フォローしませんか?
シェア
市川珠輝
2016年2月1日 18:54
第一章 新月とチョコレート 足首ほどまでの浅い水路に沿った小道が、僕は好きだった。春には均等に植えられた桜を見上げながら、人々がパレードのようにここを歩いた。遠くに並ぶ山々が紅く色付く季節も良い。冬は小さな雪が水面にふわりと消えてゆく。 夏だけはさすがに暑さが厳しかったが、水路を吹き抜ける風で少しばかり涼むことができる。そして僕はこの小道の夏の夜が一番好きだった。 けれど、僕はす