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雪国・北温泉の追憶・・3

 従妹同志はかもの味・・2
 雪が降り始めていたこともあったのだが、とにかくご主人の案内で二人ともに喜んで温泉宿まで右側のまだ雪深い渓谷を眺めながら10分ほどゆっくり歩いた。従妹は雪ある深山渓谷を眺めながら、まるで中国の山水画を眺めているようだと自然界の豪快さと美しさに感動していた。寒さに閉口もしていたようだが、心地よい歩きだったようだ。旅館は素朴な中にも、深山での素材を選りすぐって築造されたのであろうか・・、実に古民家風でありながら、外見はきわめて素朴だが内部はまさに伝統的なつくりで、緻密で豪勢なつくりとなっている。それを、分かると従妹は建物各室を見るだけでも素朴だが頑丈で、上質で風格ある造りであると言っていた。寝室は例によって正面玄関側であり晴れていれば、夜、深山の雪の谷合を通し白河高原、白河の街の灯が遠くに、点々と眺望できるところであった。炬燵をしつらえてくれていた。食事の前に湯あみしようと言ったものの、薄明りの中で天狗湯に行き一人では入れないので、いわゆる「混浴」になるが一緒に入ることにした。混浴としての湯舟は二人とも初めての体験だ。天狗湯は湯けむりがいっぱい発ちこめて姿がぼやけ、見えないようにお互い湯船の隅にそれぞれ入浴したのであった。その後、他の夫婦と思われる一組が来たので当方の近くに来て湯浴したのである。終わって浴衣を羽織る場所もやや離れてはおり、部屋へ戻った。彼女は湯船に豪快にゴーゴーと注ぎ込む源泉や巨大な天狗の面に仰天していたが爽快でさっぱりした気分になった、と言っていた。
 その間、夕食が、お膳一杯に運ばれていた。山菜や岩魚の串焼きが出てきた。それに山国育ちの小生は歓迎である。従妹はややとまどっていたが、やがて自然のたまものと、やはり美味しく、体が洗われるたような食事だね、と感動していた。二人でこれまでの境遇などをぽつぽつりと話を出しながら、結婚解消になった成り行きを、聞かせてくれた。
 雪は止んでいた。炬燵に入り、窓からの星間遠く白河高原の先に点々と灯を見ながら、お互いにゆっくりと静かな口調で話し、聞き、今からの想いや、会社内の事など、雑談などを含めて吐露した。

写しは1968年3月頃の北温泉

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