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【インタビュー】 ICT導入で描く新潟市の未来-浦野正美・新潟市医師会長に聞く

新潟のヘルスケアの第一線でご活躍されている方々に、過去の歩みや原点、そして、現在の取り組みや未来への想いを伺うインタビュー企画。

今回は、新潟市医師会長・浦野正美氏にお話を伺いました。医師を目指したきっかけやこれまでの歩み、また、現在、新潟市医師会が力をいれてるICT化に向けた取り組み等から “新潟の医療課題解決” のヒントを探ります。

■ 浦野正美(うらの・まさみ)氏 /  新潟市医師会長
長野県松本市出身。1982年新潟大学医学部卒業後、新潟大学耳鼻咽喉科学教室に入室。近隣県で臨床医として勤務後、1991年新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室の文部教官(助手、非常勤講師)として勤務。1994年医学博士号取得後、1995年より新潟県立中央病院耳鼻咽喉科医長、1999年済生会新潟第二病院の耳鼻咽喉科部長を経て、2002年浦野耳鼻咽喉科医院を開設。2009年より新潟市医師会の役員として従事し、2020年 会長に就任。

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まずは、現在の活動内容に先立って、これまでの医師としての歩みついて伺います。

”人類”への興味から医学の道へ

ーー浦野先生が医師を目指されたきっかけを教えてください。

私は昔から医学部に強いこだわりを持っていたわけではなく、 ”” というものに興味がありました。人について学ぶには、文学・哲学・科学・医学などさまざまな分野があります。その中でも特に、医学というのが科学的に人類を知ることができて面白いかなと思いました。

医学の道への第一歩は、縁あって新潟の地にきました。最初はいろんな不安もありましたが、住んでみると本当に良いところで、気づいたら大学時代からずっと住み続けています。

耳鼻咽喉科を選んだ理由

ーー耳鼻科医として歩むことを決めたきっかけや原体験はなんですか?

医学部5年生の時に、ある恩師と出会いました。

私は学生時代、整形外科医や脳外科医に興味を持つ時期がありました。しかし、様々なことを学ぶ中で、耳鼻科・眼科・泌尿器科などのマイナー外科に興味を持つようになります。

私が当時所属していた弓道部に、たまたま耳鼻咽喉科の教授が顧問として就任してこられました。その教授は、私に耳鼻咽喉科の魅力をたくさん教えてくれます。教授の話を聞く中で、私は耳鼻咽喉科にどんどんと興味を持つようになりました。そして、メスが握れて幅広い疾患が診れるといった所を魅力に感じ、耳鼻咽喉科に進むことを決意しました。

同級生の中で耳鼻咽喉科を選択したのは、私を含めて学内に二人しかいませんでした。もう一人の方は、代々耳鼻科医の家系だったため、私のように全然関係のないところから耳鼻科医を目指すのは珍しかったと思います。「なんでお前は耳鼻科に来たんだ」と、当時はよく言われたものです。

耳鼻科医としての歩

ーー耳鼻科医として働き始めてからは、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

卒後12年間は、臨床医として新潟県内や近隣県など多くの地で働きました。それは、秋田、福島など多岐にわたり、まさに諸国漫遊の旅といった感覚です。多くの地で経験が積めたことは、自分自身にとって非常に大きな学びとなりました。

その後は新潟大学に戻り、第三解剖学教室というところで電子顕微鏡の研究をしました。

医学博士号取得後は、再び新潟県内のいくつかの病院で臨床医として働きます。上越にある新潟県立中央病院では、ちょうど移転の時期と重なり、耳鼻咽喉科の医長として立ち上げに携わりました。

そして、2002年 浦野耳鼻咽喉科医院を開設します。

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2009年から新潟市医師会に役員として従事、現在は会長を務める浦野先生に、新潟市医師会における現在そしてこれからの活動内容について伺います。

ICT化と多職種連携

ーー新潟市医師会では、医療資源を有効活用するための「医療のICT化と多職種連携事業」や「にいがた新世代ヘルスケア情報基盤プロジェクト」に近年力を入れていると伺いました。具体的な事業内容についてお聞かせください。

令和2年度から、ICT化の推進に力を入れています。在宅医療の分野では、地域医療多職種ネットワークである「SWANネット」を今後さらに進化させたいと思っています。介護分野のみならず救急医療や医療的ケアを必要とする多くの市民に活用できるよう、発展させたいです。

SWANネットは、地域の病院や診療所、訪問看護ステーション、薬局、介護事業所等が患者の情報を共有することができる地域包括ケアに対応したヘルスケア情報共有ツール。施設や職種を問わず、患者に関わるすべての医療者・介護者がお互いに情報を共有し、コミュニケーションを可能にすることで、顔の見える地域包括ケアサポートを実現する。


現在新潟市では、約300施設がSWANネットに登録しています。しかし、新潟市は人口が多く面積が広いこともあり、普及には時間がかかっている状況です。

普及しづらい原因には、多職種の方々がパソコンの操作に慣れないことや、患者さんの個人情報の管理の難しさといったことも挙げられます。今後はそういった面も改善し、多くの市民と関係者が使いやすいシステムにしようと取り組んでいます。スマホアプリのような感覚で、気軽に安全に使えるようになれば、普及率も上がると考えています。

