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フィンランドとアメリカ・ウィスコンシン州における分担監護と別離後の母親の経済的ウェルビーイング:養育費と子どもの費用の分担は重要か?

 この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:Journal of Family and Economic Issues
原題名Shared Care and Mothers’ Post‑separation Economic Wellbeing in Finland and Wisconsin, US: Does Child Support and Sharing Child’s
Costs Matter?

原著者:Mari Haapanen, Trisha Chanda, Anneli Miettinen, Quentin H. Riser, Judith Bartfeld, Mia Hakovirta
 なお、翻訳にあたっては、英語のニュアンスを大事にして、“shared care”を「分担監護」、”shared physical custody”を「共有身上監護」と訳出しています。
 また、論文をより理解して頂くために、ウィスコンシン州の養育費ガイドラインを纏めた「ウィスコンシン州の養育費計算方法」という章を設けました。

ウィスコンシン州の養育費計算方法

 養育費の算定公式は、監護権者の収入に拘らず、非監護権者の所得から一定%を養育費とする「所得%方式」と監護権者と非監護権者の所得比を用いて養育費を求める「所得シェア方式」とに大別されます。ウィスコンシン州は前者の「所得%方式」を採用しています。
 更に、ウィスコンシン州のガイドラインでは、以下のような場合分けをしています。

  1. 一方の親が「主たる監護」をしている場合(レアなケース)
    子どもが全宿泊日数の75%以上を一方の親と過ごしている場合。

  2. 両親が「共同監護」をしている場合(一般的なケース)
    子どもの全宿泊日数の少なくとも25%以上、つまり92日以上の夜を両方の親の居所で過ごしている場合。ウィスコンシン州の殆どの家庭が該当します。

  3. 両親が「分割監護」をしている場合(特殊なケース)
    一方の親が1人以上の子どもの監護権を有し、もう一方の親が別の子どもたちの監護権を有する場合、分割監護ガイドラインを適用する場合があります。

  4. 「継続監護」をしている場合(特殊なケース)
    既に養育費支払の法的義務を負っている親が、裁判所命令の結果、後続の家庭で追加の養育費支払義務を負う場合。

  5. 養育費支払い義務者が高所得者の場合(特殊なケース)
    養育費を支払う親の年収が$84,000を超える場合、高所得向けガイドラインを使用する場合があります。

  6. 養育費支払い義務者が低所得者の場合(特殊なケース)
    養育費を支払う親の月収が$1,485未満の場合、低所得者向けガイドラインを使用することができます。

  7. 「分割監護」と「共同監護」を合成している場合(特殊なケース)

 上述した「主たる監護」「共同監護」における計算方法を説明します。
監護親が世話する子どもの人数によって、非監護親はその収入に以下の各%を乗じた金額を支払わねばなりません。
  ・子どもが1人の場合は非監護親の収入の17%
  ・子どもが2人の場合は非監護親の収入の25%
  ・子どもが3人の場合は非監護親の収入の29%
  ・子どもが4人の場合は非監護親の収入の31%
  ・子どもが5人以上の場合は非監護親の収入の34%
 この金額が「主たる監護」をしている場合の養育費となります。両親が「共同監護」をしている場合は、上述の標準金額に監護時間を考慮した金額になります。具体的には、監護時間の少ない方の親が多い方の親に、標準金額×監護していない時間の割合を支払います。具体的な計算方法を以下に示します。

【事例1】子どもが1人、父親の年収$24,000、母親の年収$8,000,父親の監護率0%
適用:主たる監護
養育費:$24,000/年×17%÷12月/年=$340/月,父親→母親

【事例2】子どもが1人、父親の年収$24,000、母親の年収$8,000,父親の監護率50%
適用:共同監護
養育費:$24,000/年×17%×(100%-50%)÷12月/年=$170/月,父親→母親

【事例3】子どもが1人、父親の年収$8,000、母親の年収$24,000,父親の監護率0%
適用:主たる監護
養育費:標準式では$113/月となりますが、ウィスコンシン州の養育費計算ツールでは収入差や最低養育費ガイドライン、非監護親の低所得を考慮して$75/月,父親→母親

【事例4】子どもが1人、父親の年収$8,000、母親の年収$24,000,父親の監護率50%
適用:共同監護
養育費:$24,000/年×17%×(100%-50%)÷12月/年=$170,母親→父親

フィンランドとアメリカ・ウィスコンシン州における分担監護と別離後の母親の経済的ウェルビーイング:養育費と子どもの費用の分担は重要か?

マリ・ハーパネン、トリシャ・チャンダ、アンネリ・ミエッティネン、クエンティン・H・ライザー、ジュディス・バートフェルド、ミア・ハコヴィルタ

要旨
 子どもの別居後の生活の取決めは、母親の経済的ウェルビーイングに重要な影響を与える可能性がある。本研究は、2019~2020年のフィンランド(n=850)とアメリカ・ウィスコンシン州(n=395)の別離した親に関する独自の調査データを使用して、別離後6年以上、子どもの共有身上監護権(分担監護とも呼ばれる)を有する母親と単独身上監護権を有する母親の自己申告による経済的ウェルビーイングを調査したものである。私たちは逐次ロジスティック回帰モデルを使用して、この関連性が潜在的に生じる経路-養育費と両親間の子どもに係る費用の分担-、および、その結果がフィンランドとウィスコンシン州の家族政策の文脈によって異なるかどうかを調査している。私たちの研究結果は、共有身上監護権を有するウィスコンシン州の母親は、単独身上監護権を有する母親と比べ、経済的困難のレベルが著しく低くいことを示唆している。これはもう一方の親との子どもに係る費用の分担がより大きくなることで十分に説明できる。フィンランドではそのような関係は明らかではないが、費用の分担はフィンランドの母親の経済的困難との間に、他の影響を受けない負の相関がある。調査結果は、子どもの生活の取決めと結びついた父親の貢献が、別離後の母親の経済的ウェルビーイングにとって如何に重要であるか、共有身上監護や養育費政策に如何に影響を与えているかを浮き彫りにしている。

