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山小屋と言うより



上高地という大自然の中の山小屋で暮らしてはいる。

山小屋というワードは自分の生活を説明する上では欠かせないものになりつつあるのだが。

「小屋に遊びに来てよ」

と休暇先の沖縄の知り合いに気軽に声をかけるのだが、山小屋がどんなところかピンと来てない様子で、どうやら大変な思いをしないと辿り着けない場所だと恐れ慄かれることもしばしば。

海抜0メートルの民からすると山という存在、まして北アルプスなんて遥か遠いおとぎの国の話をされているようでポカンとされる。

標高1500メートルにある山間の平地。
小さな湖のほとりというべきか。
大きな池のほとりというべきか。

雨水を貯めなきゃ暮らせない山小屋も多いが
我が住処は水辺に近く、飲み水にも事欠かない。

目の前には小川が流れていて
夜は雨かと勘違いするぐらい、水とその音が溢れかえっている。


山小屋というよりその形容は森小屋。
舗装されていない緩やかな起伏の自然道を小一時間歩くと着いてしまう。

ターミナルまで電車とバスで乗り継いで
1時間散歩するぐらいだから、どこぞのギャル、ギャル男でも辿り着ける。

昨今はヒップホップな気風の良い若者たちの集団も来れば
冥土の土産じゃと山に手を合わせる爺婆もいる。

要は上高地は誰でも来れるのだ。

先週は母と妹が来て、お喋りしながら小屋から更に1時間山道を奥へ分け入った先にも
優雅なロッジ風の宿がしっかり商売していて、テラスで涼みながらソフトクリームを頬張ることができる。

山小屋と言うと距離ができるが


「私は観光地の飲食店で働いています」

暮らしぶりも楽しみも、悩みだってさほど人と変わらないのが実情であって

それを説明するのがややこしいのである。

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