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コロナ、休校、タブレット(4)オンライン・ディベート

「休校になって、子どもたちにタブレットを持ち帰らせたのだから、あれをやりたい」と思ったことはいくつかあったのですが、中でも大きかったのがオンラインディベートでした。実際にやってみた顛末と、そこから見えてきたことを書いておきたいと思います。

進め方

(1) Teams上で参加者を募り、オンラインあみだくじでチーム分け。
(2) Teamsに各チームのチャットグループを作り、議論開始。
(3) 16日(月)「はじめの主張」をFlipgridに送らせる。
(4) 17日(火)は質問タイム。朝から16時までの間、相手チームに質問のある人は、質問をFlipgridで撮影して送る。相手からの質問に対して答えたい場合は、ムービーによる返信で答える。
(5) 17日(火)16時からZoomで生ディベート。質問タイムを10分ずつ取った後に作戦タイム(Teamsのチャット)を15分。最後にZoomに戻って「おわりの主張」を述べて終了。
(6) 生ディベートを録画したものはオンライン(Vimeo)で見られるようにしておく。
(7) 18日(水)は丸一日かけて採点タイム。Flipgridにアップされたものや生ディベートのムービーを見てどちらの勝ちかを考えてFormsで投票。
(8) 18日(水)夕方に結果発表。

Teams × Flipgrid × Zoom × Vimeo × Forms

この進め方を見て、こう思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「なんでそんなに面倒くさいことやるの?Zoomで1時間とれば済むじゃない?」

その通りなのですが、休校期間中だというのに子どもたちが割と忙しいのです。休校になって2週間が経った頃で子どもたちもかなりストレスが溜まっている頃でした。それを見かねて保護者の方もかなり工夫されたようで、安全なところを探して連れ出すことがこの時期、多くなっていたようです。

「みんなが一斉に集まれないのか。じゃあディベートはできないかなぁ。」

最初はそう思ったのですが、それではオンラインでやっている意味がありません。せっかく時間や場所の制約なくやれるのですから、その環境を活かさない手はない。そこで考えたのがTeamsとFlipgridとZoomを組み合わせることでした。

まずTeams。私がしたのはグループを作ることだけ。あとは本番まで子どもたちに任せっきりだったのですが、非常に使い慣れている彼らは、まずはTeams上でアイディア出しを行っていました。ところがテキストベースのやり取りだとだんだん思考と会話が追いつかなくなっていきます。すると子どもたちから、

「こっちのチームだけでオンライン会議やりたいんだけど、設定してもらえませんか?」

というリクエストが来ました。もちろんOK。早速、Zoomで会議を設定しました。その時、私はちょうど車で出先にいたのですが、駐車場で会議をスタートさせて、スマホの音声をBluetoothでカーステレオに繋ぎ、運転しながら小学生の議論を聞いていました。これはなかなかに面白かったです。しかし、ふと考えると、こんなことができる時代になっていたのですね。

TeamsとZoomで相談ができたところで「はじめの主張」をFlipgridに投稿させます。Flipgridは動画を投稿してクラス内で共有するものです。ディベートは、相手の「はじめの主張」を聞いてどんな質問をするか、というところが肝。だったら、Zoomでライブで行うよりも、Flipgridでやらせれば「はじめの主張」を何度も聞き直せて、その後の相談もしやすいだろうという読みもありました。

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その「質問→返答」もFlipgridでやらせてみました。これは“裏”が面白かったです。どちらかのチームが質問をFlipgridにあげると、もう一方のチームのTeamsが突然、騒がしくなります。

「ねえ、こんな質問来たよ、どうする?」
「それってさっき、誰かTeamsに書いていなかったっけ?」
「書いた。『○○は△△だから関係ないと思います』でいいんじゃない?」
「それでいこう!誰がFlipgridにコメント動画送る?」

そう、Flipgridは動画に対して動画で返信ができます。その機能を使ってディベートをやらせてみたわけです。これは、なかなか良かったのではないかと思います。ライブで行うディベートだと瞬発力が要求されるわけですが、FlipgridとTeamsを組み合わせて使うと「議論して答えを導き出す」力が要求されます。これはこれで、かなり高度な情報活用能力と言えるのではないでしょうか。

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このFlipgridディベートを日中、続けた後、16時からいよいよZoomでライブのディベートを行いました。質問タイムを10分ずつ取った後に作戦タイム(Teamsのチャット)を15分。最後にZoomに戻って「おわりの主張」を述べて終了、という流れです。

Zoomのライブディベートはけっこういけました。子どもたちは、普段、教室で行っているのと同じように発言が出来ていたように思います。ただ、見ていた子が後で指摘してくれたのですが、名前を入力する時に「賛成派鈴木」のようにするとか、どちらのチームかが明らかになるような工夫をすれば良かったですね。教室だときれいに2チームに分かれますが、Zoom だとそうはいきませんから。

