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財政破綻についての見解のまとめ 大前研一氏

2 財政破綻が起こるとすれば、何を引き金にいつ起こるのか

この章では、まずは財政破綻・ハイパーインフレの危機があるという有識者(著名な方や研究者)の見解を見ていきます。

〇 大前研一 元マッキンゼー日本支社長(DeNA会長の南場智子さん、勝間和代さん、茂木敏充外務大臣、等のボス)、李登輝総統、マハティール首相、リー・クアンユー首相、中曽根首相のアドバイザー

MMTについて

金利が上がれば、MMTも日本国債を抱えた日銀も破綻するのは自明の理
 公的債務が対GDP比約240%まで膨れ上がっているのに、財政破綻せず、19年も100兆円を超える予算を組んでいるのだから、傍目には日本はMMTを実践しているように見える。しかし、もし政府や日本銀行の目標通りに物価が上がったらどうなるか。当然、金利は上がる。今は超低金利だから国債の利払いは年間約9兆円で済んでいるが、金利上昇に伴って新規発行や借り換えで利率の高い国債が発行されるようになったら、利払い費は一気に増加していく。
 他方、金利が上がって国債よりも高利回りの金融商品が登場してくれば、海外の投資家はもとより、日本の金融機関や生保・損保なども国債を売ってそちらにシフトするだろう。それは国債の暴落を招き、市中から国債を買い集めて大量に溜め込んでいる日銀のインプロージョン(内部爆発)のトリガーを引く。結局、国債の金利も上げざるをえなくなって(上げなければ売れない)、財政破綻の坂道を一気に転げ落ちるのだ。
 MMTの最大の問題点は「インフレにならない限り」という前提で理論を一般化していることだ。「インフレにならない限り、政府はいくら借金を膨らませても構わない」というのは、例えてみれば、「爆発しない限り、ダイナマイトをいくら部屋に置いてもいい」と言っているようなものだ。そんな部屋で暮らせるだろうか。やはり極力、危険物は取り除くべきだし、リスクを取り除いて少しでも安全にしておくことは、将来世代に対する現役世代の責務だと私は思っている。

(『プレジデント』誌2019年8月16日号 を元に編集された 大前研一メソッド より)

2024年新紙幣発行の隠れた意図

 2024年度上半期に紙幣が一新される。財務省は紙幣刷新の理由を偽造防止と言っているが、これは違うと思う。
 実は前回(注:2004年の新紙幣刷新)は、財政赤字を減らすことが隠れたテーマとしてあった。財務省には、新紙幣発行の混乱に乗じて額面の2割くらいを財産税のようなものとして徴収する計画があったと言われている。つまり、1万円持ってきたら8000円と交換して、国が20%パクる。それにより、国の借金を一気に減らそうと考えていた。
 そのための複雑な操作ができるかどうか、ATM(現金自動預払機)製造会社に依頼したが、それが某関西地区の国会議員に漏れて、財務省に「なぜこんなことをやろうとしているんだ」と問い合わせて、この“悪だくみ”はバレて流れてしまった、と言われている。恐れられていた国債の危機も去っていったので本件は沙汰止みとなった。
 財務省は当時、日本国債の暴落が引き金になって世界恐慌になることを非常に恐れていた。そこで、平成の徳政令(借金帳消し)をやろうとしたわけだ。
 財政破綻を避けるには、その価値を何%か割り引いた新貨幣を発行して、国の借金を減らすしかない。その場合、“徳政令”はある日突然、出さねばならない。国債の危機が迫ったと判断したらすぐに発動できるようにあらかじめ新紙幣を刷るだけ刷っておいて、5年後より前に必要となれば一斉にドーンと出して、「古い紙幣は何カ月後には通用しなくなります」と言うと、どうなるのか? 財務省の隠れた意図は遠からず表に漏れてくるだろう。

ZAKZAK by夕刊フジ 大前研一のニュース時評 2019.4.20より)

日本が国債暴落、ハイパーインフレという地獄の入り口に立つ
 アベノミクス3本の矢も、新3本の矢もいずれも結果は出ていません。これが世界の金融市場からどうジャッジされるでしょうか。もともとアベノミクスの金融政策は世界が認めたわけではなく、「この道しかないというのだからやらせておこう」というムードのもので、結果が出ないことを放置し続ければ、いよいよ世界中から「NO」を突き付けられるでしょう。
 アベノミクスの失敗を市場が認知すればどうなるか。
国債は暴落し、日本はハイパーインフレという地獄の入り口に足を踏み入れることになります。日本の国債がこれまで安泰と受け止められてきたのは、そのほとんどを日本人が購入しているからです。
 しかし明確に意識して国債を買っている個人は非常に少なく、実際に買っているのは日本の金融機関や日銀です。金融機関であれば、いざとなれば資産を守るために売り逃げに転じる可能性もあります。海外では日本国民が国債を買っているのだと錯覚し、投げ売りが生じないと考えているようですが、そんなことはないのです。
世界のハイパーインフレ「コーヒーをお代わりするまでの間に値段があがるような世界」
 1990年以降、ハイパーインフレになった国はたくさんあります。例えばブラジルはインフレ率1000%というすさまじい状況でした。私も見てきましたが、ここまでの事態になると、月の初めに給料を支払わなければ誰も会社に来てくれません。月の終わりになると、月初めからさらに2、3割通貨価値が下がっているという感覚です。
 私はかつてインフレ率1万%を経験したスロベニアにも、ハイパーインフレ時に行ってきました。スロベニアの中央銀行総裁になった方から伺った話ですが、友達に手紙を書くのに、大きい封筒でなければ駄目だったと言います。急激なインフレに切手の印刷が追い付かず、びっくりするくらい大量の切手を貼らなければならないからです。
 これからの日本の最大の論点は、少子高齢化で借金を返す人が激減する中、膨張する約1000兆円超の巨大な国家債務にどう対処していくのか、という点に尽きます。
 私は、このままいけば、日本のギリシャ化は不可避であろうと思います。歳出削減もできない、増税も嫌だということであれば、もうデフォルト以外に道は残されていません。日本国債がデフォルトとなれば必ずハイパーインフレが起こります。
ハイパーインフレで地獄を見る年金受給者
 ハイパーインフレになったら年金受給者は大変です。今までハイパーインフレになった国では、年金受給者が地獄を見ました。年金は固定額ですので、今まで20万円だと思っていたお金が、例えば実質2万円の価値になるのです。ロシアの場合、高齢者が食料品を購入できなくなり、家庭菜園で野菜を育て、それでなんとか7〜8年食いつなぐという状況になりました。

(マネーはこれからどこへ向かうか 「グローバル経済VS国家主義」がもたらす危機 大前研一著 2017年6月発行より)

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