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大正琴弦とエレキギター弦の簡易換算表

さっそくさっきの記事の次回予告を裏切りますが、前回の大正琴の弦の太さ(ゲージ)についての記事を踏まえて、自分用としても換算表が必要だと感じられたのでソプラノ(5弦)、アルト(6弦)大正琴とエレキギター用弦の換算表を作製しました。

まず、ソプラノ・アルト大正琴(アコースティック・エレアコ)の弦の太さを再掲します。ただし、これがSUZUKI製大正琴のデータで80年代のものであることは留意が必要です。

▶ ソプラノ大正琴(5弦)
第1弦~3弦(共通)
・鋼線|0.25mm×745mm
第4弦
・巻線|0.53mm×710mm
第5弦(ベース弦)
・巻線|0.72mm×670mm

▶ アルト大正琴(6弦)
第1弦~3弦(共通)
・鋼線|0.35mm×990mm
第4弦~5弦(共通)
・巻線|0.72mm×1010mm
第6弦(ベース弦)
・巻線|1.2mm×940mm

弦の長さについてはエレキギター用として売られている既製の弦がこれを下回ることはまずないので気にする必要はないと思われます。

そして、これを大正琴用の弦として換算する場合ですが、まず、エレキギターは4-6弦が巻き弦、1-3弦がプレーン弦(大正琴でいうところの芯線だけの鋼線)です。またエレキギターの弦はインチで表記されることが慣例なので25.4を掛けることでセンチ(ミリ)に換算することを念頭においておいてください。

それを踏まえて以下のリストを見てください。慣例としてだいたいこんな感じのクラスに分かれていますが、メーカーによっては同じ名称でも太さが違う場合があるので確認をお願いします。

▶ エクストラライトゲージ(.008~.037)
第1弦 0.008 インチ = 0.2032 ミリ
第2弦 0.010 インチ = 0.2540 ミリ ※ ソプラノ1-3弦
第3弦 0.014 インチ = 0.3556 ミリ
第4弦 0.023 インチ = 0.5842 ミリ ※ ソプラノ4弦
第5弦 0.029 インチ = 0.7366 ミリ ※ ソプラノ5弦 ※ア ルト4-5弦
第6弦 0.037 インチ = 0.9398 ミリ

▶ スーパーライトゲージ (.009~.042)
第1弦 0.009 インチ = 0.2286 ミリ ※ ソプラノ1-3弦
第2弦 0.011 インチ = 0.2794 ミリ ※ ソプラノ1-3弦
第3弦 0.016 インチ = 0.4064 ミリ
第4弦 0.026 インチ = 0.6604 ミリ
第5弦 0.032 インチ = 0.8128 ミリ
第6弦 0.042 インチ = 1.0668 ミリ

▶ ライトゲージ (.010~.046)
第1弦 0.010 インチ = 0.2540 ミリ ※ ソプラノ1-3弦
第2弦 0.013 インチ = 0.3302 ミリ ※ アルト1-3弦
第3弦 0.017 インチ = 0.4318 ミリ
第4弦 0.027 インチ = 0.6858 ミリ
第5弦 0.036 インチ = 0.9144 ミリ
第6弦 0.046 インチ = 1.1684 ミリ ※ アルト6弦

▶ ミディアムゲージ (.011~.049)
第1弦 0.011 インチ = 0.2794 ミリ
第2弦 0.014 インチ = 0.3556 ミリ ※ アルト1-3弦
第3弦 0.018 インチ = 0.4572 ミリ
第4弦 0.028 インチ = 0.7112 ミリ ※ ソプラノ5弦 ※ アルト4-5弦
第5弦 0.038 インチ = 0.9652 ミリ
第6弦 0.049 インチ = 1.2446 ミリ ※ アルト6弦

▶ ヘビーゲージ (.012~.054)
第1弦 0.012 インチ = 0.3048 ミリ
第2弦 0.016 インチ = 0.4064 ミリ
第3弦 0.020 インチ = 0.5080 ミリ ※ ソプラノ4弦
第4弦 0.032 インチ = 0.8128 ミリ
第5弦 0.042 インチ = 1.0668 ミリ
第6弦 0.054 インチ = 1.3716 ミリ ※ アルト6弦

だいたいこのあたりだろうというところに相当するアルト・ソプラノ大正琴の弦を記載していますが、「だいたい」であることに気をつけてください。

そもそもエレキギターの音色は弦の太さだけできまるものではありません。素材は鉄、ニッケル、ステンレスを基本として色々ですし、巻線のつくりにもラウンド・フラットがあります。色々情報を集めながらご自分の好きな音を構成する弦の組み合わせを探っていっていただければと思います。

ボールエンド弦を採用する大正琴にはSUZUKIの典雅・風雅(生産完了品)などがあります(ループエンド弦採用機種の紅葉含めて、このシリーズはいずれ別記事で取り上げる予定です)が、ラインナップの最高級機の位置を長く務めた機種であるはずにもかかわらず専用弦はすでに廃番というのが現状です。

SUZUKI
典雅
風雅
紅葉 ※ループエンド弦(一般的な大正琴用弦)採用機種

おかげで場合によっては数百円の捨て値ですから(それを知らない売り手がえらく強気な値段をつけていることもありますが)、このあたりの情報から再度輝きを取り戻すことがあれば幸甚です。

前回の記事をくりかえしますが、標準の弦の太さが分かれば弦のわっか(ループエンド弦)をテールピースの爪に引っかけるタイプのオーソドックスな大正琴なら、同じくループエンド弦を採用するマンドリンやバンジョーの弦の転用が考えられるでしょう。

なんならループエンド弦のボールエンド弦からの自作(またはその逆)というのも大して難しいことではないのだということを念頭において、上記の表を活用していただければと思います。

「インチで表記されるものは25.4を掛けることでセンチ(ミリ)に換算できる」という式をどうか忘れず、マンドリン・バンジョーといった大正琴と当時あい通じる音色として評価された周辺の弦楽器の用具を広く眺めてみてください。きっとたくさんの発見がそこにはあることでしょう。

そもそも弦楽器で示される標準の弦の太さはあくまで標準であって、また音作りの一要素でしかなく、太さ・素材含めて自分の音を追求するにはもっと多様な追求の余地があってしかるべきだと思いますし、ちょっと視点をずらせば実際にそれがあるのですから。

そんなわけで二回にわたって大正琴のゲージとエレキギター弦の話でした。毎度次回予告を裏切ってばかりなので、予告はやめておきましょう(苦笑)。

(2024/01/20 第1版 公開)


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