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[ブロードウェイ感想] The Great Gatsby

概要

 フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」の約半年でブロードウェイにやってきた2024年新作ミュージカル。1920年代を舞台にした、一人称で紡がれるニューヨークという華やかな都会のシビアさ・アメリカンドリームの現実を描いた名作古典。2度の映画化、多分舞台も今回が初めてではないはず、というかボストンでRachel Chavkinによるガチ系ミュージカルが現在公開中という、米国はなおさら教科書で習うためみんな知ってる原作もの。みんな大好きジャズエイジのセット・衣装、Jeremy JordanがJ・ギャツビー、Eva Noblezadaがデイジーを好演。

感想

 デイジーは代役でしたが、Jeremy Jordanとジョーダン役のSamansa Paulyの歌がとにかく良かったです。どこまでも伸びてパワフルで束で届くような。
 何となく全体に宝塚っぽいな、という印象でした。アンサンブルの人数豊富でダンスの見せ場が大きいのと、衣装とセットが非常に綺麗なのと、あとはやっぱり古典作品だからかな?
 とはいえ解釈は最近の月組の方が、舞台を変えているにもかかわらず原作に近いなと。このシーンやっぱ印象にのこるよね、というところがしっかり場面になっているのは嬉しい。ただ、だんだん違う方向にいってしまうという、、悩ましい。
 
 この、これじゃない感の主な原因は、ニック・ジョーダンカップルが賑やかすぎなのではと。嫌いじゃないし、確かに美味しい。むしろ好物なんです。ただ、今回は主役をもっていってしまった感じ。想像するのが楽しいんだけど、ファンの頭の中でよいのです。この話のメインはこの二人以外の人であって、彼らは傍観者なんだと思う。そうじゃないとあの作品の絶望感、やるせなさが霞んでしまう。プラザホテルはあの二人に飛び火するんじゃなくて、3人の修羅場を眼前にして巻き込まれた感じで揃って絶望するのがいいのであって(あくまで個人的な感想です)。それに、結婚の話をあからさまにするのは正直ありえない気がする。ほんのり期待したとしても、ニックは婚約者がいる状況で「正直であれ」原則に反している、と認識していたはず。
 
 あとは、デイジーのキーなセリフ、女の子は綺麗でバカなのがいい、は宝塚版同様歌い上げ系のナンバーになっていました。回想シーンで入れるのは彼女が悟るの早すぎな気がしたので、今回の方が、まだしっくりくる。とはいえ、個人的にこれ、2才くらい?の希望しかないような娘の後ろ姿をみながら、ぼそっともらした、っていう状況が一番堪えるんだよなあ、と。舞台だから現実的に赤ちゃんにする必要はあるのだろうけれど、違うセリフで歌い上げた最後に1回だけ言う、みたいなのはどうなんだろうとか。もやもや考えてしまう。
 
 それでも、ウィルソンとマートルの過去偏がちらっとあったのはとってもよかった。2人の尺がそれぞれしっかりあるのも嬉しい。そこもちょっとニック視点らしからぬ点ではあるけれども。そしてウィルソンの店の景色のセットが好き。斜めの眼鏡屋看板はエリアの荒れた感とウィルソンにとっての威圧感とキラキラマンハッタンとの対比がとても効いてました。

 原作への愛が重めだと、うーん、、となるところはあるかもですが、概して楽しく豪華で満足感のある作品です。是非観てみて欲しいです。


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