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【コラム】なぜ誰も整備工場の料金改定の後押しをしないのか? ~筆者が考える不正発生のプロセスとは~

筆者は7月31日のコラムで、不正車検について『最近、指定工場による不正車検のニュースが増えていますが、キーワードは「時間」です。』と指摘した。 

☆7月31日のコラム:https://www.facebook.com/1867267126933671/posts/3098225917171113/

ところで、現場の作業時間は元々タイトだったのだろうか?それとも徐々にタイトになっていったのだろうか? 

さて、令和3年10月1日から12ヵ月ごとの定期点検項目に「車載式故障診断装置(OBD)の診断の結果」が加わる。 

OBD点検の対象車種は、
・エンジン制御コンピュータ
・前方・側方エアバッグ
・アンチロックブレーキシステム
・衝突被害軽減ブレーキ 

が搭載された車、つまり、ほぼ全ての自動車だ。 

そこで、国土交通省はこれを周知するユーザー向けのチラシを作成した。 

ポスターには事故事例なども掲載され、分かりやすく素晴らしい出来映えだ。

だが、何かが足りない・・・。 

点検項目が増えるのだから当然点検工数も増える。 

では、お客様にお示しする点検時間は?点検料金は?・・・。 

整備工場が作業効率をあげて、すべてを吸収しろと?・・・。 

一方で、国のコスト増大については自動車検査の法定手数料を値上げしてキッチリ回収だが、これについてもユーザーへの国の周知は余りにも足りない。

整備工場に納付を義務付ければ取りっぱぐれはないとの態度ありありで、ユーザーから「えー、聞いてないよ!」と言われるのは、もちろん矢面に立つ整備工場だ。 

☆自動車検査の法定手数料変更のお知らせ
<概要>
•令和3年10月1日より、自動車の検査の際に支払う法定手数料として、(独)自動車技術総合機構の技術情報管理手数料が追加(1台あたり一律400円)されます。
•技術情報管理手数料の納付は、既存の手数料と併せて行うこととなります。 

<何のための手数料ですか?>
•近年急速に普及しはじめている、衝突被害軽減ブレーキ等の電子制御がなされている先進安全装置について、従来の点検や検査では検知できない故障による事故が発生しています。
•このため、点検や検査(車検)のタイミングで、車載式故障診断装置(OBD)を活用して電子的に故障診断をするように、制度が変わります。
•手数料は、この制度の実施に必要となる、自動車メーカーが提供する故障診断に必要な情報管理、全国の検査場(車検場)や整備工場が利用する情報システムを運用していくための費用として納付いただくものです。 

<よくあるご質問>
Q.電子的な検査の対象車両ではありません。なぜ手数料を払う必要があるのですか。
A.先進安全装置の機能維持は、事故低減効果によりクルマ社会全体の安全性向上に資するため、既存の手数料同様に、電子的な検査対象車両でなくても負担をいただくこととしております。また、リコール情報の提供等、自動車を安全にお使いいただくためのサービスも提供していきます。
Q.自動車技術総合機構に持ち込まない指定整備工場(民間車検)や軽自動車検査協会で受検する車両について、なぜ技術情報管理手数料を払う必要があるのですか。
A.自動車メーカーが提供する故障診断に必要な情報の管理、指定整備工場や軽自動車検査協会が利用する情報システムの運用を、自動車技術総合機構が行うためです。

さすがに、良くできたロジックだ。

故に筆者は思う。 

OBD点検義務化のユーザー向けチラシを作成するのであれば、その頭の良さを活かしたロジックで、点検時間の増加や点検料金の値上げを示唆してくれれば良いのに・・・。

故に筆者は考える。

そもそも、規制強化だけを行って収益転嫁へのサポートを行わないことが不正発生の遠因なのでは?

☆筆者が考える不正発生のプロセス
①クルマの高度化に伴い整備技術も高度化している。
②安心安全を確保するため法令による規制が強化されている。
③結果的に点検、整備、検査の工数が増大している。
④ユーザー車検は点検整備がないので益々価格競争が不利になる。
⑤工数増大に対する整備工場の価格転嫁については、国も業界団体も「各々の企業努力」と考えているのか、何も手助けしてくれない。
⑥「短時間車検」などを売りにしている整備工場は「ユーザーへの無理のある時間の約束」や「単位時間辺りの利益」など営業上の都合を重視するがあまり、増大する工数の始末を「現在の工数の範囲で何とかしろ」と現場に丸投げする。
⑥その結果、追い込まれた現場が不正を行ってしまう。 

故に筆者は確信する。

現場の作業時間は元々タイトだったのではない。

ステークホルダーの不作為の末、徐々にタイトになっていったのだと。

ユーザーとて「安心安全を犠牲にしての安さ」など望んではいないはず。

なぜ誰も整備工場の料金改定の後押しをしないのか?

整備業界の行く末が心配だ。

https://www.facebook.com/1867267126933671/posts/3135216056805432/

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