低限のことは保たれてきました。

しかし、今後、大学入試の公の試験で・・・

発音・アクセント問題が、なくなってしまいます。

おちこぼれ(イチゴ)

これは、とても大きな問題なので、主張していかなければいけません。(もしかすると、すでに見識者や大手予備校の先生で、このようなことを主張していらっしゃる方がいるかもしれません。ご存知でしたら、その記事など下のコメ欄などから教えてください。)

なお、この英単語のつづりの読み方の関係(フォニックスといいます)については、私自身も解説動画をあげていますし、これもいずれ記事にしようと思っています。

次に文法問題についてです。

しっかり考察していくために、まず「文法問題なしでよい」とする側の論拠をみていきましょう。一般的に出ているものではなく、説明しづらいので表には出てこないけどコアな部分を、私なりの推察になりますが、上げてみます。

例えば、センター試験でもおなじみの適語(句)選択問題。


センター試験は練り込まれた問題なので、そんなこともないですが、それに準じた問題集などでは、どうしても、こっち(間違えているもの)を使ってもそんなに問題ないんじゃないか・・・というものが、出てきてしまいます。

以前、オーストラリアの大学を卒業したばかりの方が、むこうとこちらの就職時期のずれから、三か月ほど当塾で指導スタッフをされてくれていたことがあったのですが(なんと、TOEICスコア、910点という方です)、発音のことを聞いたら、「自分も発音はうまくないけど、向こうの人からしたら少しくらい変でも、かわいいと感じるみたい」と、おっしゃっていて、きっとその通りなのだろうと思いました。

文法なども、高校の授業で教えられてこういう場合はこう、とそこまで厳密なものは少なく、多少、違和感を与えるくらいで、実際コミュニケーションをとる中で、修正していけばよい、ということでしょう。

実際にまちがいの選択肢をつくるのは難しく(まちがいである根拠が必要ですからね)、英検などは、まちがいの選択肢はまったく関係ないものになっていることが多いですね。でも・・・

だからこそ、センター試験・英語が必要でした。

映画監督おちこぼれくんたち

英語に対する理解を深めるため、深い文法的考察を求める問題は必要です。
それが、直接的ではなくても全体的な英語力につながります。
私などは、高校時代、英語(英文法)はパズルみたいで、楽しくてたまりませんでした。

民間だけで、そのような良質の文法問題をつくるのは難しい面もあります。センター試験が、その範を示すことで、日本の英語教育はなんだかんだでうまくいっていました。(「話せる人が少ない」とか、表面的な批判にどうしても目がうってしまいますが、うまくいっていると言っていいと思います。)

今後、どうなっていくかですが・・・

これをきっかけに、逆に「英文法」の大切さが見直されていくかもしれません。あるいは、取捨選択され本当に必要な「英文法」にブラッシュアップされていくかもしれません。よい方向に進むように、私も一個人力として、微力ですが、がんばっていこうと思っています。

以上です。
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執筆:井出進学塾(富士宮教材開発) 代表 井出真歩

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