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うつけ者、ひとりを味わう①

休日、原宿をぶらついていた時の話。

その日は用があり午前中に原宿を訪れた。
用が思ったよりも早く終わってしまい、その後を考えていなかった自分は宙ぶらりんとなってしまう。
原宿に来るのがそこまで貴重なことではないし、中々訪れることのできない場所なわけでもないため、すぐ移動しても良かったのだが
なんかもったいないので散策しようと思った。

時間は午前10時20分ごろ。
どうしようかなー、いってみたい場所はあったかひとしきり考えたところ特にない。
こういうところだよな。
原宿なんて楽しめる場所はいくらでもあるのに興味がないからか原宿の良さを堪能することができない。
こういうことがよくある。
予定をあらかじめ立てるのも苦手だ。

ラフォーレ前の交差点の隅で壁に寄りかかり次の行動を考えていた。

そういえば原宿のギャラクシーで働いている友達がいる。
友達、というか演劇仲間だ。
昨年5月に沖縄戦をテーマにした舞台「大切なもの〜ワンヌイミ〜」の座組みで一緒になってからはみんなとても仲が良く今でもほとんどのメンバーで月一集まって飲んだりしている。
その内の一人がギャラクシー原宿店で働いている。
よし、そこに行こう。

ギャラクシー原宿店は携帯ショップだ。
ビル一棟丸ごとギャラクシーの建物となっており6階まである。
各階でいろんな体験ができる施設となっている。
そこ自体に興味はなく友達に会うことを目的にそこに行こうと思った。

ただ、ギャラクシーの開店時間は11:00。
遅い。もっと早めに開けろよ、と思いつつ
携帯ショップが10時から開いてても仕方ないか、と思った。

あと40分ある。
この40分の過ごし方をまた考える。
さっきよりかは簡単だ。
AM10:20から眠りにつくまでの過ごし方を考えると漠然とするが、原宿でたった40分過ごす方法を考えるのは容易だ。ぼーっとしてても40分は経つ。

がしかしさすがにそんな時間の過ごし方はもったいないので裏原あたりで好きな古着屋を見ようと思った。
好きな古着屋と書いたが、まぁセカンドストリートだ。
セカンドストリートが好きだ。
普通の古着屋にはない雑多さがある。
そして製品の品質も一定の基準が保たれていて価格もピンキリだ。
その中から宝探しのように珍しいデザインの服を安価で買うことに快感を感じる。

平日の午前中、裏原。
裏原ってあまり聞かなくなったがこの言葉はまだ生きているのだろうか。

この時間でも普通に人が多いキャットストリート。
特に外国人が目立つ。

そしてみんなそれぞれがそれぞれのファッションを楽しんでいる。
あとこんなに両サイドいろんなお店が入ってるこの道はなんかワクワクする。
色々ありそうだが特筆すべきことは特になかったため割愛する。
気づけば11:30ごろになっていたためギャラクシーに向かう。

入店してすぐ全身黒の服に身を包んだスタッフがお出迎えしてくれる。
ここのスタッフは友達も含め皆んな若い。男女比も同じくらい。
営業後みんなで飲みに行ったりしてんじゃねぇだろうな。
このお店の中だけで色恋ばっか起きてるんじゃねぇだろうな。
そんなことを考える。
別にそこで何が起きていようが自分には関係ない。
そこにおじさんの介入できる隙は一分も無い。

うん、1階にはいないようだ。
というかそもそもそいつがこの時間にいるのか、出勤なのかさえわからない。
とりあえず2階にいく。
2階はスマホにつけるアクセサリーを自分でカスタマイズして作るコーナーになっていた。
そこに奴はいた。
ほぅ、接客中か。この俺が来ているというのに。
いいのかな?そんな扱いで。
気づいていない奴。
静かに近づき背後を取る。
依然として接客をやめない。
ほぉ、舐められたものだ。
良い度胸をしている。
肝が据わっているとでも言おうか。
気づいていない奴。
視界に入るポジションに入り、熱心にアクセサリーを見る演技をしつつ、いつ気づくかを楽しみにしていよう。