キーワード 離婚 共同身上監護 経済的ウェルビーイング 養育費 国を横断した比較

はじめに

 研究により、一般的に、別離後は女性の経済的ウェルビーイングが男性よりも低下することが判明している(Mortelmans、2020)。これは特に母親に当て嵌まる。なぜなら、子どもは別居後も母親と一緒に暮らし続けることが多く、母親の貧困やひとり親になるリスクが高まるからである(LeopoldとKalmijn, 2016)。そのため、別離後に母親が(父親と比較して)負わねばならない親としての責任が不均衡になり、母親は特に不利になる(Leopold, 2018; LeopoldとKalmijn, 2016)。子どもがいることで、母親の世帯が必要とするリソースは増加するが、父親からの養育費や公的給付といった経済的支援では相殺できない可能性がある(Andreßら 2006)。更に、世帯に子どもがいると、母親が労働市場に参加しようとしても制限される可能性がある。監護労働と有給労働活動とを両立させることが難しくなり(Mortelmans, 2020)、その結果、母親が世帯の増大する経済的ニーズに対応することが困難になる。
 既存の文献は主に、子どもが母親だけと暮らしていると仮定して、別離後の母親の経済的ウェルビーイングを考慮しており、実際に子どもの時間を両親間で共有する取決めにはそれほど注意を払っていない(但し、Augustijn, 2022; Bonnetら 2022参照)。しかし、子どもが親の両方とかなりの時間一緒に暮らす、別離後の生活の取決めは、西側諸国でますます一般的になってきている(Hakovirtaら., 2023; Smyth, 2017)。本研究で分担監護¹と称する、このような取決めは、子どもが自分の時間の少なくとも25~50%をもう一方の親と暮らす取決めを指す。
 別離後の子どもの生活の取決め、例えば、子どもが母親と殆ど、あるいは母親だけと一緒に暮らす(単独監護)のか、または子どもが両方と親と一緒に暮らすのか(分担監護)は、別離した母親の経済的ウェルビーイングを決定する重要な決定因子となる可能性がある。これは、子どもの看護と経済的支援に対する親の責任が、単独監護の取決めと比較し、分担監護の取決めの方が母親と父親の間でより均等に割り当てられる可能性があるためである。それにも拘らず、そのような取決めが母親の経済的ウェルビーイングに与える影響に関する研究は限られている。先行研究から、分担監護を実践している母親は、単独監護の取決めをしている母親よりも、収入、教育、全体的なウェルビーイングの点でより満たされていることが知られている(最近のレビューについては、Steinbach, 2019参照)。経済的ウェルビーイングの違いは、少なくとも部分的には分担監護を積極的に選択したことに起因するが、分担監護が母親の経済的ウェルビーイングに独立した影響を与えている可能性がある。既存の実証文献は、分担監護が別離した母親にとって経済的に有利であることを示唆しており(Augustijn, 2022)、幾つかの研究では、分担監護が母親の経済状況にどのような影響を与えるかの背後にあるメカニズムを明らかにしている(Bonnetら, 2022)。例えば、分担監護は単独監護の取決めをした母親と比較して母親の時間的プレッシャーを軽減し(van der Heijdenら, 2016)、労働市場への参加が容易になり得る(Bonnetら, 2022)。
 今回の研究は、分担監護が母親の経済的ウェルビーイングにどのように関連しているかだけでなく、養育費や両親間の子どもに係る直接的費用の配分が、分担監護が母親の経済的ウェルビーイングに影響を与える媒介(メカニズム)であるかどうかも調査することで、この文献に貢献している。分担監護では、子どものもう一方の親が子どもの監護をする責任を分担するだけでなく、子育てに関連する費用の一部を負担するため、母親が負担する直接的出費が軽減される可能性がある。同時に、養育費命令はあまり一般的ではなく、単独監護を有している同様の親と比較して分担監護の取決めでは養育費の金額が低いため、両親間の所得の再分配は少なくなる(Meyerら, 2015)。養育費は母親の別離後の子ども関連費用を相殺するため、母親にとっては貧困軽減に役立つ重要な別離後の収入源と見做されている(Bartfeld, 2000; HakovirtaとJokela, 2019)。従って、分担監護は支援の削減につながり、経済的ウェルビーイングを低下させる可能性があるが、母親の直接的出費の軽減を相殺して経済的ウェルビーイングを高める可能性もある。監護の取決め、養育費、費用の分担、経済的ウェルビーイングの間の相互作用は、分担監護の経済的影響と、異なる監護の取決めにおける母親に対する収入支援政策の関連性をより深く理解するのに役立つ可能性がある。
 本研究では、フィンランドとアメリカのウィスコンシン州における別離した母親に対する分担監護の経済的影響を調査する。フィンランドとウィスコンシン州の両方で、別離家庭における分担監護の取決めが増加してはいるが(Meyerら, 2022; THL, 2022)、分担監護は依然として、より有利な生活環境にいる親の間で一般的である(Meyerら, 2022; Miettinenら, 2022)。ウィスコンシン州では、分担監護が標準であり、少なくともここ10年間は最も一般的な取決めとなっている(Meyerら, 2017)。更に、アメリカ全体と比較して、ウィスコンシン州は分担監護の普及率が最も高く、離婚訴訟の 50%以上が単独監護ではなく分担監護の取決めを選択していることで際立っている(Meyerら, 2022)。フィンランドでは、分担監護が正式な生活の取決めになったのはつい最近であるが、2019年以前であっても、親が訪問権やアクセス権を通じて分担監護を実践できた可能性がある(Tolonenら, 2019)。過去10年間で、全ての取決めに占める分担監護の取決めの割合は10%から33%に増加し(THL, 2022)、2019年(本研究の期間)には、フィンランドの別離家庭の約30%が分担監護の取決めをしていた(Miettinenら, 2020)。
 3つの研究課題が私たちの研究の指針となる。第一に、別離や離婚した分担監護の母親の主観的な経済的ウェルビーイングは、単独監護、純収入およびその他の人口統計的特徴を差し引いた場合と比較して、どのように異なるのか?第二に、養育費の受取りや子どもに係る直接的費用の両親間での分担は、母親の主観的な経済的ウェルビーイングとどのように関連しているのか?最後に、養育費や子どもに係る直接的費用の分担という形での父親の貢献は、分担監護と経済的ウェルビーイングとの関係を媒介するのか?本研究は、フィンランドとウィスコンシン州²の2つの福祉国家と家族政策の文脈の中でこれらの関係がどのように展開するかを調査し、両国の結果を比較することを目的としている。この流れで、本研究は、一層一般的になっている分担監護の取決めと、それが母親の経済的ウェルビーイングに及ぼす潜在的な影響が、様々な家族政策の状況においてどのように展開するかを明らかにする。

¹ 文献で一般的に使用されている他の用語は、共同身上監護(joint physical custody)または共有身上監護(shared physical custody)、共同居所(shared residence)、共同配置(shared placement)、交互居所(alternating residence)である。
² アメリカでは、子どものいる家庭が利用できるサービスや手当の手厚さや適用範囲は州によって異なるため、単一の州を含めるアプローチは有益である(Daiger von GleichenとParolin, 2020)。

母親の経済的ウェルビーイングに対する分担監護の影響

 分担監護は単独監護とは異なり、母親の経済的状況に影響を与える可能性がある主な経路が2つ存在する。1つ目は、分担監護がどの程度出費を増やすかによるもので、2つ目は、子どもを養育する費用が親の世帯全体にどのように分配されるかによるものである(MelliとBrown, 1994)。MelliとBrown(1994)は、両親が子どもを泊めるために寝室、家具、その他の実用品を備えた世帯を持たねばならないため、分担監護は出費が二重になると主張している。その結果、子どもに係る費用は、子どもが世帯にいる時間が短くなるのに比例して減少しない。例えば、住居費などの固定費は子どもが世帯にいない場合でも発生するが、食事や食料品などの変動費は子どもが世帯に滞在する時間に依存する。加えて、衣服や玩具などの物品にかかる出費は、依然として一方の親が負担し得るし、あるいは分担することもできるため、分担監護で全ての直接的出費が自動的に比例分割されるわけではない(MelliとBrown, 1994)。
 全体として、例え子どもが母親の世帯から離れてかなりの時間を過ごしたとしても、既存の研究からは、母親の世帯の経済的ニーズがどの程度変化するかは明らかではない。Paul Henman (2005) は、オーストラリアの標準的な家計で別離後の家庭の子どもに係る費用を調査し、各親が負担する費用について幾つかの仮定を立てた。この調査で、世帯に滞在する時間が半分の子どもの費用は、世帯に常時滞在している子どもの費用の72%であることが判明した。低所得世帯では固定費の割合が高いため、失業中の親の費用は更に高かった(82%)。これは、特に低所得の親にとって、分担監護が必ずしも大幅な費用削減に結びついていないことを示唆している。それにも拘らず、ウィスコンシン州での最近の研究では、母親の単独監護の取決めと比較して、分担監護の取決めでは、父親が様々な領域にわたる子どもの変動費の実質的に大きな割合を支払っていることが確認されており、これは、子どもが世帯間で時間を分割する場合に、直接的費用が少なからず節約されることと一致している(Bartfeldら, 2022)。
 母親の費用に影響を与えるだけでなく、子どもがそれぞれの親と過ごす時間も養育費の支払いに影響する。分担監護における養育費命令は、支払いがない可能性が高く、支払いがあっても、単独監護の取決めの場合に比べ遥かに低額であるかのどちらかである。但し、養育費の決定には通常、親の資産が考慮されるため、これは親の相対的な経済的資産に依存する可能性がある(HakovirtaとSkinner, 2021)。
 これら全てが分担監護における母親の経済的ウェルビーイングに影響を与える可能性があるメカニズムは、養育費の支払いが減ったり、全く支払われなかったりすると、分担監護を行っている母親の経済的ウェルビーイングを潜在的に低下させる可能性があるということである。しかし同時に、両親間の直接的な費用の分担の範囲が広がれば、分担監護する母親の経済的ウェルビーイングも向上する可能性がある。従って、(著者の引用)が述べているように、分担監護が経済的ウェルビーイングに与える影響は、養育費の支払いの減少による母親の収入の減少が、世帯の経済的ニーズに影響を与える母親世帯の子ども関連費用の減少によって相殺されるかどうかにかかっている。

状況が異なれば、結果も異なるか?

