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公用車広告⑩~「陳情を不採択に」。ある二世議員の暗躍

 2021年3月9日に行われた総務委員会(議会の中の組織の一つ)では、議員たちから活発に意見が出された。出席したのは総務委員である議員10人と、財産管理課のK課長、同課を監督する企画財政部のH部長である。

市の収入(年額13万5600円・別)、落札最低価格が異常に低いことについて


A議員 歳入確保の取り組みとして始めたというが、実際に入るお金はわずか13万円。これ、想定内だったのか。事業開始にあたっては見積もりを立て、これぐらい入ってくるとか、そういう予測を立てて考えなかったのか。

C議員
 そもそも落札最低価格をなんでそんなに低くしてしまうのか。こんなに低い金額にしてしまったら、むしろ職員の事務の費用のほうがかかるし、利益より損失が出る事業になるとは考えなかったのか。

K課長 他市の導入状況を参考に、1台当たり3000円の広告料として広告掲載審査委員会に申請した。しかしこの事業は初めてのことであり、55台すべてに広告を取る専門性がないため、広告代理店に一括して任せることにした。

H部長 落札最低価格は行政財産の使用料の基準(非公開)を下回らないように設定した。しかし応札したのが1社のみだったため、結果的に13万5600円になってしまった。

B議員 実際に入札をした後で、広告掲載審査委員会に申請した金額とは全然違うことはわかったわけですよね。そうすると最初の広告掲載審査委員会の審査の意味は何だったのか。

H部長 広告掲載審査委員会には、こういうやり方でやった場合に99万円ぐらいになる、ということを示し、まず公用車に広告を掲載するかどうかということの判断を仰いだところです。(申請した金額と実際の)金額の差は、初めてということもあって、今後検証していかなければいけないと考えている。

D議員 説明が全然わからない。長田広告さんはいくらで車のスペースを販売しているのか。

K課長 代理店と広告主の契約なので、いくらで販売しているか、本市では把握していない。

D議員 それがありえないと思う。広告料は公用車広告の場合、55台のスペースだったらいくらで販売したいというのを市が決めて、その何%かを代理店が取るというのが通常の広告ビジネスだと思う。そうでないと長田広告さんが仮に法外に高い値段で販売しても、責任取れないでしょ。

H部長 その件については、公共の財産を使って広告収入を得ていることから、公用車広告に限らず、全広告について代理店が広告収入をいくら得ているかは市も把握するようにしたいと思っている。

D議員 広告事業をやるにはあまりにもおそまつな進め方だし、広告掲載審査委員会というのも果たして機能していたのだろうかという疑念を抱かざるを得ない。

広告主の審査について


A議員
 広告主が決まった段階で独自に市が調査をかけたのかどうか。

D議員 広告主の審査はしていたのか、していなかったのか。

K課長 市としても広告掲載に関する要綱や広告掲載基準の中で確認している。※1

D議員 どなたが決めていたのか。

K課長 最終的には課長決裁の中で判断している。

D議員 決済するにあたって、どういうところを調べて許可をしていたのか。

K課長 ネット検索とか、日ごろから情報収集する中で…。

B議員 広告掲載に関する要綱と広告掲載基準に照らしたチェックではないのか。

K課長 そのとおりである。

C議員 陳情にあったように脱税で東京国税局に告発された会社とか、顧客の個人情報を大量に流出させた会社の広告を載せるのは、広告の要綱とか基準に照らして問題はないのか。

K課長 不祥事を起こした会社でも改善策がはかられた企業においては、広告掲載をするということで対応したものである。※2

C議員 陳情に添付された資料を見ると、他市は暴力団関係の誓約書をとったり、何らかの配慮をしている。船橋市よりずいぶん整備されている。なんでここまで違うやり方になったのかと思うが。

K課長 公用車広告事業については、この陳情もふくめ、様々なご意見を頂戴しているので、審査方法など、手続き的に明確になっていなかった部分については、広告掲載マニュアルを改定したところである。