さて、ディベートの本番が終わると私はもう一仕事。Zoomで録画しておいたムービーをVimeoにアップロードします。これをTeamsに流して、ディベートをライブで見ていなかった子どもも見られるようにするのです。採点者役の子どもたちは、Flipgridでの議論、Zoomでの議論、両方を見て、どちらの勝ちかを判断します。これにはそれなりに時間がかかると思われたので、採点の締切=Formsで用意したオンラインフォームへの回答期限は翌日の夕方としました。

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児童のふり返り

子どもたちに今回のディベートをふり返ってもらいました。いくつか紹介します。

「一つのところに集まることができなくても、これだけビデオを使って話し合いができるんだなと思った。」
「Flipgridでやるときのほうの利点(相手チームに話が聞かれない、とか)がうまく使えていたと思った。」
「ディベート中に話し合いたいときにわざわざチャットで言わなければいけないのは、正直、面倒くさいと思いました。でも、会えない時は、この方法でディベートするのも、いい方法だなぁ~と思いました。」
「やっぱ学校でやるよりかはやりにくい。でも、なんかすごい先進的な感じする 今の在宅勤務の会社とか、こうやってるのかな…」
「私は、Zoomのアプリがすごくいいなーと思っています。なぜなら、参加しない人でもそこにいながらディベートを聞けるのがいいなーと思いました。また、最初の主張をFlipgridで行うことで、効率よくすすめられるなーと思いました。」

強引にまとめれば「教室でやる方がいいけれど、オンラインでもけっこういけるね」といったところでしょうか。

もしも回を重ねることができたら、だんだんとこなれてきて教室で行うよりもスムーズにディベートできるようになったかもしれません。なにしろ、Teams と Flipgrid と Zoom と Vimeo と Forms を組み合わせた学習なんてもちろんやったことがなかったわけですが、子どもたちは実に平然と使いこなしていました。また、「チャットじゃまどろっこしいからZoomしない?」というように考えられるのは、やりたいこととメディア特性を正しく組み合わせられているということになるでしょう。オンライン・ディベート、けっこういけます。

ポスト・コロナ社会と教師の仕事

畏れ多くも恩師、故沼野一男先生の名著『情報化社会と教師の仕事』になぞらえてみました...。

今回のオンライン・ディベート、なかなか面白かったのですが、考えさせられる部分も多くあります。いくつかあげてみます。

オンラインの特性を活かした授業デザイン力

「自分のペースで、自分のやりたいことを、みんなと繋がりながらやる」ということをコンセプトとして休校期間中の様々な取り組みを考えましたが、時間や場所の制約が取り払われ、教室とは別種のコミュニケーションを取る環境でどういった授業デザインをすればいいのかは、なかなか難しい問題です。私は Teams × Flipgrid × Zoom × Vimeo × Forms という「使えるものは全部使う」作戦でいきましたが、これが正解というわけでもないでしょう。選択肢がたくさんあるが故に、目的に合った授業デザインを行うことはそれほど簡単ではありません。研究が必要な分野だと思います。

求められる情報処理能力

Flipgridのやり取り、Zoomの生ディベート、それらの裏で動くTeamsのチャット、Formsで送られてくる採点結果とふり返り。学校で行うディベートより、教師が手にする情報量は破格に多かったと言えます。これを全て追うのはなかなか大変でした。特にTeamsのチャットを全て追いかけるのはほぼ不可能です。

考えてみたら、教室ではこんなに大量の情報を手にしていなくても授業は成立していました。ところがオンラインだと「教室では見えなかったところまで見えてしまう」ことで、成立するかしないかを考える間もなく大量の情報の渦の中に飛び込んでいってしまいがちです。教師に必要なのは、「大量の情報をさばく」という意味での情報処理能力なのか、それとも「ある程度の情報は受け取らないことを選択する」という意味での情報処理能力なのか。これも我々に突きつけられている課題と言えるでしょう。

オンラインで良好な人間関係の学級を構築できるか

担任を務めた私が書くのもなんですが、このクラスはなかなかいいクラスでした。人間関係も落ち着いていて、男女間でのコミュニケーションも高学年にしては取れていた方だと思います。担任も、少々バカにされていたきらいはありますが、決定的に信頼を欠いていたわけではなかったと思います。

何が言いたいかと言うと、今回のオンライン・ディベートは成功するための地均しが出来ていたのです。さて、その地均しをオンラインで行うことは可能でしょうか?

正直、わかりません。なかなか厳しいような気はしますが、でも「絶対、無理!」とも言い切れないようにも感じています。例えばFacebook。一度も会ったことがない人でも、投稿を見ているうちに何となくその人となりがわかってきて、直接お会いした時にはずっと前からの友達のように話せた、というようなことはあり得ると思います。であれば、オンラインで地均しから始めることも不可能ではないのかもしれません。

オンライン・ディベートは私に多くの学びと課題を与えてくれました。「ポストコロナ社会と教師の仕事」について、継続して考えていきたいと思います。

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東京学芸大学附属小金井小学校で、ICTを活用してインクルーシブ教育を実現することを目指した「ICT×インクルーシブ教育」を進めています。
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