フィンランドとウィスコンシン州の家族政策

 福祉国家では、女性と男性の間の監護と経済的依存を軽減する政策が、女性における別離の経済的影響を媒介している。別離した家庭が利用できる公的支援がより高い水準にある国は、母親が別離に関連する収入の損失を埋め合わせ(Andreßら, 2006; De Vausら, 2017; Uunk, 2004)、子どものもう一方の親の経済的支援への依存度を下げるのに役立つ可能性がある(Andreßら, 2006)。フィンランドの家族政策は、女性の雇用を支援することにより、家族が子どもの監護を分担するための高水準の公的支援があることを特徴付けられる(Eydalら, 2018)。アメリカと比較して、フィンランドは子ども関連サービスと子どもを持つ家族への現金給付の両方における公的支出の水準が高い(Hakovirtaら, 2022a, 2022bZ)。対照的に、アメリカは国家の再分配が少なく、子どもの監護と経済的支援の義務は主に家族にある残余的福祉国家として描かれている(Berger & Carlson、2020)。本論文で研究しているアメリカの州であるウィスコンシン州は、その手厚さと家族政策の範囲の点でアメリカの平均的な州を代表する(Daiger von GleichenとParolin, 2020)。別離後の状況に特有であるが、ウィスコンシン州にはフィンランドのような公的保証養育費制度が存在しない。公的保証養育費制度は、もう一方の親が未払いの養育費を支払っているかどうか、または養育費に対する経済的余裕があるかどうかに拘らず、最低養育費の支払いを保証する(Hakovirtaら, 2022a)。家族政策の範囲の違いに基づくと、ウィスコンシン州における別離後の母親の経済的ウェルビーイングは、労働市場での収入と元配偶者から提供される経済的支援に大きく依存している可能性があり、フィンランドでは、親が子どもの経済的責任をどのように分担するかにはそれほど依存していない可能性がある。

フィンランドとウィスコンシン州における分担監護と養育費

 両親が子どもの監護を分担する場合でも、フィンランドとウィスコンシン州の両方で、両親の間で養育費の取決めが依然として存在する場合がある。分担監護のケースで養育費命令を決定する場合は、両親の経済的資源を考慮し、母親世帯から父親世帯への子どもに係る費用のシフトを想定して、本来なら期待できるであろう養育費を減額する。Hakovirtaら(2022a, 2022b)は、フィンランドとウィスコンシン州における、男女別収入中央値の親を対象に養育費政策の成果を比較し、ウィスコンシン州では、子どもが単独監護の取決めで暮らす場合、期待される養育費の額が高くなることを発見した。しかし、親が単独監護する場合と分担監護する場合の期待額の減少は、フィンランドよりもウィスコンシン州の方が大幅に大きかった。結果として、養育費の決定は、フィンランドよりもウィスコンシン州の方が生活の取決めに強く影響される。母親の世帯収入の観点から見ると、これは、子どもに係る費用の負担と養育費の受取りとの間のトレードオフが、フィンランドの分担監護の母親よりもウィスコンシン州の分担監護の母親のほうがより劇的であり得ることを意味する。従って、もう一方の親が子どもに係る費用を直接的に分担し、収入の損失を相殺しないのであれば、または子ども関連費用を相殺する公的支援が不足しているようであれば、分担監護は母親の経済的ウェルビーイングにより悪影響を与える可能性がある。
 しかし、フィンランドとウィスコンシン州の両方で、分担監護の親に養育費命令が出ることはそれほど一般的ではない(Meyerら, 2015; Miettinenら, 2020)ため、最終的には子どもに係る費用を分担する責任の所在は親にある。更に、フィンランドの親には正式な養育費制度に加入する裁量権があり、養育費の額を決定する際に正式な制度内で裁量権を行使できる(SkinnerとDavidson, 2009)。このために、分担監護家庭の養育費の結果が不均一になっている可能性がある。ウィスコンシン州では、裁判所は、離婚した親に対する養育費の取決めを、監護形態に拘らず承認しなければならないが、ガイドラインとは異なる命令を発行したり承認したりする権限を持っている。実際のところ、単独監護と比較して、養育費命令の発行は少なく、命令による養育費の金額もガイドラインの規定よりも低くなる可能性が高い(CookとBrown, 2013)。

経済的ウェルビーイングの尺度

 経済的ウェルビーイングの主観的な尺度を通じた経済的または会計上のウェルビーイングの研究は、家計分野でますます良く知られてきている(CollinsとUrban, 2020)。主観的なウェルビーイングの尺度は通常、収入、富、所得の貧困度などの客観的な尺度を通した経済的観点からの有用性より寧ろ、「個人の経験に対する認識の特徴」を捉えている(KahnemanとKrueger, 2006)。アメリカの消費者金融保護局(CFPB)が開発したファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)スケール等の、このような尺度は、個人の富、収入、財務の健全性を確実に追跡することがわかっており、全体的な主観的ウェルビーイングの尺度とは異なることが示されている(CollinsとUrban, 2020)。CFPBは、経済的ウェルビーイングを「人が現在および継続する経済的義務を完全に履行でき、経済的な将来に安心感を持ち、人生を楽しむための選択をできる状態」と定義している(CFPB, 2017)。今回の研究におけるこのような尺度の特別な利点は、子どもが単にその時だけの世帯メンバーであるような、世帯メンバーが流動的なケースに対応し得る可能性があるという事実である。これにより、稼ぎやその他の関連要因を差し引いた監護の取決めの違いによって、母親のウェルビーイングに対する認識がどのように異なるかを評価することができる。収入の貧困などの経済的ウェルビーイングを特徴づける客観的な尺度は、これらの尺度を計算する際に誰を世帯の一員として数えるべきかを確認することが困難なため、より複雑な生活の取決めでは限界がある。
 CFPBの包括的なFWBスケールは、複数の側面を使用し測定することで経済的ウェルビーイングを運用可能にするものであるが、私たちは本研究の範囲を、そのうちの1つの側面、即ち個人の「日々の、毎月の家計の管理」にのみ焦点を当てるように絞り込む(CFPB, 2017)。私たちの経済的困窮の尺度は、通常月に通常の支出を賄うことがどの程度困難かを回答者に尋ねるもので、アメリカ連坊準備金の家計経済と意思決定に関する調査(SHED)に含まれる調査項目を修正したものである(アメリカ連邦準備制度理事会, 2021)。