新潟県内では同様の取り組みとして、佐渡市の『ひまわりネット』があります。佐渡市では順調に普及が進んでいるようなので、新潟市も力を入れていきたいと思っています。


ーー SWANネットの加入率の目標や、今後の施策はどのような形で進めていかれるのでしょうか。

SWANネットは新潟市の半数以上の市民が登録し、そして多くの医療機関がそのシステムに参加することで有効なシステムになると言われています。しかし現状は、市民の登録は10%に満たない状況です。

システムの普及を進めるには、マイナンバーカードの普及が鍵を握ると考えます。新潟市は、マイナンバーカードの登録が2割程度しか進んでいません。ですが、マイナンバーカードを持つことによって自分の医療情報にもアクセスできるようになり、さらにはその情報を必要に応じて関係者で共有できるようになります。

いずれは、健康診断の情報が医療と結びつくことも望まれます。ですので、まずはマイナンバーカードの普及を進めることが重要だと考えます。

にいがた新世代ヘルスケア情報基盤プロジェク

ーー医療のICT化と多職種連携に力を入れられている新潟市医師会ですが、現在、新潟県が進めている「にいがた新世代ヘルスケア情報基盤プロジェクト」にはどのように関わられているのか教えてください。

全国でも特に医療資源が乏しい、医師の充足率が低いと言われている新潟県にとって、医療を必要とする人が必要な時に検査・医療が受けられるような仕組みづくりは必要不可欠といえます。

新潟市医師会では、現在、がん検診や特定健診データなどを統合しデータベース化しようと動いています。いずれは、学校健診も入れたいと考えています。

母子手帳から介護認定まで、いわゆる、ゆりかごから墓場までという言葉の通り全ての年代が繋がり、その人のパーソナルヘルスレコードを把握できるようになることを目指しています。

多くの人の知恵を集めて進めていますが、そこにはもちろん市民の力も必要になります。

花角知事の掲げる「健康立県」を目指し、地域住民とともに医療介護従事者が力を合わせてICT化に大きく踏み出すことが目標です。


withコロナの世界

ーー医療のICT化に力を入れる一方で、昨今、世間を騒がせている感染症への対策も医師会の重要な役割の一つだと伺っています。新型コロナウイルス感染症が拡大する最中に会長に就任された浦野先生ですが、日々刻々と変化する状況の中でどのような未来を描いているのでしょうか。

さまざまな事業を進める中で、新型コロナウイルス感染症の対策にはかなり注力しています。検査体制の整備やワクチンの普及、自宅療養や宿泊療養のサポート。それらが途絶えることなく円滑に進む体制を、自治体と共に強化しています。まずは感染対策を徹底して行い、ある程度みんなで免疫をつけ、そして経済を回すことで新潟県を支えていきたいと思っています。

現在日本中で、スマートシティといってデジタル化を中心としたまちづくりが進められています。新潟市もデジタル化をうまく取り入れることで、市民が安心して医療にアクセスできるような環境を整えていきたいと思っています。

花角知事のいうような「住んでよし・訪れてよし」といった新潟県の活性化につながると信じています。

メッセージ

ーー最後に、新潟のヘルスケアを盛り上げたいと熱い思いを持って活動しているにいがたヘルスケアアカデミー生に向けてメッセージをお願いします。

新潟は、食も水もお魚もお酒も恵まれていて、とても住みやすい街だと思います。

そこに充実した医療が加わることによって、日本でも屈指の魅力的な街になることでしょう。みなさんには、新潟の土地と人を愛し、一生懸命頑張っていただきたいと思います。

みなさんの取り組みを、応援しています。


ーー浦野先生、最後は新潟愛が滲み出る心温まるメッセージをありがとうございました!今回は、普段なかなか聞くことのできない新潟市医師会の取り組みや浦野先生が描く未来についてたくさんお聞かせていただきました。これからも新潟県のヘルスケアのリーダーとしてご活躍されることを、心より祈念しております!

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インタビューの様子

本記事では、新潟市医師会長・浦野正美氏のこれまでの歩みや現在取り組まれている事、そして、アカデミー生へ向けた熱いメッセージをお伝えしました。

次回のインタビュー記事で、またお会いしましょう!


 浦野正美氏・プロフィール

新潟市医師会長
長野県松本市出身。1982年新潟大学医学部卒業後、新潟大学鼻咽喉科学教室に入室。近隣県で臨床医として勤務後、1991年新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室の文部教官(助手、非常勤講師)として勤務。1994年医学博士号取得後、1995年より新潟県立中央病院耳鼻咽喉科医長、1999年済生会新潟第二病院の耳鼻咽喉科部長を経て、2002年浦野耳鼻咽喉科医院を開設。2009年より新潟市医師会の役員として従事し、2020年 会長に就任。


にいがたヘルスケアアカデミー
主催:ヘルスケアICT立県実現プロジェクト
運営:株式会社BSNアイネット・ハイズ株式会社
後援:新潟県
Twitter:アカデミーの活動や関連情報、新潟のヘルスケア情報や潜在的な課題などを発信しています。

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