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初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議

「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議」が始まりました。非有識者のくせに、私もこの会議のメンバーに名を連ねています。

https://www.mext.go.jp/content/20240725-mxt_jogai01-000037149_11.pdf からスクショ

ところで、メディアは「文部科学省が生成AIガイドライン改訂に向けて動き出した」という論調で報道しています。

しかし、実はこの会議の設置要綱の「背景・趣旨」にはこんなことが書いてあります。

生成 AI の登場に伴い様々なメリット・懸念が指摘される中、文部科学省では令和 5 年 7 月に「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」を策定・公表した。その後も、マルチモーダル化や RAG など生成 AI の技術革新やそれらを活用したサービス開発・社会実装が飛躍的なスピードで進展している。
そのような社会的な背景・技術的な進展を踏まえ、初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関する具体的な方向性等について意見交換・検討を行うため、「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関する検討会議」(以下「検討会議」という。)を設置する。

文部科学省「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関する検討会議 設置要綱」
令和6年7月17日

目的は「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関する具体的な方向性等について意見交換・検討を行う」なのですね。もちろん、それを形にしたものとしてのガイドラインの改訂はこの会議の大きなミッションではありますが、それだけに留まるものではないだろうと私は捉えています。ご承知の通り、生成AIが教育に与える影響には極めて大きいものがあるからです。

例えば先日、某公立小の生成AIを活用した研究授業(国語)を参観しました。「ユニバーサルデザインについて取材し、集めた情報を整理して報告文を書く」ことを主眼とした単元の授業で、児童が書いた下書きを、まずは友達に読んでもらってアドバイスをもらう、その後、生成AIにアドバイスをもらうという授業でした。

提案性のある、いい研究授業だったのですが、協議会のとき、先生方に問うてみました。

「教科書に報告文の作例がありますよね? これを生成AIに放り込んで『添付したものはユニバーサルデザインについての報告文で、ここではセンサー式のじゃぐちについて書かれています。このような報告文を<センサー式のじゃぐち>以外を例にして書いてください。 構成は以下の通りです。 1.調べたきっかけ 2.調べ方 3.調べてわかったこと 4.まとめ』というプロンプトを打ち込んでみましょう。」

もちろん生成AIはあっという間に報告文を出力します。「更に別の例で書いて」と言えば、これまたあっという間に報告文を出力します。

「子どもたちは13歳未満なので、オフィシャルにはまだ生成AIを使うことはできません。しかし、いずれ生成AIを使えるようになったら、報告する文章なんてあっという間に作れてしまいます。では、これからの生成AI時代を生きる子どもたちにこの単元を教える価値はどこにあるのでしょうか?」

その後、どんな議論があったか。私がどう答えたかは、また別の機会に書ければと思いますが、重要なのは「この先、教師はあらゆる学習について子どもから『なぜ、これを学ばねばならないのか』という問いを突きつけられる可能性がある」ということです。

きちんと答えられるものもあるでしょう。しかし、中には「確かに、もうこれをこんなに時間をかけて学ぶ必要はないかもしれない」と考えざるを得ないこともあるでしょう。そうした時代の教師を支えるには、どのようなものになるにせよガイドラインだけでは不十分だろう、と私は考えます。

では、何が必要か。次期学習指導要領の改訂に、生成AIが登場したことの影響をきちんと反映させることです。もちろん、今回の会議はそこを目的としたものではありませんし、そんな権限もありません。しかし、提言くらいはできるでしょう。委員の先生方には様々なお考えがおありでしょうが、私としてはそこは非有識者らしく、うるさく訴えていこうと思っています。

そうそう、「非有識者連合なのに有識者になって大丈夫ですか?」みたいなお声がけをいただくのですが、心配御無用。非有識者連合の条件は、

1.歯に衣着せぬ物言いに努めること
2.歯に衣着せぬ物言いができるよう研究・実践に努めること
3.「非有識者連合の歌」を歌えること

のみ。むしろ、◯◯の有識者なのに歯に衣着せぬ物言いに努められれば、それこそ立派な非有識者連合の姿と言えるでしょう。



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