方法論

 研究の目的は、家族政策の形態が異なる2つの福祉国家という背景(フィンランドとウィスコンシン州)において、分担監護が母親の経済的ウェルビーイングに影響を与えるメカニズムを理解することである。本研究では、家計の出費を賄うのがどれほど難しいかについての母親の自己報告を通じて、母親の経済的ウェルビーイングを調査する。これを主観的な経済的ウェルビーイングの尺度として運用する。先に論じた文献に基づくと、分担監護と主観的な経済的ウェルビーイングとの関連の方向性は曖昧であり、母親の直接的な子どもに係る費用の増加によって養育費の減少がどの程度相殺されるかに依存している。養育費政策は、ウィスコンシン州における分担監護の養育費と単独監護の養育費との減少幅は、フィンランドにおける減少幅より大幅に大きいことを示唆しているため、1つ目の予想は、ウィスコンシン州では分担監護の経済的利点は小さくなるというものだった。これは、フィンランドと比較して、ウィスコンシン州では、母親が分担監護の取決めで受け取っている養育費が単独監護の取決めに比べて低いので、収入の減少を相殺するために、父親は養育費以外の方法で子どもに係る費用を負担しなければならないためである。2つ目の予想は、生活の取決めに関係なく、養育費と子どもに係る費用分担の拡大は両方とも両国の経済的困難の軽減につながるだろう、というものである。最後となる3つ目の予想は、ウィスコンシン州とフィンランドでは、養育費と子どもに係る費用の分担が、生活の取決めと経済的ウェルビーイングとの関連性を媒介するだろう、というものである。

データとサンプル

 本研究のデータは、フィンランドとウィスコンシン州で別々に企画、実施された、別離家庭の生活の取決めと経済指標に関する2つの調査から得たものである。私たちは、フィンランド社会保険機関(Kela)が実施した「フィンランドの別離した親の調査」を使用している。「別離した親の調査」は、同居親と別居親を対象に2019年に実施したウェブベースの調査である。2002年、2005年、2007年、2009年、2011年、2013年、2015年、2017年に生まれた少なくとも1人の子どもを持つ7千人の同居親と7千人の別居親人のサンプルを、登録ベースのデータセット(Kelagが編集)から抽出した。このデータセットには、もう一方の親と同居していない18歳未満の子どもを持つ全ての親(結婚している親だけではない)が含まれていた。サンプルは、母国語がフィンランド語、スウェーデン語、またはサーミ語で、2019年にフィンランドに住んでいた親に限定した。Kelaの管理登録簿から有効な電子メールアドレスを取得できる親という条件を加え、サンプルを更に限定した。同居親と別居親のサンプルは別々に抽出し、調査では焦点となった子どもの一方の親だけが主に回答した。登録データセットには、親と同居するあるいは別居する子どもの誕生年に関する情報が含まれていた。これらの子どもの中から対象とする子どもを無作為に選び、親にアンケートで主にこの子どもについて報告するよう求めた。対象となった子どもの年齢は、調査時点で1歳から17歳の範囲だった。同居する親の回答率は32%(n = 2156)、別居する親の回答率は20%(n = 1293)だった。本研究では、同居親と別居親の両方の回答を使用した。同居親は殆どが母親(90%)であり、別居親は殆どが父親(71%)だった。本研究では母親からのデータだけを使用する。
 ウィスコンシン州のデータは、2020年に[査読のため名前を削除]で研究者が実施した「ウィスコンシン州の親の調査」からのものである³。この調査では、ウィスコンシン州裁判所記録データ(CRD)のコホート30および33から抽出された離婚した親(同棲関係から別離した親を除く)に関するデータを収集した。このコホートはウィスコンシン州の21郡で法廷に持ち込まれた離婚および父性確定訴訟のサンプルである。調査対象となった親は、調査の6~10年前、2009~2010年(コホート30)、2013年(2013年)の間に離婚手続きを開始しており、離婚申立時点で少なくとも1人の6歳未満の子どもがいた、単独監護の母親と分担監護の取決めをしていた両親で構成されていた。離婚時の末子を調査の対象となる子どもと呼び、この子どもの生活の取決めに関する情報を収集し、母親の情報を分担監護の取決めか単独監護の取決めかに分類するために使用した。データは、COVID-19パンデミック前は対面面接を通じて収集し、その後はウィスコンシン大学調査センターの訓練を受けた担当者が実施した電話面接を通じて収集した。調査の回答率は全体で54.8%、分担監護の母親で56.0%、単独監護の母親で54.3%だった。離婚時期と結婚期間に関する情報は、ウィスコンシン州CRDから取得する。このデータを、回答者自身の収入の測定に使用するウィスコンシン州労働力開発局の失業保険プログラムの収入記録とリンクさせる。
 データを分析用に比較できるようにするため、幾つかのステップを踏んだ。第一に、フィンランドとアメリカのサンプルを、単独監護の母親と分担監護の母親に限定した。対象となる子どもの生活の取決めを分担監護または単独監護として定義するために、まずフィンランドとウィスコンシンにおいて、子どもが典型的な月に各親と一緒に過ごす宿泊日数を計算し、次に対象となる子どもがそれぞれの親と過ごした時間の割合で単独監護と分担監護とにサンプルを分けた。本研究では、分担監護をウィスコンシン州の閾値に従って定義した。その定義では、年間の宿泊時間の25~75%を子どもと一緒に過ごす母親を分担監護の取決めをしている、宿泊時間の75%以上を子どもと暮らす母親を単独監護の取決めをしていると分類している。従って、分担監護では、子どもはどちらかの親とより多くの時間を過ごすことも、それぞれの親と均等な時間を過ごすこともできる。これらの定義は、養育費を決定する際にどの政策ガイドラインに従うかに影響を与え、それゆえ、少なくともウィスコンシン州では、フィンランドよりも養育費の額が時間分担の取決めに厳密に結びついているため、これらのグループによって経済的ウェルビーイングがどのように異なる可能性があるかかに関連する。更に、フィンランドでは、子どもが月に少なくとも7泊、月の夜間日数の25%弱相当を別居親と過ごした場合に、養育費の減額が始まる。第二に、フィンランド人のサンプルを、回答者が少なくとも6年前に結婚または合意による同棲関係を解消した場合に更に限定した。これは、2つの調査間のサンプリング枠の支配的な違いに対処するためであり、離婚後の期間の同じ時点で離婚した母親を調査していること、および両方のサンプルで対象とする子どもの年齢が類似していることを保証するためだった。最後に、リストワイズ除去法を使用して、研究変数に関する情報が欠落しているケースを除外した(フィンランドでは合計50ケース、ウィスコンシン州では10ケース)。これらの手順の結果、フィンランドでは対象となる子どもを単独監護する母親が608人、分担監護する母親が242人、合計850人の母親が残り、アメリカでは単独監護する母親が207人、分担監護する母親が188人、合計395人の母親が残った⁴。
 表1は、両国のサンプルに含まれる母親を示している。両国とも母親の平均年齢は41歳で、その半数には平均して約2人の子どもが世帯にいる。対象となる子どもはウィスコンシン州では11歳から12歳、フィンランドでは平均13歳である⁵。母親の大多数はどちらの国でも高い教育を受けており、パートタイムよりもフルタイムで働いているか、働いていない可能性が高くなる。フィンランドの母親の年間平均収入は約35千ドルであるが、ウィスコンシン州の母親の年間収入は約48千ドルである。この収入の差は、ウィスコンシン州のサンプルは離婚した母親だけで、同棲を解消した母親は含んでおらず。ウィスコンシン州で研究した別離した親全員のセグメントが比較的有利な立場にあるという事実に起因している可能性がある⁶。どちらの国でも母親の年間配偶者収入は約20千ドルで、この平均はパートナーのステータスに関係なく全ての母親に当て嵌まる(配偶者またはパートナーがいない場合は配偶者収入をゼロと見做す)。ウィスコンシン州では母親の60%近くが住宅を所有しているが、フィンランドでは63%である。 どちらの国でも、母親は平均して約8~9年間別離している。

