本当はとっても怖い5G 2 加藤やすこ著『5Gクライシス』のつづき

 前回は、5Gの電波を被曝することの危険性について書いたが、今回は通信衛星や気象衛星の5Gがもたらす地球規模の影響について触れたい。これは、全人類に影響をもたらすものである。ただ、あまりにも専門的であるため、第6章を引用する。

5Gクライシス


第6章 5万機の通信衛星が地球を覆う

1 宇宙にも5Gネットワーク

 5G通信ネットワークは、宇宙空間にも広がっています。イギリスのボーダフォングルーブヤ楽天モバイルは、アメリカのAST&サイエンス社の低軌近衛単不ットワーク「スペースモバイル」を利用し、当面は4G通信を、将来は5Gを提供する予定です。特別な通信衛星機器がなくても、宇宙の通信衛星ネットワークと地上の携帯電話網を通じて、携帯電話が利用できるようになるといいます。
 アメリカのスペースX社は、世界最大規模の通信衛星網を構築する「スターリンク計画」を進めています。約4万8000機の通信用人工衛星を、高度約350~550キロメートルの低軌道に打ち上げ、周波数24・25(ギガヘルツ)のミリ波を利用して通信事業を行なう計画です。2019年5月以降、すでに三回の打ち上げに成功しています。軌道上で100機に達したらサービスを開始する予定です。
 しかし、100力国以上の天文学者が参加する、世界最大の専門家組織(国際天文学連合子AU)」によると、2019年まで低軌道衛星の数はわずか200機以下でした。短期間で衛星が約五万機に増えるわけですが、これらの衛星は太陽光を反射しやすい金属で作られているので、日没後や日の出前の太陽光を反射してゆっくりと通過する光の点として夜空に現れます。肉眼ではほとんど見えませんが、大型天体望遠鏡での観測に悪影響を与える可能性があります。また、これらの衛星群は電波を放射するので、電波天文台での観測に支障が出るおそれもあり、IAUは「天文学のインフラにとって重大な脅威になる可能性がある」と訴える声明文を発表しました。
 IAUは、低軌道衛星の影響を分析するために、運用する企業の協力を求め、これらの通信衛星による有害な影響を早期に緩和・排除するための規制を策定することを政府に求めています。

2 シューマン共振への影響

 これらの衛星は、ミリ波を使って地上の通信ネットワークに繋がるだけでなく、衛星間でも通信を行ないます。そのため、地球はミリ波を発生させる通信衛星に囲まれることになるので、地球と電離層の間に存在する「シューマン共振」を変化させる可能性が指摘されています。
 シューマン共振は、地球と高度70キロメートル電離層(太陽子不ルギーが強く、大気分子を電離させる。日中は電子の密度が高く、夜間は低下する)の間で共振している周波数40ヘルツ以下の波です。地球には1秒に約100個の雷が落ちますが、この落雷によって発生した低い周波数帯の電磁波は、電離層に届き、反射されて地表に戻り、地球を取り巻くように共振をしています(図6ー1)生物が誕生する前から地球に存在しており、すべての生き物はこのシューマッ共振の中で進化をしてきました。人間や動物の脳波や、睡眠と覚醒に関わる生体リズムなどと密接な関連があると考えられています。
 シューマン共振にはいくつかのピークがあり、最初のピークは周波数7,8Hz、二番目のピークは14,1Hz、三番目のピークは20,3Hzです(図6ー2)。

シューマン共振のスペクトラムと人間の脳波

人間の脳波は、眠りが浅いときや寝入り端にシータ波(4~8Hz)が優位になり、シータ波はシューマン波の最初のピークと重なります。リラックスしたときや安静時はアルフア波(8~14Hz)が優位になり、2番目のピークと一致します。犬もリラックスした時に8~12Hzを、猫は8~15Hzのアルフア波を出しています。人間の脳波は、日常の活動をしたり緊張している時はべー夕波(14~38Hz)が強まり、シューマン共振の三番目のピークと重なります。
 一九六七年、ドイツの行動生理学者のルトガー・ウェーバー博士は、世界トップクラスの研究機閏であるマックス・フランク研究所に地下室を二つ作り、被験者の体調変化を調べる実験を行ないました。二室とも外部の光や音から遮断され、一室は電磁波からもシールドされていました。睡眠と覚醒のリズムや体温の変化などのさまざまな生体リズムを観察したところ、明暗の変化がなくても、自然界の電磁場があれば睡眠ー覚醒の周期と生体リズムは変化しないことがわかりました。電磁場を遮蔽した部屋では、睡眠―覚醒の周期が12時間周期になったり、65時間周期になることもありましたが、シューマン共振の最初のピークに近い10Hzの電磁場を流すと、生体リズムは24時間周期に戻ったのです。
 ニュージーランド、リンカーン大学准教授だった故ニール・チェリー博士は、シューマン共振は地磁気や太陽活動の影響を受けやすく、太陽活動が活発になると、睡眠にかかわるホルモン「メラトニン」を減らすと指摘していました。

1図6-1 シューマン共振(出典:Wikipedia)

シューマン共振


メラトニンは、活性酸素の除去や血圧の低下、免疫系の強化に関わる重要なホルモンで、メラトニンが減ると関節炎、糖尿病、てんかん、睡眠障害、乳幼児突然死症候群(SIDS)、流産、心臓病、アルツハイマー病、パーキンソン病、運動神経障害、うつ病、自殺などに関わると考えられています。
 チェリー博士は、太陽活動が弱まるとシューマン共振信号も弱まり、脳と心拍が同期しなくなって不整脈につながり、太陽嵐など太陽の活動が活発になるとシューマン共振も強まり、メラトニンの産生か少なくなり、ガンや心臓疾患、生殖器の疾患、神経学的疾患、死亡率が増えると指摘していました。
 アメリカの研究者、アーサー・ファーステンバーグさんは、通信人工衛星の電磁波がシューマン共振の周波数をシフトさせる可能性も指摘しています。人間の脳波と密接に関わっていると考えられているシューマン共振の周波数帯が変化したら、どのような影響が発生するのか、天量の通信衛星を稼働させる前に検証が必要です。

3 気象衛星との電波干渉
 
さらに5G衛星の電磁波は、アメリカ海洋大気庁(NOAA)やアメリカ航空宇宙局(NASA)が共同で運行している気象衛星群JPSSと、電波干渉を起こす可能性が指摘されています。JPSSは周波数23,6~24GHz(ギガヘルツ)の電磁波を使って気象データを集めていますが、5G通信衛星は、気象衛星の周波数と井常に近い24・25GHzで通信を行ないます。そのため電波干渉が起きる可能性があります。
 NOAAの二ール・ジェイコブズ局長代理は2019年5月、アメリカ下院科学委員会で証言し、電波干渉によって気象データの77%が失われ、気象予報の精度が30%低下し、1980年代の気象予報レベルに戻る、と訴えました。これは、台風の予報が2~3日遅れることを意味します。
 なお、NOAAとNASAの気象データをもとに、世界中で行動しているアメリカ海軍も、宇宙空間での5G利用を懸念し、電波干渉が起きないよう周波数帯を変更することなどを求めています。天候や海洋モデルの劣化によって、飛行・航行のリスクが高まり、戦闘空間の認識力が低下するからです。
 すでに気候変動によって台風が大型化し、今まで台風が上陸しなかった地域にも大きな被害をもたらしているので、予報粘度の低下は深刻な問題です。また、人工衛星を天量に使うことは宇宙ゴミの増加にもつながります。

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