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今日はカレーです

さいきん、子どもたちの健康を考え自炊することが増えた。

もともと料理は嫌いじゃなかったけど、栄養素や美味しさを追求したこともまた、ない。

子どもは時に残酷だ。マズイものをマズイとヘーキで口にする。つらたん。

油に指を突っ込んで、薬指が進撃の巨人みたいになっちゃうこともあるけれど。

それでも外食よりは確実に美味しいし、なんだか生きてるって感じがしてくる。




美味しい料理を作るというのは、マズくしないように調整しながら化学反応を起こさせることだと思う。

料理は皆、野菜なり肉なり魚なりを、複雑な物に作り変える作業を指す。

料理と相性の良い【加熱】は物にエネルギーを与える行為で、ほとんどの化学反応は、何らかのエネルギーを必要とする。

かき混ぜたり、菌に分解してもらったり、熱を与えたりしなければ複雑な風味は再現できない。




154℃以上で加熱された食物は、アミノ酸と糖が結合を起こす。メイラード反応というやつだ。

結合が促された物質は不安定で、ある成分は分解され、ある成分は再結合し、それが複雑な香りを出す。

食欲をそそられる匂いというのは、それ即ち複雑な反応が醸し出す匂いなのだ。

メイラード反応の匂いを人間が好ましく感じるというのは、十分に加熱された食べ物は安全性が高いということを遺伝子が知っているからだそうな。

複雑な香りのするものは、平坦な香りのものよりも、栄養価が高く生命維持の上で好ましい可能性が高い。

香ばしい匂いに食欲をそそられるようインプットされた生命の合理性と、メイラード反応により変色した自分の薬指に想いを馳せる。




今日のアミノ酸はバリンにしようか。それともロイシンか。

料理を始めるにあたって、どの種類のアミノ酸を、どのような割合で配置するかを決めなくてはならない。

温度は何度で何秒の加熱にしようか、pH(水素イオン濃度)はどんな状態を作り出そうか。ここで料理の香りと旨みが変わってくる。

見た目や食感をキープしつつ、我が子たちにベストな化合を生み出していきたい。

そうプリミティブに。あるときはエクスペリエンスに。




料理から、地域性や文化的な要素を排除すれば、このような化学からの視点でほとんど説明ができるのかもしれない。

結局のところ俺は親子丼や焼きうどんのようなものばかり作っているし、中華料理の円卓に憧れているだけのキッズでもある。

今はまだ、先人の猿真似をして料理のようなものを作っているにすぎず、地球の46億年分の地層の表面のペラペラに佇んでいる。

死んだばーちゃんに教わった味噌汁以外はルーツも何もない、へっぽこEDMのような3分クッキングが我が家を支えている。




まぁ、子どもの食がすすめば何でもいいのだけれど、深みを覗けば覗くほど、悔しさを感じないわけでもない。

結局、バンドマンっつーのは己を大勢いる観客のひとりのまま終わらせることをよしとしないわけで。

特にハードコアパンクスの大兄貴たちは、自分たちのカルチャーを自分たちだけの手でゼロから作り上げていった。

俺も自分でいくつかのスキルを磨くうちに、既存のカルチャーを無視した全く新しい料理を作れるようになるだろう。

言わばそれはロックン料理。長生きしてベリーシェキナな料理店を開くことがあったら、あなたを招待したいベイベ。

その頃にはこの薬指もいくらか良くなっているだろうか。










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