C議員 長田広告さんはほかにも市の事業を請け負っているのか。

K課長 本庁舎動画広告、駅前総合窓口センターの動画広告、駅前歩道橋デジタルサイネージなど。

C議員 それ全部1社入札だったのか。

K課長 それはちょっとこちらでは把握していない。

C議員 低い金額で1社のみの入札だとしたら、癒着のにおいがするが…。

※1 市も長田広告も広告主の審査記録を提出できなかった=実際は審査をしていない。
※2 不祥事企業の広告は、更生したか否か調査したうえで載せるように私が再三求めたが、K課長に断られている。偽りの答弁である。

契約の途中解除について


A議員 本市がこの契約を途中解除すると、どんな影響があるのか。

K課長 契約条文の中で、疑義がある場合には相手方と別途協議する規定となっている。

D議員 契約解除は話し合いで決めるしかないのか。たとえば長田広告さんが倒産しちゃったとか、災害その他で市が公用車55台を維持できなくなったとか、やむを得ない事情に起因する契約停止の規定も作っていないのか。

H部長 相手方が違反したりした場合の規定はある。

E議員 この長田広告さんとの契約において、向こうが契約違反している内容はないのか。

K課長 ないと思っている。※3

F議員 契約を市の方から解除した場合は、年間の広告料13万5600円を保証しなくちゃいけないと思うが、それを支払ってでも解除するべきではないのか。

H部長 現時点では契約をそのまま来年も続けるので、まだ相手方には何も言っていない。

G議員 本契約に違法性があると言えないことから、契約期間を残した状態で即時停止、イコール契約解除をするべきとは思えない。

※3 実際には市は長田広告に契約違反をされているが、事業を丸投げしているため、それに気づいていない。具体的には、長田広告が法令違反を犯した企業(L・C社、LG社)の広告を申請したことだ。
 広告主の審査ができることをウリに事業を請け負っている長田広告は、両社の事件を知っていたと思われるし、知っていなければならない。しかし長田広告と両社は仲良しのようで、長田広告は両社の広告を素知らぬ顔で市の複数の媒体に申請している。

公用車広告にふさわしいもの


B議員 私は公用車に民間企業の広告を取る必要はないと思っている。必要なら「STOP!電話de詐欺」を張っておけばいいと思う。そういう情報の発信に使えばいいと思う。

C議員 私も商業広告を載せるべきではないと思う。本来広報すべきはコロナに関するものや福祉制度、行政情報などではないか。たとえば新型コロナの相談センターの電話番号をご存じない方がたくさんいらっしゃる。社会福祉協議会の緊急貸付、子育て世代向けの給付金、税金の減免や猶予。今一番困窮している市民にそうした情報を周知できたら、どれだけ励まされるかと思う。そうした事業に切り替えていくべきだと思うが、いかがか。

H部長 これまでも行政情報は掲載しており、今後も掲載することは重要だと思っている。なので、公用車広告については55台で行うのか、また公用車広告を続けるかどうか、今の行政情報の掲出方法をふくめたなかで、総合的に検証させていただきたいと考えている。

F議員 総合的に検証していきたいという中身だが、何を載せるかだけでなく、公用車広告事業それ自体を見直すということをふくむのか。

K課長 はい、公用車広告事業についても検証するということである。

以上。

 後日中継録画を見たオンブズマンのX氏も驚くほど議論は白熱し、有意義な審議が行われたように思う。私がおかしいと思うポイントを議員たちもおかしいと思ってくれたことにも、ホッとした。

 最終的に議員たちの関心は、長田広告に瑕疵がないのに、市の都合で契約解除することはできるのか、行政財産(公用車)に民間企業の広告を載せるべきなのか、に移っていき、採決となった。

 結果は…不採択。2対8で反対多数。「公用車広告は即時停止する必要はない」ということだ。陳情は後日50人の議員全員による採決により、不採択が確定した。
 ん? なんで? 総務委員の多くは、この事業のやり方、意義に疑問を呈していたのに。

 後日複数の議員から聞いたのは、ある二世議員が、この陳情を不採択にするよう、各会派を回ったということだった。共産党にだけは行かなかったようだが。
 その二世議員は、おそらく長田広告かL・C社、LG社とつながっており、商売のネタを奪われたくない、あるいはこれ以上調査をされたくない彼らに頼まれて、動いたのではないだろうか。

 議員てそんなことをするんだ。市民の味方じゃないんだ。

 私にとってそれは、陳情が不採択になったこと以上に衝撃だった。

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