表1 記述統計

³ データ収集は、2020年3月以前は対面面接で実施し、COVID-19パンデミックをきっかけに電話面接に移行した。インタビューの大半(82%)は電話面接で実施した。パンデミック前の対面面接とパンデミック後の電話面接のデータを比較したところ、回答に系統的な違いは見られなかった[査読のため引用者注]。
⁴ フィンランドでは、95人の母親が均等な分担監護(50%)、115人の母親が母親と過ごす時間が長い不均等な分担監護(51~75%)、32人の母親が母親と過ごす時間が短い不均等な分担監護(25~49%)であった。ウィスコンシン州でそれぞれに対応する人数は59人、91人、17人であった。
⁵ 前述のように、ウィスコンシン州では調査対象として末子を選んだが、フィンランドでは調査対象として無作為に選んだため、このような差が生じた。
⁶ アメリカでは、同棲カップルの平均所得は婚姻カップルよりも低い(Carpenter, 2022)。

従属変数

 従属変数は、認識されている困難を示すバイナリ変数として操作され、通常の出費を賄うのがどの程度難しいかを回答者に尋ねる調査項目から作成される。フィンランドの調査では、「世帯収入全体を考えた際に、その収入で支出を賄うことはどの程度困難ですか?」と尋ね、回答者は「⑴非常に難しい、⑵難しい、⑶割と難しい、⑷割と簡単、⑸簡単、⑹非常に簡単」の⑴から⑹のうち、いずれかを選択できた。アメリカの調査では、「過去1年間で、通常月に出費を賄い、全ての請求書の金額を支払うことはどの程度困難でしたか?」と尋ね、回答者は「⑴全くない、⑵少し、⑶どちらかというと、⑷非常に、⑸極めて」から回答できた。「通常の出費」の解釈は回答者に任されており、請求書の金額を期日までに支払うこと、未払い債務を管理できること、家計を遣り繰りできることが含まれる可能性がある。フィンランドとアメリカの両方の測定値は、0が費用を賄うのに困難を伴わないことを示し、1が費用を賄うのが困難であることを示すバイナリ変数に二分化した。バイナリ変数の難易度カテゴリについては、フィンランドのデータでは「非常に難しい」、「難しい」、「割と難しい」、ウィスコンシン州のデータでは「どちらかというと」、「非常に」、「極めて」を組み合わせた。従って、困難度のバイナリ変数は月々の支出を賄うのに少なくともある程度の困難に直面している母親の指標であり、本稿全体で「知覚困難」と呼んでいる。私たちは付録の個々の変数の分布を報告し、この変数を定義する別の方法で感度試験を実行する。

独立変数

 分担監護または対象とする子どもの生活の取決め:関心を寄せた主な変数は生活の取決めであり、上述したように、分担監護と単独監護を区別する。養育費:養育費は、対象とする子どもと対象とする子どもの兄弟姉妹が受け取る養育費の年間額の連続変数として測定し、単位は数千米ドルである。元のフィンランドの養育費金額変数は、対象とする子どもの月額を12倍して年額にし、米ドル購買力平価で換算した金額である(1米ドル = 0.863)。費用分担の範囲:費用分担は、養育費支払いによる支援とは区別し、親が直接子どもに係る費用を分割する方法を表す。この尺度は、値が大きいほど親の間で分担されるコストが大きいことを示すスケールに基づいて作成した。フィンランドとウィスコンシン州の両方のデータでは、過去12か月間で衣服、学校、課外活動、保険、医療費、保育にかかる費用をどのように分担したかを回答者に尋ね、これらの一連の項目にわたる回答を平均化してこの変数を作成する。回答者は、「⑴回答者が全ての費用を支払った」から「⑸もう一方の親が全ての費用を支払った」までの5段階のスケールで、これらの基礎的な項目に回答できた。結果として得られる尺度は、1から5までの値をとる連続変数であり、5はもう一方の親が負担するコストの最大値を示す。

統制変数

 主観的な経済的ウェルビーイングと分担監護モデルにおいて、失業手当を含む母親自身の年間収入、母親のパートナー関係の状況(独身か同棲か既婚か)、パートナーの年間収入を統制する。元のフィンランドの収入変数は月収であり、これを12倍して年間収入にし、米ドル購買力平価換算した(1米ドル = 0.863)。他の共変量には、母親の教育、雇用状況と年齢、母親世帯の未成年者の数、対象とする子どもの年齢、対象とする子どものもう一方の親と母親が離別した後の経過時間、母親が家を所有しているかどうかの指標が含まれる。国際標準教育分類(ISCED)に従って、母親をその最高学歴によって「⑴低学歴」、「⑵中学歴」、「⑶高学歴」の母親に分類した。また、母親を現在の雇用状況に基づいて「⑴フルタイム雇用」、「⑵パートタイム雇用」、「⑶無職またはその他」に分類した。私たちは、別離後の経過時間は勿論のこと、母親の年齢と対象とする子どもの年齢、母親世帯の未成年者の数を考慮するために連続変数を使用した。また、養育費の受給権者でない母親を統制するダミー変数も追加した。

分析フレームワーク

 二分化した困難の尺度を主従属変数として扱うロバスト標準誤差を使用してロジスティック回帰モデルを推定する。私たちは逐次モデリング戦略を使用し、最初に分担監護だけを統制し、次に統制変数を追加し、続いて養育費を追加して、そして費用分担をモデルに組み込んで、それらが分担監護係数にどのように影響を与えるかを明らかにする。全ての回帰分析を、フィンランドとウィスコンシン州のサンプルに対して別々に実行する。 これにより、監護の取決めが経済的困難とどのように関連しているか、またこの関係において養育費や子どもに係る費用分担がどのような役割を果たしているかについて国同士の比較ができる。私たちは、全ての点推定について、平均限界効果を示す。

結果

記述統計の結果

 表2は、対象となる4つの分析変数に関する、単独監護と分担監護における母親の割合の無条件の違いを示している。フィンランドとウィスコンシン州の両方で、分担監護の母親は、単独監護の母親よりも困難を経験する(即ち、経済的ウェルビーイングが低い)可能性が少ない(フィンランドでは50%対62%、ウィスコンシン州では31%対45%、p < 0.01)。また、平均して受取っている養育費の額は、分担監護の母親が単独監護の母親よりも遥かに低い一方、費用分担の程度は、どちらの国で分担監護の母親が単独監護の母親に対し遥かに高く(p < 0.001)、これらは全て、政策および先行文献と一致している。ウィスコンシン州と比較してフィンランドでは全体的に経済的困難の割合が高いことは、フィンランドのサンプルにおける母親の収入が低いことと一致している(表1参照)。

表2 フィンランドとウィスコンシン州における監護の取決め別分析変数の記述統計

多変量解析の結果

 フィンランドとウィスコンシン州における母親の経済的困難と分担監護の多変量モデルの結果を表3と表4に纏めた。各表の経済的困難と分担監護のモデルに、注目する独立変数を順番に追加している。1列目は二変量の結果を示し、その次に統制変数を含むモデル、続いて養育費と費用分担を3列目に追加している。従って、2列目では、私たちの最初の研究課題、即ち、居所の取決めと居所の取決めグループ間の人口統計的差異および経済的差異を考慮した母親の主観的な経済的ウェルビーイングとの関連について取り上げている。3列目では、私たちの2番目と3番目の研究課題、即ち、養育費と費用分担と母親の主観的な経済的ウェルビーイングとの関係、およびこれらが居所の取決めの役割をどの程度緩和するかについて取り上げている。フィンランドの分担監護の母親は、何らかの特性を統制する以前に、経済的困難を経験する可能性が11.6%有意に低い[訳者註:表3⑴の1行目-0.116]ことが分かった(表3)。この優位性は、列⑵において統制変数のベクトルを追加すると、母親自身の収入が分担監護係数の大きさを減らすのに最大の役割を果たし消滅[訳者註:表3の1行目⑴-0.116から⑵-0.0232へ]する(逐次結果は示していない)。モデル内の他の変数には、ほぼ予想どおりの関係がある。パートナーの収入が増加するにつれて経済的困難は減少[訳者註:表3の6行目の符号がマイナス]し、住宅所有者は非所有者に比べて経済的困難が一般的ではなくなる[訳者註:表3の13行目の符号がマイナス]が、一方で世帯に子どもが増えたり、パートナーがいる場合には、経済的困難がより一般的になる[訳者註:表3の15行目と5行目の符号がプラス](どちらも、より多くの人が利用可能なリソースを分け合っていることを示している)。このモデルは、観察可能な社会経済的特徴を統制した後、主観的な経済的ウェルビーイングには監護に関連した差異が残らないことを示している。列⑶において養育費と費用分担を追加しても、分担監護係数には目立った影響はなく[訳者註:表3の1行目⑵-0.0232から⑶0.0281へ]、統計的に有意ではなく、全体を通じて実質的に小さいままである。養育費も母親の知覚困難には有意な影響を与えていない[訳者註:表3⑶の2行目-0.00505]。ただし、係数は予想された方向にあり、大きさにおいて自分自身の収入とパートナーの収入に対する係数に類似[訳者註:表3の4行目と6行目]している。費用分担を増やすこと自体、母親が経済的困難を報告する確率を、スケールの各ポイントで7%ずつ大幅に低下[訳者註:表3⑶の3行目-0.0706]させる。

