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ゲーミング長屋#1 | 森田一郎の毎日戯文 #28

毎日戯文とは

ドーモ、森田一郎です。

さて、所は江戸、ときの頃は、そうですね、私にもさっぱりなんですが、町方に七色に輝く長屋がございました。

これがゲーミング長屋といって、なんでも絢爛豪華な見た目をして中に住んでるのはゲームオタクばっかりだってんで、町人の中でも評判でしたそうです。

そんな長屋に住んでおります一郎、FPSとADVの好きな男でして、のんびりスチームストアを眺めておりましたら

「コンコン!コンコン!」

「はあい、なんです」

「ちょっと一郎さんいいかい!」

大家さんが一郎にちょっと来いってんで

「一郎さんいいかい、これなんだ、一人称シューティングってえのかい、どうも具合が悪いんで何がいけねえのか見てくんねえかい、あんた得意だろ」

「ええまあ、あー旦那、そのボンボリ狙って、辻斬り狙って、ボンボリ狙って、あー旦那、わかりました」

「もうわかったのかい、さすが一郎さんだ、で、何が悪いんだい」

「センシティビティです、要するにマウスのモガモガ」

「さあ食いやがれ、こんなもんでいいなら何本でも」

「モガモガモじじい!」

「じじいてか」

「何だっていきなり扇子を口に突っ込むんです」

「だってあんた今『扇子食べてえです』って」

「はあ旦那、センシティビティーです」

「せんちゅりおんまーくすりー?」

「セン・シ・ティビ・ティー」

「ちぇくてぃびてぃ、てぃびてぃ、てぃびてぃびてぃ?」

「SOUL'd OUTじゃないんですから、ようするにマウスを動かすとどのくらい視点が動くかってな数字で」

「はぁー、詳しいもんだねえ」

「設定開いてください、ほんでそこにあるツマミをぐーっと、そうぐーっと左に」

「ああ一郎さん、マウスが重い、マウスが重いよ」

「重いことありますか、感度が下がったんで最初は面食らいますけどね、これでしばらく慣れりゃ後ろむいてたってビターーーッと辻斬りの頭に合いますよ」

「手本だよ」

「へっ」

「手本見しておくれよ、ほらマッチングするからさ」

「旦那が練習しなくてどうすんです」

「あーほら始まっちまったよ、つべこべ言わずにほら」

さて、寝ようかと思ってた一郎、大家さんに言われるがまま1マッチ、2マッチ、3マッチ

「ねえ、これ旦那がやらなきゃ意味ないでしょうよ」

「いやあ、あたしはね、もういいよ、こういうのをやる時はあんたに頼む」

「なんだってそうなるんです」

「一人称だけに全部あんたに一任しよう」

またあした。

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