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ゲーミング長屋#4「きる」 | 森田一郎の毎日戯文 #34

毎日戯文とは

ドーモ、森田一郎です。

さて、所は江戸、ときの頃は、そうですね、私にもさっぱりなんですが、町方に1680万色に輝く長屋がございました。

これがゲーミング長屋といって、絢爛豪華ななりをして、中に住んでるのはゲームオタクばっかりだってんで、町人の中でも評判でしたそうです。

そんな長屋に住んでおります一郎、かわいい極道がでかいカラーコーンから飛び出てくるゲームを遊んでおりますと

「ガラピシャンッ 『きる』っていうのはなあッッッ!!」

「おまえは馬鹿なのかい与太さん」

「『きる』の言葉のもとッ!おれが言うからッ!聞いてッッ!!」

「わかったわかった、『きる』ってFPSとかのキルのことかい?」

「そうッ!よっしゃッ!えーっとな、『きる』ってぇのは、えーと、敵が出てきて……出てきて………えっ……えっえっえっ」

「泣かなくたっていいじゃないか」

「もうやだあ、一郎さん来てえ」

よくわかりませんが、泣きながらトボトボ歩く与太郎をほっとくのも忍びないので、一郎がついて行きますと大家さんのところ。

「ひっく、大家さーーーーん」

「おいおいまた来やがったよ」

「『きる』の元ってなんだっけーーーーーー、ひっく」

「もう2回も教えただろう……ぎく、一郎じゃねえか」

「私も是非ききたい」

「いや一郎、違うんだよ、こいつがやぶからぼうに『マスターチーフはいつうんこすんだ』とか『Apexのキャラは何で足が折れねえんだ』とかひっきりなしに聞きやがるもんでよ」

「わかってますから、大家さんに『きる』の語源をききたい」

「おしえてえ、ひっく」

「仕方ねえなあ、『きる』ってのはなあ、敵の兵士が出てくるだろう?そしたら『きっ!』と睨みつけてよ、武器を出して『るっ!』と撃つ、そうして『きる』ってんだ」

「興味深い説だなあ」

「ひっく、おもいだした……一郎さん!一郎さん!いいかい、『きる』って言葉のもとはねえ」

「うん、今全部聞いたけど言ってみなよ」

「いいかい、『きる』ってのはねぇ、敵が出てきたのを『きーーーーーっ!』と睨めつけて、『るーーーーっ!』と武器を出して…出して…」

「出してどうしたの」

「……………黙って撃ったんだあ」

「怖いなおい」

またあした。

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