表3 フィンランドの分担監護における月々の出費を賄う困難のロジット回帰
表4 ウィスコンシン州の分担監護における経済的困難のロジット回帰係数

 フィンランドと同様に、ウィスコンシン州の分担監護の母親は、経済的困難を報告する可能性が平均して14%低い[訳者註:表4⑴の1行目-0.142](表4)。しかし、ウィスコンシン州では、列⑵において自分自身とパートナーの収入を含む個人レベルの統制を追加した後でも、この効果が持続する[訳者註:表4の1行目⑴-0.142から⑵-0.118へ]。フィンランドと同様、母親の収入やパートナーの収入が増加し、住宅を所有していると、経済的困難はあまり一般的ではなくなり[訳者註:表4⑵の4行目と5行目、13行目]、世帯の子どもが増えるほど経済的困難はより一般的になる[訳者註:表4⑵の15行目]。分担監護係数は、社会経済的特性を統制した後でさえ、分担監護により経済的困難が実質的に軽減されるように見えることを示している。最後の列は、養育費と子どもに係る直接的費用における父親の拠出を統制した後、監護の種類に関連する差異が残らない[訳者註:表4⑶の1行目-0.0643]ことを示している。養育費係数自体は有意ではない。ただし、フィンランドと同様に、予想通りの方向にあり、大きさにおいて母親の収入に関する係数に類似している。フィンランドとは対照的に、費用分担は個々に有意ではなかったが、予想される方向にもある。総合すると、この結果は、父親の養育費と子どもに係る費用分担の拠出自体は統計的に有意ではないものの、分担監護の優位性を説明しているようであることを示している⁷。次に、分担監護と経済的困難の関係の細かさを調べるため、分担監護のカテゴリを均等な分担監護と不均等な分担監護に拡張した(表5)。子どもが典型的な月にそれぞれの親と宿泊時間のちょうど50%を過ごすことを均等な分担監護と定義している。表5のパネルAは、フィンランドでは、不均等な分担監護に関する係数が依然として有意ではないものの、モデル全体を通じて経済的困難と負の相関がある一方、表4に見られるように、均等な分担変数が経済的困難に対するに分担監護の効果を推進していることを示している。ウィスコンシン州(パネルB)⁸の結果では、均等な分担監護の母親は、全体を通じて経済的困難を報告する可能性が有意に低く、他の変数を統制する前の単独監護の母親よりも21%低く[訳者註:表5⑴の11行目-0.212]、更に養育費と費用分担を考慮した後の経済的困難を報告する可能性が14%低くなっている[訳者註:表5⑶11行目-0.139]。従って、経済的ウェルビーイングにおける分担監護の優位性は、両国で均等な監護の取決めをしている母親が推進している。

表5 フィンランドとウィスコンシン州の分担監護における経済的困難のロジット回帰係数(監護カテゴリを拡大)

⁷ 示していない結果(要望により入手可能)では、分担監護係数の変化をもたらしている、費用分担の有無が大きく影響しえいることがわかった。
⁸ ウィスコンシン州のサンプルから22人の分担監護の母親を除いたが、これは1年間に子どもと過ごした宿泊日数に関する十分な情報がなく、均等な分担監護と不均等な分担監護に分類できなかったためである。

感度テスト

 得られた成果、関心のある独立変数および代替モデル仕様の定義方法に対する結果の感度をチェックしている(結果を付録の表6に示す)。従属変数の定義に元の6段階尺度と5段階尺度を用いた最小二乗法仕様を使用し、どちらの文脈でも、効果の方向はロジット仕様の場合と同じであるが、推定の精度が異なることがわかっている。具体的には、フィンランドの場合、モデル内で他に何も統制しなかった場合、分担監護の母親が経済的困難を報告する可能性が低く、統制を追加するとこの関連性の大きさが減少し、有意でなくなることがわかった(付録の表6、パネルA)。この仕様でも、子どもに係る費用分担はウェルビーイングと有意に負の相関がある。全体として、結果は主たるモデルと一致している。即ち、分担監護の母親は、経済的困難が少ないと報告している。これは統制変数によって完全に説明できる。養育費は経済的困難と有意な関連性がない。そして、より多い費用分担は、より少ない経済的困難に関連している。ウィスコンシン州では、分担監護変数の係数は、統制変数を追加すると重要性と大きさが減少し、モデルに養育費と費用分担を追加すると小さくなり重要ではなくなる。全体的な結果-経済的困難のベースラインの差は、経済性および人口動態の統制後も持続するが、養育費と費用分担の統制後はもはや明白ではない-は、主たるモデルとほぼ一致している (付録の表6、パネルB)。

