花物語~ 紅葉の奥利根その1 藤原ダム

花の行商をしていたおかあさんから
お花の話を聞いて育った少女は
大きくなって念願のお花屋さんを開きました
少女のもう一つの夢は子どもにお花のお話をすることでした
おかあさんがしてくれたように・・・

画像提供:「花ねこ日記」

ダムに沈んだ村

2008/11/5(水) 午後 9:11

山奥の深い谷を流れる川底には
竜が眠っているの
雨が降らずに川の水が少なくなると
竜は目を覚まして天に昇り暴れまわるの
すると雨が降り出すの

大雨が降ったときは
山奥の川は一気に増水するでしょ
すると眠っていた竜は目を覚ますの
天に昇って大暴れ
ますます大雨になって川が氾濫してしまうの

川沿いにはいくつかの集落があったの
どんな山奥でも
人が住めるところであらば人は住みつくものよ
山には山の仕事があるの
山の物を里の人たち必要としたの

竜が暴れて
大雨になって川が氾濫して
何度も山の集落が水に浸かったり流されたしたの
でもまた人は村に集まってくる
自分たちが暮らした村には愛着ががあるからよ

あるときまた大雨になって
眠っていた竜が目を覚ましたの
竜が暴れる前にどうかしなければ
また川が氾濫してしまうと村人たちは思ったの
村人が信仰している大岩の前に集まったの

村人は大岩様に祈ったの
大岩様大岩様どうか竜の怒りを鎮めてください
みんな雨の中で必死に祈ったの
すると静かに大岩が動いて
大きな洞窟が現れたの

その洞窟の中に風が吸い込まれていくの
村人はしっかり木につかまっていたの
すると暴れ始めた竜が洞窟に吸い込まれていったの
そして大岩が動いてまた洞窟の口を閉じたの
おかげで川は氾濫せずに村は助かったの

ようやく人は川の流れを止めて
谷にダムを造ることが出来るようになったの
大雨のたびに氾濫するこの村の上流にもね
百五十戸以上あった村は
永久にダムの湖の底に沈むことになるの

竜が暴れて大水になって何度流されても
また戻ってきた村人は
もう二度と村に戻ることは出来なくなったの
川下のたくさんの人たちを水害から守るためにね
ダムの湖の底には村人たちの魂が沈んでいるのよ

奥利根の藤原ダムに行くことがあったら
湖を取り巻く紅葉の中に
竜を閉じ込めた大岩があるから
静かな湖の底に村人の姿があるから
ゆっくり見てきてね


  まぐまぐ!「花を歌うかな」'08/10/31 No.1253

藤川一郎
京都市北区紫竹北大門町37 葵荘17号
075-493-4676

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