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ワンオペでハイブリッド授業がうまくいってしまいました

舌の根も乾かぬうちに

各地で休校や分散登校といった措置が実施される中、本校は時差登校だけで乗り切ろうとしています。しかし、そうは言っても全員が登校できるとは限りません。そうなると、所謂、学校での授業と家庭への配信のハイブリッド授業を行わざるを得ません。

前のエントリーで「ワンオペで学習目標の達成を目指すような無理をすることないですよ」というようなことを書きました。ええ、ええ、書きましたとも。ところが舌の根も乾かぬうちにワンオペでハイブリッド授業がうまくいってしまいました。

まあ、確かに「どうせハイブリッド授業やるなら、ワンオペで学習目標の達成まで欲張るにはどうすればいいか」も明らかにしておかないとな、とは思っていたのですが、それにしてもこの変わり身の早さ。我ながら呆れます。

私のクラスでは今日、2人お休みがいました。どちらも家庭から授業に参加するのは可能とのこと。この2人と教室で受けている32人の児童とのハイブリッド授業の顛末をどうぞ。

機材等の準備

ワンオペですからなるべく簡単でないとやっていられません。ざっくりこんな感じです。

ノートPC(Microsoft Surface Book3) 1台
スピーカーフォン(Jabra link 370) 1台

のみ!ただし、教室にはワイヤレスディスプレイアダプター付きの大型ディスプレイがあります。また、児童はタブレットに加えてヘッドセットを持っています。

使ったアプリはこの4種。

Teams(オンライン会議)
PowerPoint(教師のスライド提示)
Word(児童のメモ)
学習者用デジタル教科書

アプリは普段、使っているものですし、機材も2つだけですから、ここまではそれほどの苦労はありません。(本校はSARTRAS授業目的公衆送信補償金制度に加入しています。)

授業の実際

紹介する授業は国語「対話の練習 いちばん大事なものは」(6年・光村図書)です。自分が大事にしているものを話し、それについての意見をもらって自分の考えを更新していくような話し合い活動を行う単元です。

Teams会議を起ち上げ、家庭からアクセスする児童が入っていることを確認したら、最初に教師からレクチャー。この時はPowerPointのスライドを大型ディスプレイに映しつつ、Teamsで画面共有して説明します。ちょっとややこしい対話の課題なので、順序をスライドで説明しました。

スクリーンショット (257)

板書? 板書はダメです。家庭から見ても何が書いてあるか読めるくらい鮮明に黒板を映すためには、それなりのカメラが必要になります。それなりのカメラを用意して、あれを用意して、これを繋いで、となるとワンオペでは難しいでしょうね。学習目標の達成まで考えるなら板書は捨てましょう。(まあ私はハイブリッド授業でなくても板書は捨てていますが。)

このスライドは、教室では大型ディスプレイに表示しっぱなし、Teams会議では画面共有しっぱなしにしておいて、児童が活動に迷わないようにします。

スライド2

その後は話し合い活動。教室では1m以上の距離を空けて3人組で話し合います。家庭の2人は、教室の2人と4人組を作り、話し合います。

スライド1

ちょっと聞いてみましたが、教師の同じ説明を同じクオリティで聞いていたので、話し合いはスムーズに進んでいました。

スライド4

児童側の画面。画面共有された手順に従って話し合いを進めています。右側に起ち上げたWordに話し合いの内容をメモしています。

スクリーンショット (256)

授業後のふり返りはTeamsの課題機能を使って収集。これが読んでいて驚いたのですが...ハイブリッドになった4人グループ、名前を隠して読んだら、どれが学校にいた児童のもので、どれが家庭にいた児童のものか、まるでわからないです。それくらい差がありませんでした。

ということで、ワンオペのハイブリッド授業でしたが、教室で展開するのとそれほどの変わりなく行うことができました。

「ワンオペでハイブリッド」は現実的か?

「だったらワンオペでガンガン、ハイブリッド授業やればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、話はそれほど簡単ではありません。

まず、授業者はオンラインセミナー等の経験が豊富にないと難しいでしょう。手前味噌ですが、私はかなり場数を踏んでいます。何かトラブルがあっても、どうリカバリーするかだいたい頭に入っているつもりです。それでも「大型ディスプレイに表示させながら、オンラインでも画面共有する」というのは、あまり経験がなかったので、何度か忘れそうになりました。出来る限り慣れておくこと、練習することは必須でしょう。

また、先にも書きましたが、板書は捨てなければなりません。それ大丈夫でしょうか。しかし、そんなことより何より授業デザインがハイブリッドに耐えられるものになっているでしょうか。

今時、こんな授業をしている人はいないかもしれませんが、「先生がべらべらと話し黒板に細かい字でビッシリと書いていく。児童はそれを聞きながら必死に写す。」みたいな授業は、まずダメです。

それから、「先生が何人かの児童の発言を元に考えをまとめあげていく」タイプの授業も正直、難しいでしょう。その「何人かの児童の発言」をワンオペで拾うことは無理です。「誰が何と言っているのか見えなかったし聞こえなかったけれど、どうやらそれを元に授業が進んでいるようだ」というような映像を前にして、児童の学習が成立しないのは自明です。

もしハイブリッド型でそうした授業を行いたいのなら、教室にいる児童もオンライン会議に入らないと難しいでしょう。教室にいる児童も家庭にいる児童も全員、発言の機会が保証されている環境でないと、そうした授業は無理です。もっともそうなると、ハイブリッドなのか、ただのオンライン授業なのかよくわからないことになりますが。そして、これもまた相当の慣れを必要とするでしょう。

「課題の提示→個人またはグループで共同作業や話し合い→まとめ・振り返り」という流れなら、ワンオペでも特段の工夫をすることなく実現できるのではないでしょうか。私のクラスの場合は、そういう授業になることが多いので、特に抵抗なくできていたように思います。

等々考えると、「ワンオペでハイブリッド」は現実的か?という問いの答えは「授業デザインをハイブリッドに適した形にアレンジできて、諸々の操作等に慣れていれば十分、現実的」、逆に言えば「従来の授業デザインのまま、諸々の操作に不慣れな人にとっては非現実的」となるのではないでしょうか。

それにしても「慣れていないから無理」という声が聞こえてくるのは悲しいことです。だって昨年の休校から1年以上の準備期間があったはずなのですから。「慣れることができなかった」理由が様々あることは私も承知していますが、理由が様々あること自体が悲しいことだな、と感じずにはいられません。

でも、結局、大切なのは

ハイブリッドの授業を終え休み時間になった時、私は別の先生に呼ばれて教室の外で話していました。その間、オンライン会議は続いたまま。どうなったと思います?

教室の子供たちがスピーカーフォンの周りに集まってきて、家庭にいる子とおしゃべりを始めました。楽しそうに。とても明るく。

その様子を廊下から見ながら改めて思いました。結局、大切なのは「学習目標の達成」なんかじゃなくて、「学校に行きたくても行けない子」や「友達と会えなくて残念に思っている子」へのケアなのではないかな、と。

そのためのオンライン会議ならワンオペで十分いけます。ハイブリッドだ授業だ学習目標だ何だと難しいことを言わないで、とりあえず繋いでみませんか?

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