考察

 本研究では、別離や離婚をした分担監護の母親の主観的な経済的ウェルビーイングが、単独監護、純収入、およびその他の人口統計的特徴と比較して異なるかどうかを調査した。更に、養育費の受取りと親同士の直接的な子どもに係る費用の分担が、母親の主観的な経済的ウェルビーイングとどのように関連しているかを調査した。最後に、養育費や直接費用の分担という形での父親の拠出が、分担監護と経済的ウェルビーイングとの関係を媒介するかどうかを研究した。私たちの調査結果は、フィンランドとウィスコンシン州(アメリカ)では、分担監護を取決めている母親の経済的ウェルビーイングがより高いことを示唆しており、先行研究(Augustijn, 2022)とは異なり、これは均等な時間分担の取決めと不均等な時間分担の取決めによってもたらされていることが示唆されている。養育費の受取りは、いずれの状況においても、経済的困難と有意な関連性はないが、子どもの費用の分担はいずれの状況においても経済的困難と負の関連性があることを示唆する証拠が幾つか存在する。更に、分担監護と母親の経済的困難の経験との関係は、母親の幾つかの特徴を統制すること、および、この関係が両方の状況で現れるメカニズム、即ち、養育費と子どもの費用を両親の間で分担することによって完全に説明できる。また、私たちの調査結果は、ウィスコンシン州の分担監護は、恐らく分担監護世帯における子どもに係る費用分担が大きいため、離婚後4年以内は収入対貧困率の改善と関連していないことを発見した研究者(著者引用)の調査結果を補完するものである。
 フィンランドとウィスコンシン州では、分担監護の経済的優位性の背後にある潜在的な理由が異なる。分担監護の母親は経済的困難が少ない一方で、収入と人口統計上の特徴を統制した後でも、この関係はフィンランドの母親ではなくウィスコンシン州の母親にのみ成立する。ウィスコンシン州では、養育費の受取りや子どもに係る費用の分担を考慮すると、この関係は重要ではなくなる。フィンランドでは、社会経済的特徴、特に母親自身の収入が、経済的ウェルビーイングにおける分担監護の優位性を説明する上で遥かに大きな役割を果たしている。これは、ウィスコンシン州での分担監護には経済的優位性が存在する可能性があり、様々な監護の取決めにおいて父親が子ども関連の費用を相殺するやり方の全体的な違いに関連していることを示唆している。
 ウィスコンシン州では、主に分担監護の取決めにおける養育費の減額が大きいため、分担監護の経済的優位性はフィンランドに比べて小さいと予想された。この前提が当てはまらない理由として考えられるのは、両国とも養育費の決定がガイドラインから逸脱する可能性があり、そのため政策がそれぞれの国の養育費の支払いにどのような影響を与えるか予測することが困難になっているということである。特にフィンランドでは、養育費の支払いがどのように決定されるかは、分担監護の母親の大部分に影響を与えない可能性がある。なぜならば、親には個人的な取決めをする自由があり、これが分担監護の親の間では一般的であるためである。実際、私たちの結果は、養育費が主観的な経済的ウェルビーイングに直接的な影響を及ぼさないことを、私たちの2番目の予想に反して、どちらの状況においても示している。フィンランドとウィスコンシン州の両方で、養育費は別離後の母親の収入のほんの一部しか占めておらず(著者引用;HakovirtaとJokela, 2019)、そのことからこの結果を説明できる可能性がある。
 最後に、母親は子どもの費用をもう一方の親と分担することで利益を得られることがわかった。フィンランドでは、両親間の費用分担の程度が母親の経済的困難の軽減を左右する。一方、ウィスコンシン州ではこの関係は重要ではなかったが、養育費と費用分担は共に父親の子どもの費用への拠出を説明するものであり、分担監護の優位性を完全に説明し、私たちの3番目の予想を裏付けている。全体として、私たちの調査結果は、フィンランドとウィスコンシン州では母親の経済的ウェルビーイングと父親の子どもの費用への拠出との関係は、この2つの状況における家族への公的支援のレベルの違いにも拘らず全く類似していることを示唆している。

本研究の限界

 しかし、私たちの国のケーススタディの設計には限界がある。なぜなら、国内状況における経済的ウェルビーイングに関連する要因の違いだけを比較できるからである。また、フィンランドとウィスコンシン州の調査では、サンプルのデザインが異なっていたことにも注意を要する-ウィスコンシン州のサンプルは調査実施の少なくとも6年前に離婚した母親で構成されていたが、フィンランドの調査にはそのような制限はなかった。しかし、フィンランド人のサンプルを6年前に別離した母親のみに限定することで、この違いを取り除くことができた。サンプルに制限があるため、本研究では6歳から18歳までの子どもを持つ母親を調査した。同じ結果が年少の子どもを持つ母親にも当て嵌まるかどうかは、今後の研究の余地がある。
 最後に、ウィスコンシン州のサンプルには離婚した母親のみが含まれているのに対し、フィンランドのサンプルには婚姻した母親だけでなく同棲している母親の関係解消も含まれている。これは、フィンランドではあらゆる社会経済的階層で同棲が一般的なためである。多くのカップルは2人の間に第一子が誕生した後に婚姻する傾向にあるが、子どもがいても同棲を通すカップルもいる(JalovaaraとAndersson, 2023)。アメリカでは婚姻しているカップルは同棲しているカップルよりも収入が高い傾向にあるため、このことがウィスコンシン州のサンプルがより経済的に恵まれていることに寄与している可能性がある。フィンランドの母親自身の収入が経済的ウェルビーイングとより強い関連性を有しているという私たちの発見は、所得水準が低い場合は高い場合と比べ母親自身の収入の差が経済的困難に最も重要な影響を与え得るという点で、全体的に母親がより経済的に不利な立場にあるからかもしれない。しかし、ウィスコンシン州とフィンランドの両方で、養育費政策は、関係を解消した婚姻カップルおよび同棲カップルの子どもに同様の方法で対処している。最後に、フィンランドのサンプルとは異なり、ウィスコンシン州のサンプルには離婚した母親のみが含まれており、同棲を解消した母親は含まれていないため、フィンランドのサンプルよりも経済的に優位であることを暗示している。

本研究の結論と意義

 こうした制限にも拘らず、本研究は、子どもの別離後の生活の取決めと、それが母親の経済的ウェルビーイングに影響を与えるメカニズムが、様々な家族政策の状況において母親に同様の経済的ウェルビーイングの結果をもたらす可能性があることを示唆している。しかし、より家族への支援が多く、元パートナー間の依存関係が少ない福祉国家では、別離後の母親の経済的アウトカムはそれほど深刻ではないことがわかっている(例えば、Andreßら, 2006)が、もう一方の親が子どもに係る費用を分担するメカニズムは、状況に関係なく依然として関連している可能性がある。更に、正式な養育費の取決めと、それが別離後の母親の経済的ウェルビーイングに及ぼす影響について研究を行っているが(例えば、Bartfeld, 2000; HakovirtaとJokela, 2019)、私たちは、親が子どもに関連する直接的な費用をどのように分担するかが重要であることを認識している。これは、分担監護家庭を調査する場合に特に重要である。なぜなら、両国とも、分担監護で暮らす親の間では養育費命令を有していることはそれほど一般的ではないからである(Meyerら., 2015; Miettinenら, 2020)。従って、子どもに係る費用の配分はむしろ親に委ねられている。分担監護において何が親の費用分担に影響を与えるかは、研究におけるブラックボックスである。本研究の結果からわかるように、これらの直接費用の分担は、別離後の母親の経済的ウェルビーイングに影響を及ぼす。例えば、親が子どもの直接的な出費を均等に分担するかどうか、あるいは親が子どもをサポートする相対的な能力を考慮するかどうかは、将来の研究において重要な領域である。更に、直接的な費用は分担監護の両親の間で割り当てられるため、父親の別離後の経済的ウェルビーイングにも潜在的な影響がある。これはこの研究の範囲外であるが、将来の研究で調査すべきである。
 この研究には主に2つの意義がある。第一に、母親の経済的課題を軽減する上において、両親で経済的責任を分担することの重要性を強調している。この研究は、分担監護による経済的利益を発見した先行研究を補完しており(Augustijn, 2022)、両親が子育てに積極的に経済的に寄与すれば、分担監護の取決めをしている母親が経験する経済的困難が軽減される可能性があることを示唆している。従って、母親は通常、離婚後や別離後の経済的ウェルビーイングの低下を経験しているため(Mortelmans, 2020)、子どもの世話の分担と密接な関係にある、子どもに係る費用を分担する分担監護の取決めは、別離による経済的な「ショック」を緩和する可能性がある。第二に、この研究結果は政策立案者に対し、分担監護の取決めを結んでいる親が子どもに係る費用をどのように分担するかについて注意を払うよう求めている。その目的は、家計責任に関する公平な配分の促進でなければならない。養育責任の配分に関してだけでなく、子どもに係る費用の配分に関しても均等な家族形態を促進する政策は、(恐らく母親の就業を奨励し、促進することによって)別離後の母親の経済的困難を軽減するのに役立つ可能性がある。これは、フィンランドと比較してウィスコンシン州で観察された結果の違いに例示されるように、子どものいる家庭に対する公的支援が少ない状況では特に顕著である。 関連して、この研究結果は子どもの貧困にとっても重要である。分担監護の取決めの子どもは、主に母親と暮らしている子どもよりも貧困のリスクに晒されることが少なく(BonnetとSolaz, 2023)、それゆえ、これが現れるメカニズムを理解することは子どもの貧困に取り組む上で重要である。