落としていた視界にスニーカーがフレームインしてくる。
「なにしてんすか」
「あのぉ、これって好きに選べるんですか」
「いやなんでここにいるんすか」
「え、ごめんなさいちょっと言ってる意味がわからないです」
「いやそれいいんで、なにしてんすか」
ギリまで顧客を演じるも、付き合ってはくれないようだ。
少し恥ずかしくなり
「来ちゃった。」と遠距離中の彼女が突然家まで来た時に言うようなセリフを溢した。
どうもアクセサリーを選ぶ姿がかなり不審だったようで、他従業員に共有・拡散しようか迷ったところよく見たら知ってる人だったため大層安心したと後日聞く。

働いてる友達を見ると言うのは良い。
みなさんも普段バカしてる友達の働いているところを見たことがあるだろうか。
彼ら、彼女らはいつもと違う顔で真剣に仕事に取り組んでいる。
そんな姿を見ると新鮮で少し見直す。
改めて人は何か一つの目的に真剣に取り組んでる姿が一番美しいのだと思う。

簡単な世間話を済ませ、「暇なら施設見てまわってきたらどうですか?」とのこと。
なぜ貴様に俺の行動を指図されなければいけないのか。
まぁ、おもしろそうなので行ってみよう。
どんなもんかと。私を楽しませられるとお思いなのだろうか。
ひとまずトイレに行く。ちょっとだけお腹を下していた。
それからは最上階に行く。
どうやらこの建物内でチームラボやワンピースとコラボしている場所があるようだ。

6〜5階はチーラボのコラボスペースで装飾が華やかだった。
ふっ、こんなもんか。
綺麗だ。
普通に綺麗だった。
チームラボすごい。
まぁ、ここはもういい。
4階のフロアに降りる。
ワンピースコラボのスペースだ。
柵がされていて受付して入るようだ。
「スタンプラリーを行ってまして、各フロアでスタンプを集めるとガチャガチャがひけるようになっております。お作りしますか?」と聞かれる。
正直触りだけ見て回ろうと思っていたためスタンプは断った。
「No,スタンプ」
最新のギャラクシー端末を渡され、フロアを回りながらギャラクシーのカメラ機能でいろんな機能を使い謎を解いていく仕組みになっていた。
いや、ちょっと見るくらいでよかったんだけどな…。

みんな家族やカップルで来ている中、唯一人。俺。
大丈夫、慣れてる。
平日の昼というのもありそこまで人は多くない。
ただ、軽い気持ちで入ったつもりがガッツリ体験施設を回らされることになってしまった。

すぐ出たかったが、中断して出るのは機械に疎くて逃げ出したと思われそうなので渋々続ける。
一つのコーナーで謎を解くたび常駐しているスタッフに話しかけないといけなかったりしてその度に恥ずかしい。
さらにはギャラクシーカメラの最新カメラ機能で自分を映して合成するコーナーにやってくるが誰かに撮ってもらわないといけない。ここでもスタッフを召喚する。
気持ちも全然ノリノリじゃ無いため何のポーズも取らずにシャッターを切ってもらう。
惰性で全てのコーナーを周りギャラクシーを返却しフロアを出る。
もうちょっと簡単に展示品を見て回るものだと思っていた。
ガッツリ体験コーナーなのか。一杯食わされた。

次に降り立ったフロアはまたもやチームラボコラボスペース。
入り口からお化け屋敷の様に黒の壁黒の床、黒の天井。長い廊下を進むと人が溜まる様なスペースがある。
仕切りで統制された整列場所に入り、最後尾に並ぶ。
なんだ、何が始まろうというのだ。
何が起こるかわからずしばらく並んでいると、ある程度人が集まったのかMCのお姉さんが現れる。
プロジェクターに企画の趣旨が映し出され説明が始まる。
これから先のスペースで専用端末を使い、壁や床に映し出された色とりどりの恐竜や昆虫を捕まえてコレクションするという。
なるほど。童の戯れか。おもしろい。
あと説明がまぁまぁ長い。並んだ時間も合わせて少しくたびれた。
ディズニーのタートルトークくらい説明時間が長い。
ようやく説明が終わり端末を受け取りスペースに進む。
TSUTAYAで奥のコーナーの長い暖簾をくぐる様に次のスペースに入る。
森の中を模したそこはチームラボ特有の華々しさで埋め尽くされていた。
四方八方から華やかを喰らう。
そして壁を、床を、色鮮やかな恐竜や昆虫が動いている。
これらを持たされた端末のアプリで画面から矢を放ち捕まえたり、足元に網を張って捕まえる。
チームラボと俺の戦いが今始まる。


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