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【後編】AIが将来の車両の価値を予測する!?「AI残価予測モデル」製作者インタビュー

 株式会社IDOM CaaS Technology(ICT)が独自に開発したAIによる車両の残価予測モデルには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
 
インタビュー前編に引き続き、この画期的なサービスについて製作チームにインタビューを行う本企画。

(左)株式会社IDOM CaaS Technology(ICT)で在庫管理・プライシングを担当している増子和希さん
(中)セカンドサイトアナリティカ株式会社の五月女貴平さん
(右)株式会社IDOM CaaS Technology(ICT)でデータ戦略を担当されている中津川賢人さん

今回、お話を伺うのは、機械学習のプロフェッショナルとしてプロジェクトに参画されたIDOM CaaS Technologyでデータ戦略を担当されている中津川賢人さんです。
 

株式会社IDOM CaaS Technology(ICT)でデータ戦略を担当する中津川賢人さん


◆より安くサービスの提供が可能に
 
――AIによる残価予測モデルは、利用者にどのような恩恵をもたらすのでしょうか?
 
将来の車両の価格をより正確に予測することで、弊社としても利用者さまに安く車両を提供することが可能になりました。
 
現在、車業界は購入による所有に偏っています。そんななか弊社は、人と車とのマッチングを重視し、カーリースやレンタカー、カーシェアなど、「所有から利用」、「車産業からドライバー産業」というテーマで新しいクルマと人の付き合い方を提案しています。

リースやレンタカーは事業者から見るとクルマを買う・運用する・売るの3つのフェーズに分かれます。多くのクルマでは、買う時よりも売る時のほうが価格が下がるので、その差額を上回るように世間一般のリースやレンタカーの料金が設定されています。普通は最後に販売する時の価格はクルマを貸し出すタイミングではわからないので、リースやレンタカーの価格を高めに設定して損が出ないようにしています。しかし、販売する時の車両の価値が高いことが予め予測できれば、その分、お客様にお願いする支払い額を小さくすることができます。

 ローンだけでなく、さまざまなサービスの価格を抑えることができる。これは提供者側、利用者様側双方にとってメリットではないでしょうか。

 ――AI残価予測モデルの製作に携わるにあたって、最初はどのようなお気持ちでしたか?

車業界とはまったく違う業界にいたため、最初は不安もありました。が、AIを用いた残価予測に取り組んでいる事例はほかになく、大変チャレンジングな領域だと思いました。
 
そもそも、これまで一般的に使われていた車両の残価予測は、かなり保守的です。

なぜなら、最終的にその残価の予測により企業の収益が大きく変わるからです。そのため予測と実際の価格には大きな乖離がありました。

たとえ査定上はゼロ円と評価された車両であっても、まだまだ現役で走れるというケースはたくさんありましたし、なによりも保守的すぎる残価設定は、リースやレンタカー、残価設定ローンなどのサービスの月額費用を釣り上げることに繋がり、利用者様への負担が大きくなってしまいます。
 
 そこでAIを用いることによってより正確な予測をすることにより、サービスの透明性が高まり、お客様への負担が少なくなります。

◆車両価格を理由に選ばれることが多くなった
 
――実際に利用者様からの声は耳にしましたか?
 


表に見せている技術ではないので、この技術に対する直接的なお声をいただくことはありませんが、リースやレンタカーを検討いただいた際に、他のサービスとも比較検討した上で、価格を理由に弊社をお選びいただくケースはかなり多いと聞いています。
 
それはAIによって価格を安く抑えられる仕組みがあることもひとつの要因なのではないでしょうか。
 
――AIを開発する際に、どのような困難がありましたか?
 
中古車相場に影響しうる要素が非常に多く大変でした。

そんな中、重要なポイントとなったのが長く査定を続けてきたICTの査定担当者からのフィードバックでした。長年の経験によって培われた査定のノウハウはやはり偉大で、この要素を入れた方が良い、というアドバイスに従うことで精度が向上したり、より現実的な予測ができるようになったりしました。

現在はまだAIが高い精度を出せない車種もありますので、AIと人間との二段構えで査定を行うのがベストだと考えています。
 
――今後、AIのクオリティを上げるために行っていることはありますか?
 
ビジネスとして新しい枠組みを作り、取引を重ねる中で学習データを得て、それをベースに将来の予測をする。

これがAIモデルを作るうえでの基本的な流れです。とにかくサービスを続けてデータを蓄積することが、なによりも精度の向上に繋がります。
 
そのため、現在はより多くの人にサービスを利用していただけるよう、実直に業務を進めていくのみだと思っています。
 
◆今後はSNSのデータを活用する可能性も

――素人考えで恐縮ですが、学習データにSNSを活用するなども考えられるでしょうか?
 
それも十分考えられます。

中古車の相場を形成する要素はやはり需要と供給なので、SNSは、その需要を捉えるための1つの指標として有効でしょう。今後、SNSのテキストデータをマイニングしてデータとして組み込んでいくことも、選択肢のひとつですね。
 
――将来的にはどのような展望を思い描いていますか?
 


現在はガソリン車やハイブリッド車が中心の予測モデルですが、今後、普及するであろうEV車にも対応できるようにしていきたいと思っています。

EV車、またはバッテリーの価格を、将来価格も含めて予測できるモデルの構築にトライしているところです。

EVメーカーはどんどん日本に参入してきているので、各種パートナーシップを含めて協業しながら、データを一緒に貯めていけるような構造作りに邁進しています。
 
また、現在は日本のオークションで売却される価格をゴールに設定していますが、市場がグローバル化していく中で、海外にも中古車を展開していくことまで見据えたい。国によって人気の車種は違いますし、車は規制の対象になりやすい商材なので政治的な要素も加味しなければなりません。

そうなると、出口価格は現在とはまったく異なる価格曲線を描くはず。難しいですが、将来的にチャレンジできればと胸を膨らませています。
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