付録

表6 フィンランドとウィスコンシン州の分担監護における困難のOLS回帰係数

資金調達 オープンアクセス資金はトゥルク大学(トゥルク大学中央病院を含む)が提供した。ここで報告した研究は、部分的に、「INVEST研究旗艦センター」、「フィンランド研究評議会」(決定番号338282および345546)、および「ウィスコンシン州児童家族省とウィスコンシン大学マディソン校貧困研究所との間の養育費研究取決め」(MSN244029)の支援を受けた。この記事の著者は内容に対して単独で責任を負う。 著者は、これらの分析にデータを使用したウィスコンシン州児童家族局と労働力開発局に感謝したいと思うが、これらの機関は提示したデータの正確性を保証していない。表明された見解は著者の見解であり、必ずしもスポンサー機関の見解ではない。

データの可用性 フィンランドのデータは社会保険機構(Kela)とトゥルク大学に保存されており、ウィスコンシン州のデータは貧困研究所に保管されている。データにはデータ使用制限と事前承認要件が適用され、個人識別子は含まれない。トゥルク大学の研究者は、社会保険機構との契約に基づいてデータにアクセスできる。データを使用するIRP研究者は、データセキュリティ・トレーニングを完了し、機密保持契約に署名する。データは各研究所の安全なサーバーに保存され、個人のユーザーIDとパスワードを通じてアクセスできる。

宣言

利益相反 著者は、宣言すべき競合する利益はないと報告する。

倫理的承認 Kela の研究倫理委員会は研究プロジェクトの倫理審査を実施し、2019年6月18日の会議で好意的な声明を発表した。
ウィスコンシン大学マディソン最小リスク研究機構審査委員会は、「ウィスコンシン州の親の調査」に関するデータ収集とこのプロジェクトのための管理データの使用を承認した(議定書 2020-1357)。両調査のデータは、インフォームド・コンセントのプロセスを通じて収集された。

オープンアクセス 本記事はクリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンスに基づいてライセンスされており、原本の著者と出典に適切なクレジットを表示し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスへのリンクを提供し、変更が加えられたかどうかを示す限り、あらゆる媒体または形式での使用、共有、翻案、配布、複製が許可されます。本記事の画像またはその他のサードパーティ素材は、素材のクレジットラインに別段の記載がない限り、本記事のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに含まれています。素材が本記事のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに含まれておらず、意図した使用が法的規制で許可されていない場合、または許可されている使用を超えている場合は、著作権所有者から直接許可を得る必要があります。このライセンスのコピーを表示するには、http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/にアクセスしてください。

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[訳者註]逐次ロジスティック回帰モデル sequential logistic regression model
ロジスティック回帰とは、数学を使用して2つのデータ因子間の関係を見つけるデータ分析手法。見出した関係を使用して、一方の因子の値を他方の因子に基づいて予測する。通常、予測の結果の数は有限となる(「はい」や「いいえ」など)。逐次ロジスティック回帰モデルは、順序付き多クラス分類手法の1つであり、ロジスティク回帰モデルを逐次的に適用してサンプルのクラスラベルを予測する。

[訳者註]残余的福祉 residual welfare
R・ティトマスが提案した3つの社会政策類型の1つ。最も消極的な社会政策モデルであり、社会政策が、社会的価値配分のメカニズムとしては、市場と家族のミニマムな補完物というもの。他の2つは、産業的業績達成モデル(industrial achievement-performance model)、制度的再配分モデル(institutional redistribution model)である。

[訳者註]経済的ウェルビーイング Financial Wellbeing
アメリカの消費者金融保護局CFPBによると、経済的ウェルビーイングには4つの要素があるとされている。横軸に「現在」と「将来」という時点による区分、縦軸に「経済的な備え」という守りの要素と「選択の自由」という前向きな要素による区分となっている。「現在」の「経済的な備え」でいうと、月々や日々の家計をコントロールすること、「将来」に向けては、不意に襲い掛かる経済的なショック(たとえば、自分や家族の病気・ケガに伴う入院や収入の途絶など)を吸収する能力があることがキーとなる。一方、「選択の自由」については、「現在」の人生を楽しむための経済的な自由度が確保されていること、「将来」の経済的な目標を達成するための軌道に乗っていると実感できることが挙げられる。この4つが主観的にできていると感じるほど、経済的ウェルビーイングが向上する。

Consumer Financial Bureau.(2017). "Finacial well-being in America".P14(第一生命経済研究所にて翻訳)より転載

[訳者註]連邦準備制度理事会 Board of Governors of the Federal Reserve System
略称BGFRS、FRB。日本の日銀にあたり、金利の引き上げ・引き下げや量的緩和などの金融政策を策定する。12の連邦準備銀行の管理統括機関で、ワシントンに所在。初めは連邦準備局Federal Reserve Boardとよばれていたが、1935年銀行法によって連邦準備制度理事会と改称された。現在の理事会は、大統領が上院の同意を得て任命する7名の理事によって構成され、理事の任期は14年である。

[訳者註]リストワイズ除去法 listwise deletion
解析対象とされる複数の変数のどれか一つでも欠損値を持つケースを計算から除外する方法。

[訳者註]購買力平価 PPP, purchasing power parity
ある国である価格で買える商品が他国ならいくらで買えるかを示す交換レート。例えば、ある商品が日本では200円、アメリカでは2ドルで買えるとすると、1ドル=100円が購買力平価だということになる。

[訳者註]国際標準教育分類 International Standard Classification of Education, ISCED
教育のプロセスと成果に関するデータを収集,分析および比較するために作られた国際的なフレームワーク。ユネスコ(UNESCO)により1976年に開発され,1977年,2011年に改訂された。複雑な各国の教育システムを比較するため,0~8の教育レベルと分野から分類され,幼児教育等をレベル0とし,初等教育,前期中等教育,後期中等教育,中等後教育(非高等教育),短期高等教育,高等教育(学士),高等教育(修士),高等教育(博士)によって構成されている。この分類は,各国の教育システムや状況を反映するため,学校教育だけでなく,ノンフォーマル教育などさまざまな教育制度を対象としている。世界的に生じている高等教育のグローバル化や教育のパフォーマンスを評価する観点から,国際的な議論を踏まえて作られた分類と,比較可能な教育統計に対する需要が高まっている。

[訳者註]ロバスト標準誤差 robust standard errors
White(1980)が提案した推定パラメータの分散の推定の仕方であり、これを用いて計算した標準誤差をロバスト標準誤差、ホワイト標準誤差、不均一分散頑強標準誤差(heteroskedasticity-robust standard error)と呼ぶ。ミクロデータを用いる場合、ほとんどのケースで不均一分散の問題に直面するが、このロバスト標準誤差を用いれば、推定パラメータの標準誤差は不偏に推定できる。従って、ミクロ計量経済学ではほぼ常にこのロバスト標準誤差を計算し、ロバストt統計量を計算することが望ましい。

[訳者註]点推定 point estimates
推計統計学において観測データに基づいて未知量に対する良好な推定(推定量)と見なせる値(統計量)を計算する手法とその結果を言う。 平均値・中央値・最頻値などが用いられる。

[訳者註]限界効果 marginal effect
他の変数を一定(通常は平均値で固定)とした場合、注目する独立変数の値が1単位増加した場合の従属変数に与える効果のこと。

[訳者註]最小二乗法 Ordinary Least Squares, OLS
回帰分析などで用いられる計算方法で、データの組みが与えられたとき、誤差の二乗の和を最小にすることで最も確からしい関係式を求める計算方法。

[訳者註]確率ウエイト pweight, probability weights
母集団からの抽出確率を反映するウエイト。1985年、StataCorp社により開発された研究者向け統計分析ソフトウェアStataには、4つのウエイトオプション(fweight: frequency weights, aweight: analytic weights, pweight: probability weights, iweight: importance weights)が用意されている。

(了)

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